最弱が世界を救う。
真の敵。
怒りに身を任せ、エクスは国王がいると思われる場所へと急ぐ。
急ぐ途中、警備隊に何度も追いかけられたが戦いは避け全速力で走り続けた。
ミルティの力を借りているためか、いつも以上に体力があるようだ。
軽く一時間全力で走ったものの、僅かに息を切らすのみ。
「アブノーマルに加えて段階《神》の力ってかなり危険な存在だな。この力が敵に居なくて本当に助かったぜ」
「私の力はあくまで一時的なものです、黒幕と戦う時私の力はきっと朽ち果てているはずです。今は体勢を立て直すことをオススメします」
ソロモンズリングを空に掲げ、エクスは重いため息を吐く。
「はぁ……今ここで逃げても俺はいいと思っているさ。でもな、レインの残り時間がもう無いに等しい。だから今は一秒も無駄にできないんだ」
心の声を漏らし、ミルティは黙り込む。
すると、ソロモンズリングからもう一人の声が聞こえてくる。
「ミルティの力はまだ全力じゃないって、お前気づいているよな?」
「ソロモンさん、それは……」
「あぁ、確かにミルティにはまだまだ力があるって思ってる。これ以上の力を貸してくれるか?」
「ダメです。エクスさんの体がもたない可能性の方が高いです。なので、私の力はこれ以上は無理です」
丁重に断られ、少しばかり肩を落とすがミルティの言葉に嘘偽りはない。
だったら、ミルティの言う通り体への負担が大きく、下手をすれば死ぬのだろう。
だからこそ、その力貸して欲しいと心の底から思う。
「まぁ、今はいいよ。でも本当に厳しい時が来たら助けてくれる?」
「私の力の及ぶ範囲ですが……精一杯頑張ります」
「頑張るも何も力を注ぐだけだろ?」
ソロモンから痛いところを突かれたのか、ミルティは目をバッテンにしポカポカとソロモンを叩いていた。
そんな微笑ましい光景を見て、レインのことを頭に浮かべる。
「レイン……今頃どうしてるのかな」
時は戻り、エクスが牢屋へ連れて行かれた後―――
「どういうことか説明してもらえるかな?」
一人残っていた警備隊を捕まえ、レインは血相を変え精神を追い込んでいた。
やがて、心が折れたのかはわからないが、警備隊の硬い口が開く。
「ぜ、全部国王の指示だ。俺らは何も悪くないッ!!」
怯えた声で叫んでいた。
国王からの指示と聞き、レインは耳を疑う。
国王と言えばリリーの親だ。
つまりは、何かしらの理由がありエクスを消そうとしている。
この仮定に辿り着き、早急にエクスに取り付けていた標的を探す。
「あれ……?」
しかし、何度探すもエクスにつけていた標的が見つからない。
考えられる可能性は、標的の存在を知っていて、尚且つそれを消す意味を持つ者。
つまりは―――
「黒幕は国王ってこと、か。ねぇ、今の国王の名前は?」
ゆっくりと場を逃れようとしていた警備隊は、肩をビクつかせ、振り返る。
目には涙を貯めていた。
「さ、サタン=シェイン様……です」
「私と同じ名前……?そいつは一体何者だ」
「先代のアーネスト家とは全く違うと……聞いてます。それ以上は私はちょっと……」
一歩ずつだが、距離を取り挙句の果てには一目散に逃げられる。
もう少しだけ情報を貰おうとしていたが、これ以上は集める事が出来なくなった。
「それにしても、リリーやシャルテさんが国王の立場を降りていることが気になる……どうにか会えないかな」
ふと、気づくと足元には被害者の女性が倒れたままにされていた。
あまりにも不自然なことに、罠の可能性を考えたが近くにそれらしきものは見当たらなかった。
「被害者って言うのに、あの警備隊は容疑者だけを連れていくってどれだけマヌケなのかな」
恐る恐る女性の顔を見ると、レインは固まる。
「リリー……なの?」
顔は血だらけで、詳しく見ないと誰かすら判別は難しかった。
だが、散々見てきた顔のため一瞬で気づく。
「今すぐ手当を……あー、もう!私回復は苦手なんだけどッ!!どうすれば……どうすればッ!!」
焦りを顕にし、動揺を隠せない。
怪我の具合を見て、恐らく命に別条はない。
血は流れているが、回復魔法を使える者に頼めばなんとか大丈夫そうだ。
「そうだ、セレネの元にッ!!」
リリーを抱き抱えたまま、セレネの元へ転移魔法を使う。
一瞬で着いたものの、運悪くセレネは熟睡していた。
余程いい夢を見ているのだろう、口角が少し上がっている。
「起きて!!助けてよ!!」
「ふぁ……ふぁ!?ちょ、ちょっとどうしたの!?」
「話は後でするから、リリーを助けて!!」
「リリーさん!?」
寝ぼけていたセレネは、すぐさま眠たい目をこすり回復魔法の準備に取り掛かる。
腹部の大きな傷口に両手を添え、鮮やかな緑の光が輝き始める。
「傷口は治りました、あとは目を覚ますのを待つだけです」
「ふぅ……ありがとう」
頬を赤く染め、少しだけ照れているように見て取れた。
「さて、それじゃ説明してくれるんですよね?」
「実は―――」
全ての事情を話し終え、セレネは顎に手を置き何かを考えている。
時間が経ちセレネは状況を整理し終えたのか、落ち着き話をする。
「最近、リリーさんとの連絡が途絶えていたことは理解してますか?」
「そういえば、連絡して来なかったし、してなかった。そこまで深く考えたことは無かったけど、どうして?」
ふむ、と頷き冷静に物事を考える。
「私の予想ですが、私たちが近くにいなかった時に何かあったとしか言えませんね。何が起こったのかは私にはさっぱり」
「エインガルドの国王がつい最近変わったみたいなんだよね。それとなにか関係があるのかも」
二人が話していると、リリーは目を覚ます。
ゆっくりと起き上がり周りを見渡す。
「あれ……?私はなんでここに?それに、レインちゃん?」
「よかった、リリー達に会いに行こうとした時にはもう、傷だらけで死んじゃうのかと思った」
「そうだ私―――」
リリーから聞いた話を、最初は信じることが出来なかった。
明らかにおかしい事が山のようにあったからだ。
まず一つ目、
「いつものようにいきなりレインちゃんが現れて、遠目で見てたらお姉ちゃんを殺したんだ」
リリーの姉である国王、アーネスト・シャルテの死。
それだけでも受け入れることに時間がかかるというのに加え、殺した犯人がレインと来た。
「私はやってないッ!!」
「うん、それはわかってる。あんな魔法、見たことがないから」
「私とそっくりな敵……か。さっき警備隊の人に聞いた話だけど、新しい国王の名前サタン=シェインと言うらしい。私と同じ名前ということは、恐らくサタンが真犯人ってことになるかな」
段々落ち着きを取り戻し、真の敵の存在を睨む。
エクスを消そうとしている存在は明らかにサタンだ。
「《憤怒》の悪魔サタン、強敵だろうが必ず殺す。私の命と引換にしても―――」
急ぐ途中、警備隊に何度も追いかけられたが戦いは避け全速力で走り続けた。
ミルティの力を借りているためか、いつも以上に体力があるようだ。
軽く一時間全力で走ったものの、僅かに息を切らすのみ。
「アブノーマルに加えて段階《神》の力ってかなり危険な存在だな。この力が敵に居なくて本当に助かったぜ」
「私の力はあくまで一時的なものです、黒幕と戦う時私の力はきっと朽ち果てているはずです。今は体勢を立て直すことをオススメします」
ソロモンズリングを空に掲げ、エクスは重いため息を吐く。
「はぁ……今ここで逃げても俺はいいと思っているさ。でもな、レインの残り時間がもう無いに等しい。だから今は一秒も無駄にできないんだ」
心の声を漏らし、ミルティは黙り込む。
すると、ソロモンズリングからもう一人の声が聞こえてくる。
「ミルティの力はまだ全力じゃないって、お前気づいているよな?」
「ソロモンさん、それは……」
「あぁ、確かにミルティにはまだまだ力があるって思ってる。これ以上の力を貸してくれるか?」
「ダメです。エクスさんの体がもたない可能性の方が高いです。なので、私の力はこれ以上は無理です」
丁重に断られ、少しばかり肩を落とすがミルティの言葉に嘘偽りはない。
だったら、ミルティの言う通り体への負担が大きく、下手をすれば死ぬのだろう。
だからこそ、その力貸して欲しいと心の底から思う。
「まぁ、今はいいよ。でも本当に厳しい時が来たら助けてくれる?」
「私の力の及ぶ範囲ですが……精一杯頑張ります」
「頑張るも何も力を注ぐだけだろ?」
ソロモンから痛いところを突かれたのか、ミルティは目をバッテンにしポカポカとソロモンを叩いていた。
そんな微笑ましい光景を見て、レインのことを頭に浮かべる。
「レイン……今頃どうしてるのかな」
時は戻り、エクスが牢屋へ連れて行かれた後―――
「どういうことか説明してもらえるかな?」
一人残っていた警備隊を捕まえ、レインは血相を変え精神を追い込んでいた。
やがて、心が折れたのかはわからないが、警備隊の硬い口が開く。
「ぜ、全部国王の指示だ。俺らは何も悪くないッ!!」
怯えた声で叫んでいた。
国王からの指示と聞き、レインは耳を疑う。
国王と言えばリリーの親だ。
つまりは、何かしらの理由がありエクスを消そうとしている。
この仮定に辿り着き、早急にエクスに取り付けていた標的を探す。
「あれ……?」
しかし、何度探すもエクスにつけていた標的が見つからない。
考えられる可能性は、標的の存在を知っていて、尚且つそれを消す意味を持つ者。
つまりは―――
「黒幕は国王ってこと、か。ねぇ、今の国王の名前は?」
ゆっくりと場を逃れようとしていた警備隊は、肩をビクつかせ、振り返る。
目には涙を貯めていた。
「さ、サタン=シェイン様……です」
「私と同じ名前……?そいつは一体何者だ」
「先代のアーネスト家とは全く違うと……聞いてます。それ以上は私はちょっと……」
一歩ずつだが、距離を取り挙句の果てには一目散に逃げられる。
もう少しだけ情報を貰おうとしていたが、これ以上は集める事が出来なくなった。
「それにしても、リリーやシャルテさんが国王の立場を降りていることが気になる……どうにか会えないかな」
ふと、気づくと足元には被害者の女性が倒れたままにされていた。
あまりにも不自然なことに、罠の可能性を考えたが近くにそれらしきものは見当たらなかった。
「被害者って言うのに、あの警備隊は容疑者だけを連れていくってどれだけマヌケなのかな」
恐る恐る女性の顔を見ると、レインは固まる。
「リリー……なの?」
顔は血だらけで、詳しく見ないと誰かすら判別は難しかった。
だが、散々見てきた顔のため一瞬で気づく。
「今すぐ手当を……あー、もう!私回復は苦手なんだけどッ!!どうすれば……どうすればッ!!」
焦りを顕にし、動揺を隠せない。
怪我の具合を見て、恐らく命に別条はない。
血は流れているが、回復魔法を使える者に頼めばなんとか大丈夫そうだ。
「そうだ、セレネの元にッ!!」
リリーを抱き抱えたまま、セレネの元へ転移魔法を使う。
一瞬で着いたものの、運悪くセレネは熟睡していた。
余程いい夢を見ているのだろう、口角が少し上がっている。
「起きて!!助けてよ!!」
「ふぁ……ふぁ!?ちょ、ちょっとどうしたの!?」
「話は後でするから、リリーを助けて!!」
「リリーさん!?」
寝ぼけていたセレネは、すぐさま眠たい目をこすり回復魔法の準備に取り掛かる。
腹部の大きな傷口に両手を添え、鮮やかな緑の光が輝き始める。
「傷口は治りました、あとは目を覚ますのを待つだけです」
「ふぅ……ありがとう」
頬を赤く染め、少しだけ照れているように見て取れた。
「さて、それじゃ説明してくれるんですよね?」
「実は―――」
全ての事情を話し終え、セレネは顎に手を置き何かを考えている。
時間が経ちセレネは状況を整理し終えたのか、落ち着き話をする。
「最近、リリーさんとの連絡が途絶えていたことは理解してますか?」
「そういえば、連絡して来なかったし、してなかった。そこまで深く考えたことは無かったけど、どうして?」
ふむ、と頷き冷静に物事を考える。
「私の予想ですが、私たちが近くにいなかった時に何かあったとしか言えませんね。何が起こったのかは私にはさっぱり」
「エインガルドの国王がつい最近変わったみたいなんだよね。それとなにか関係があるのかも」
二人が話していると、リリーは目を覚ます。
ゆっくりと起き上がり周りを見渡す。
「あれ……?私はなんでここに?それに、レインちゃん?」
「よかった、リリー達に会いに行こうとした時にはもう、傷だらけで死んじゃうのかと思った」
「そうだ私―――」
リリーから聞いた話を、最初は信じることが出来なかった。
明らかにおかしい事が山のようにあったからだ。
まず一つ目、
「いつものようにいきなりレインちゃんが現れて、遠目で見てたらお姉ちゃんを殺したんだ」
リリーの姉である国王、アーネスト・シャルテの死。
それだけでも受け入れることに時間がかかるというのに加え、殺した犯人がレインと来た。
「私はやってないッ!!」
「うん、それはわかってる。あんな魔法、見たことがないから」
「私とそっくりな敵……か。さっき警備隊の人に聞いた話だけど、新しい国王の名前サタン=シェインと言うらしい。私と同じ名前ということは、恐らくサタンが真犯人ってことになるかな」
段々落ち着きを取り戻し、真の敵の存在を睨む。
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