最弱が世界を救う。
《憤怒》8
サタンは目の前の力を見て驚愕する。
「お前、その力はルシフェルじゃねぇか……いいねぇ。この俺様を侮辱してるみたいでよッ!!」
吠えるように叫んだサタンを、軽く見つめエクスはひとまず力の様子見をする。
不意打ちとはいえ、レインを殺すほどの力はある。
「ふぅ――レイン、力を借りるよ」
背後にいる二匹の龍は、宙を舞い一気にサタンへと喰らいかかる。
まるで彗星のような二つの力に、誰しもが口を開けたまま閉じることが出来ない。
「面白い、戦いってのはこうじゃなくちゃッ!!」
水の龍を、真正面から殴り撃退する。
余りの派手さに水の龍は水へと姿を変える。
それを見て炎の龍は撤退する。
「チッ、小僧なんだあの力は。悪魔のレベルを超えてるぞ」
「《憤怒》と《傲慢》の悪魔の力を取り込んだ、悪魔の中で最強の存在ってところだ。恐らくあれを倒すのは世界中探しても俺らぐらいじゃないか?」
「小僧もなかなかに傲慢だな。さて、アイツを倒せる算段はあるのか?」
「俺とレインの力が合わさった今、俺らに勝てる奴はいない。なぁ、そうだろ?レイン」
返事はない。
が、何処かから返事が聞こえてくるようだった。
水になり消えていた龍が一度こちらへと戻ってきた。
「あの力相当なバケモンじゃな。たった一撃、しかも素手でワシを殺すレベルとは……いやはや、戦いというものはいつの時代も楽しきものですなぁ」
「来るよ――」
敵は真っ直ぐにこちらへと飛んでき、エクスの顔めがけて拳を伸ばしてくる。
その様は、止まることを知らないミサイルのようだった。
それをエクスは、避けるとは考えずに飛んでくる拳に向けて拳をぶつける。
その衝撃で、辺りの地面はさらに抉られる。
「素手の戦いはほぼ互角か……いいねぇ!!」
「互角か、そうか。勝手に思い込んでろ、サタン」
「なに――ッ!?」
ぶつけ合った拳は一度離れ、再度ぶつかり合う。
先程と違う点は一つだけ。
仕掛けたのがエクスということ。
サタンは思い切り飛ばされ、近くの岩へと激突する。
瓦礫の中から立ち上がるサタンを、エクスはさらに追い込む。
「撤回だ、やっぱお前強いなッ!!」
「あまり長期戦は嫌いなんだけどね、早めに倒れてくれないかな?」
「そいつは無理な相談だ。俺様はこの戦いを永遠に続けたいと思っているからな」
「そいつは残念だ。だとすると、お前は負けになる」
サタンはどこに置いてきたのか、レインとの戦いで使っていた斧がない。
最初から肉弾戦をする気満々で突っ込んできたのだ。
「負けだァ?」
いきなり地面は揺れ始める。
「さっきの地震だと!?気づかないうちに治まっていたのか」
「あぁ、地震は辞めていた。少々手荒すぎた。この世界が先に壊れてしまう」
サタンが気が付かぬうちに、地震は治まっていた。
エクスはわざと地震を治めていた。
「なんで地震をやめたとおもう?」
「知るかボケッ!!」
更に猪の如く、サタンはこちらへと一直線に走ってくる。
これを機に、エクスは自らの魔力の真の力を開花させる。
「教えてやるよ、地震ってのは最初のよりその次の方が強いんだぜ?」
ニッと笑うと同時、世界が再度揺れ始める。
走っているサタンはつまづき、何度も転がり続け近くの岩場にぶつかり止まる。
エクスの武器、トリアイナの力は水を操るだけではない。
地震を起こすことが可能だが、今までは小規模しか揺れなかった。
「トリアイナの力は、正直こんなものかと諦めてた。だがな、今ならわかるんだ。俺の魔力が眠りから醒めたおかげで、更に上の段階へと行けるってことにな」
小規模しか出来ないと、思い込んでいた。
それがエクスの一番間違えてはいけなかった部分。
地震は初期の揺れ――初期微動の後、より大きな揺れが起こる。
エクスはその性質を理解していなかったため、トリアイナの力全てを引き出せていなかった。
「クソ野郎……やってくれるじゃん?おっとっと……さっきとはまた別の強さの揺れだな。これじゃ立つことさえままならないな」
追い打ちをかけるかのように、エクスはニコリと笑い言い放つ。
「足元をすくわれるなよ?」
丁寧に、足元に来る攻撃を教えてあげていた。
そのおかげかどうかは別とし、サタンの足元から吹き出してきたマグマを綺麗に避けることが出来ていた。
「その傲慢さ……夫婦ってものは似るものなのか?くだらない。さっさとくたばりやがれ」
「俺はもう二度と誰にも負けない。自分自身の弱さにも、負けるわけがないんだよッ!!」
「上等だ人間!!悪魔と人間、世界という天秤にかけて勝負だ……!!」
悪魔と人間の代表とし、長とし、戦いは継続する。
今も尚地震は続いているが、そんなものは蚊帳の外。
誰一人として地震に意識はいっていなかった。
それもそのはず、目の前で起こっている戦いは普通の戦いではない。
自分たちの命すらも賭け金とされた、最後の戦争なのだから。
「リリーさん、どちらが勝つと思いますか?」
「私はもちろん人類最後の希望が勝つと思います。いいえ、勝ってもらわなければ困ります。セレネさんは?」
「同意です。何も出来ない事だけが心残りですが、今はあの方に命を預けています。ふふっ、確かに勝ってもらわないと困りますね」
最期かもしれないというのに二人は会話の中に笑顔の花を咲かせていた。
その間にも、サタンとエクスの戦いは熱を上げていた。
拳と拳の殴り合いは若干エクスが押されていた。
「小僧!!一度退け、小僧本人の魔力は無いのだから俺らを頼りに動け、死ぬぞ」
「そうじゃぞ、少しはワシらの魔力を使うことをオススメするぞ?」
二匹の龍の忠告を受けながらも、エクスは尚も自らの身体一つでサタンと対抗していた。
「なぁ、人間。いくらやった所で生身の人間が勝てるわけないだろ?いい加減にしろよ?」
「そうだな、もうそろそろこちらの作業も終わる頃だ。お前の負けだぜ?」
「何を――」
二匹の龍でさえも、エクスの目的を知らない。
そのため、今までただ純粋に殴り合っているものとばかり勘違いしていた。
「これでも喰らいやがれッ!!」
攻撃の動きは右ストレートで避けやすいものだった。
しかし、その踏み込みは先ほどとは違い深い。
「――ッ!?」
当たる直前でエクスの姿が一瞬にして消え去る。
「どこに行きやがったクソガキがッ!!」
エクスを探し、辺りを見渡すが近辺にはいないのか全く気配がない。
あらゆるケースを想定して常に動き、止まる時間を無くし隙を減らしていた。つもりだった。
突如、右腕に激痛が走り動きを止める。
何事かと目をやると、綺麗に消えていた。
「はぁ?何しやがったクソガキッ!!」
「これがレインの転移魔法・門の応用。転移魔法・窓と言ったところかな?しかし、レインも思いつかなかったのかな」
呑気に独り言を言っているエクスを見つけ、サタンは大きく飛び一気にケリをつけに来た。
大空からの見事なまでの殴りは、地面を抉るほど凄まじかった。
吹き荒れる砂埃に視界の全てが奪われる。
「お前、その力はルシフェルじゃねぇか……いいねぇ。この俺様を侮辱してるみたいでよッ!!」
吠えるように叫んだサタンを、軽く見つめエクスはひとまず力の様子見をする。
不意打ちとはいえ、レインを殺すほどの力はある。
「ふぅ――レイン、力を借りるよ」
背後にいる二匹の龍は、宙を舞い一気にサタンへと喰らいかかる。
まるで彗星のような二つの力に、誰しもが口を開けたまま閉じることが出来ない。
「面白い、戦いってのはこうじゃなくちゃッ!!」
水の龍を、真正面から殴り撃退する。
余りの派手さに水の龍は水へと姿を変える。
それを見て炎の龍は撤退する。
「チッ、小僧なんだあの力は。悪魔のレベルを超えてるぞ」
「《憤怒》と《傲慢》の悪魔の力を取り込んだ、悪魔の中で最強の存在ってところだ。恐らくあれを倒すのは世界中探しても俺らぐらいじゃないか?」
「小僧もなかなかに傲慢だな。さて、アイツを倒せる算段はあるのか?」
「俺とレインの力が合わさった今、俺らに勝てる奴はいない。なぁ、そうだろ?レイン」
返事はない。
が、何処かから返事が聞こえてくるようだった。
水になり消えていた龍が一度こちらへと戻ってきた。
「あの力相当なバケモンじゃな。たった一撃、しかも素手でワシを殺すレベルとは……いやはや、戦いというものはいつの時代も楽しきものですなぁ」
「来るよ――」
敵は真っ直ぐにこちらへと飛んでき、エクスの顔めがけて拳を伸ばしてくる。
その様は、止まることを知らないミサイルのようだった。
それをエクスは、避けるとは考えずに飛んでくる拳に向けて拳をぶつける。
その衝撃で、辺りの地面はさらに抉られる。
「素手の戦いはほぼ互角か……いいねぇ!!」
「互角か、そうか。勝手に思い込んでろ、サタン」
「なに――ッ!?」
ぶつけ合った拳は一度離れ、再度ぶつかり合う。
先程と違う点は一つだけ。
仕掛けたのがエクスということ。
サタンは思い切り飛ばされ、近くの岩へと激突する。
瓦礫の中から立ち上がるサタンを、エクスはさらに追い込む。
「撤回だ、やっぱお前強いなッ!!」
「あまり長期戦は嫌いなんだけどね、早めに倒れてくれないかな?」
「そいつは無理な相談だ。俺様はこの戦いを永遠に続けたいと思っているからな」
「そいつは残念だ。だとすると、お前は負けになる」
サタンはどこに置いてきたのか、レインとの戦いで使っていた斧がない。
最初から肉弾戦をする気満々で突っ込んできたのだ。
「負けだァ?」
いきなり地面は揺れ始める。
「さっきの地震だと!?気づかないうちに治まっていたのか」
「あぁ、地震は辞めていた。少々手荒すぎた。この世界が先に壊れてしまう」
サタンが気が付かぬうちに、地震は治まっていた。
エクスはわざと地震を治めていた。
「なんで地震をやめたとおもう?」
「知るかボケッ!!」
更に猪の如く、サタンはこちらへと一直線に走ってくる。
これを機に、エクスは自らの魔力の真の力を開花させる。
「教えてやるよ、地震ってのは最初のよりその次の方が強いんだぜ?」
ニッと笑うと同時、世界が再度揺れ始める。
走っているサタンはつまづき、何度も転がり続け近くの岩場にぶつかり止まる。
エクスの武器、トリアイナの力は水を操るだけではない。
地震を起こすことが可能だが、今までは小規模しか揺れなかった。
「トリアイナの力は、正直こんなものかと諦めてた。だがな、今ならわかるんだ。俺の魔力が眠りから醒めたおかげで、更に上の段階へと行けるってことにな」
小規模しか出来ないと、思い込んでいた。
それがエクスの一番間違えてはいけなかった部分。
地震は初期の揺れ――初期微動の後、より大きな揺れが起こる。
エクスはその性質を理解していなかったため、トリアイナの力全てを引き出せていなかった。
「クソ野郎……やってくれるじゃん?おっとっと……さっきとはまた別の強さの揺れだな。これじゃ立つことさえままならないな」
追い打ちをかけるかのように、エクスはニコリと笑い言い放つ。
「足元をすくわれるなよ?」
丁寧に、足元に来る攻撃を教えてあげていた。
そのおかげかどうかは別とし、サタンの足元から吹き出してきたマグマを綺麗に避けることが出来ていた。
「その傲慢さ……夫婦ってものは似るものなのか?くだらない。さっさとくたばりやがれ」
「俺はもう二度と誰にも負けない。自分自身の弱さにも、負けるわけがないんだよッ!!」
「上等だ人間!!悪魔と人間、世界という天秤にかけて勝負だ……!!」
悪魔と人間の代表とし、長とし、戦いは継続する。
今も尚地震は続いているが、そんなものは蚊帳の外。
誰一人として地震に意識はいっていなかった。
それもそのはず、目の前で起こっている戦いは普通の戦いではない。
自分たちの命すらも賭け金とされた、最後の戦争なのだから。
「リリーさん、どちらが勝つと思いますか?」
「私はもちろん人類最後の希望が勝つと思います。いいえ、勝ってもらわなければ困ります。セレネさんは?」
「同意です。何も出来ない事だけが心残りですが、今はあの方に命を預けています。ふふっ、確かに勝ってもらわないと困りますね」
最期かもしれないというのに二人は会話の中に笑顔の花を咲かせていた。
その間にも、サタンとエクスの戦いは熱を上げていた。
拳と拳の殴り合いは若干エクスが押されていた。
「小僧!!一度退け、小僧本人の魔力は無いのだから俺らを頼りに動け、死ぬぞ」
「そうじゃぞ、少しはワシらの魔力を使うことをオススメするぞ?」
二匹の龍の忠告を受けながらも、エクスは尚も自らの身体一つでサタンと対抗していた。
「なぁ、人間。いくらやった所で生身の人間が勝てるわけないだろ?いい加減にしろよ?」
「そうだな、もうそろそろこちらの作業も終わる頃だ。お前の負けだぜ?」
「何を――」
二匹の龍でさえも、エクスの目的を知らない。
そのため、今までただ純粋に殴り合っているものとばかり勘違いしていた。
「これでも喰らいやがれッ!!」
攻撃の動きは右ストレートで避けやすいものだった。
しかし、その踏み込みは先ほどとは違い深い。
「――ッ!?」
当たる直前でエクスの姿が一瞬にして消え去る。
「どこに行きやがったクソガキがッ!!」
エクスを探し、辺りを見渡すが近辺にはいないのか全く気配がない。
あらゆるケースを想定して常に動き、止まる時間を無くし隙を減らしていた。つもりだった。
突如、右腕に激痛が走り動きを止める。
何事かと目をやると、綺麗に消えていた。
「はぁ?何しやがったクソガキッ!!」
「これがレインの転移魔法・門の応用。転移魔法・窓と言ったところかな?しかし、レインも思いつかなかったのかな」
呑気に独り言を言っているエクスを見つけ、サタンは大きく飛び一気にケリをつけに来た。
大空からの見事なまでの殴りは、地面を抉るほど凄まじかった。
吹き荒れる砂埃に視界の全てが奪われる。
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