最弱が世界を救う。

しにん。

《憤怒》9

「チッ、手応えなしか――あのクソガキちょこまかちょこまかと、頭にくるぜ」


砂埃の嵐の中、片手を失ったサタンは再度動き始める。
正直なところ、レインとの戦いからそのままのため体力はさほど残ってはいない。
しかし、動かざるを得ない状況に持ち込まれたことにより更に体力の消費は致命的なものとなる。


「小僧!!やりおるな、まさかレインの……いや、俺の魔力をほんのわずかだけ使って転移魔法を使うとは。しかも、使うだけではなく新しい能力を開花。貴様、簡単にやっているようだが通常は有り得ないレベルだぞ?」


「本当のそうじゃぞ、もっと喜ばぬか?」


「あぁ、多少は喜んでるぜ。だが今ここは戦場。ましてや命の奪い合いなんだ、まだ勝ってない」


冷静に考え、次の策を考える。
先ほど行った転移魔法ウィンドウは、印をつけた所に転移魔法ゲートと似たものを作るというもの。
ゲートとの大きな違いは、出入りが不可能という点のみ。一度入ると二度と出せない。
サタンの腕は、どんなに探しても二度と見つからない。


「よし、アレを試そう」


エクスは走り出し、サタンへ一直線に突っ込む。
殺気に気付きサタンは振り向き、斧を横払い。
当たる直前に転移魔法を使用。
また消えたエクスに、サタンは更に怒りを増す。


「クソガキが、お前はそれでも男かッ!!正々堂々戦いやがれッ!!」


「充分俺はそのつもりだよ?」


背後に転移したエクスは、炎の剣をサタンの心臓部へ思い切り突き刺す。


「その剣は――」


「あぁ、レインの剣のスペルビアだ。流石にこの剣を使いこなすのは無理みたいだけど、ギリギリ扱える。お前を殺せる……」


突き刺したまま、魔力を剣に集中させる。
その瞬間、サタンの体は火に包まれ火だるまとなる。


「貴様ああああ!!!」


絶叫とともに、サタンは灰となり消えていく。
世界を掛けた戦いは、簡単に終わりを迎える。


「エクスさ――ん!!やりましたね!!」


「勝つと信じてましたよ」


遠くで見守っていた二人は急いで駆けつけ、エクスに抱きつく。
勢い余り後ろへと倒れる。


「レイン、仇取ったよ……俺、頑張ったよ」


拳を天に掲げ、天国にいるレインへ報告する。


「まさか焼き殺すとは。恐ろしや恐ろしや」


「流石は、うちのお嬢が認めた男だ。まさか七大悪魔を全て倒すとは、天晴あっぱれだ」


皆、それぞれエクスのことを賞賛し喜んでいた。
立ち上がり、自らの勝利に安堵し夢ではないかを確認する。
ぽっペをつねると、ほのかに頬が熱くなるのを感じ取る。


「さて……戦いはまだまだ残ってる……俺の親父――ゼウスを倒さないと」


「お父さんを……殺す?」


「あぁ、言ってなかったかな。実は――」


二人にまだ話していなかったことを話す。
昔、レインを殺すよう命じたこと。
昔、ソロモンがゼウスと戦った理由。
それら全てを話し、最後の敵を位置づけた。


「なるほど、ソロモンさんとエクスさんの話を聞く以上、恐らくゼウスが何か企んでいる……ということですね」


「そうなる。あくまで俺とソロモンの予想だが、世界の崩壊を望んでいるのでは?と考えてる。世界の崩壊はアイツにとっては赤子の手を捻る様なものだし」


「世界の崩壊――一体何が目的なのでしょうか」


「それは俺にもわからない。世界中探し回って問い詰めるつもりだ」


三人は多少の疲れを残し、戦場を去ろうとしていた。
しかし、常に警戒していたセレネだけが最初に気づく。
エクスの真後ろに、殺気の塊があることに。


「エクスさん、逃げ――」

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