最弱が世界を救う。
殺人。
「封印が解除された記憶が正しければレインを殺したのは、父であるゼクス……いや、ゼウスの命令だ。反逆の天使ルシファーを討てと言っていた記憶が……ある」
薄れかかった記憶を無理やり思い出し、真実を伝える。
もちろん、それが最適と思いエクスは話した。
「なぁ、聞かせてくれ。一体どんな裏切りをしたんだ」
エクスの中で引っかかっていた疑問を、レインへぶつける。
反逆者だの、堕天しただの言っているがその理由を聞くために。
「とある命令が来たの。アダムとイヴという神に仕えろという命令が。誰がそんな事を言ったのかは当時はわからなかった。恐らくだけど、ゼウスだと思う。それで私は断ったら、私を殺すように指示が出ていたらしいの」
断った理由は言わなかったが、エクスの中でもいくつかの候補があった。
しかし、その一つもレインへは聞かないことにした。
きっと辛い過去のはずだから、これ以上傷口に塩を塗る訳にはいかない。
「くっ、もう少しだけ時間があれば……」
「時間?」
キョトンとした顔で首を傾げる。
「ゼウスに一発お返しできたのになって思ったな」
「それはダメ!!」
レインは大声でエクスの提案を否定する。
その理由はエクスにだって分かっていた。
神に抗うと言うことは、反逆者の仲間入り。
世界のガンだの、様々な言い訳を付けられ殺される。
「わかってる。でも、俺はゼウスを殺す。悪魔達は二の次だ。一番の目標はゼウスを殺し、敵を打つことただそれだけだ」
「やめて……エクスくんまで死なせるわけには……行かないよ」
静かに涙を流し、今にも消えそうな声でつぶやく。
エクスはギリギリ聞き取り、聞かないふりをする。
そうしないと精神が削られ身も心ももたない。
「そんなくらい顔するなよ、なーに心配は要らない。俺が誰かに負けるわけがない。そうだろ?」
「うん……そうだね。それじゃ、私が死んだ後も私の復讐は終わらない……だね」
涙声で、後半何を言っているのか聞き取るのが困難だった。
一連の話を終わらせると、エクスは周りを見渡し、
「ルーは何処に行ったんだ?俺が目を覚ましてから一度も見てない気がするけど」
「ルーちゃんはやるべき事を見つけたって言ってどこかに行っちゃったの。もちろん私は止めたんだけど「誰にもできない、双星の子だから出来ることがあるの。大丈夫絶対帰ってくる」って聞かなくて」
「双星……か。記憶が戻ったのかな、何にしろ俺らじゃ止めることは出来ない、アイツにしか出来ない何かがあるって事だろうよ」
「双星って何?」
根本的なことが分かっていなかったレインに、ルーの両親のことを話す。
双星と呼ばれた夫婦の話は、広まっていないためレインは真剣に話を聞いていた。
ノヴァとロットの二人は、神に囁かれ騙された。
魔力に食われた二人は、苦しかっただろう。
そんな感情を抱きつつ話を最後まで聞いた。
「やっぱりルーちゃんの力は才能じゃなく受け継がれた力ってことだね」
「まぁ、そんなところだ。でもグラートのおっさんに悪いことしちゃったかな……」
「グラートと言うと、ルーちゃんの親代わりの人だよね?悪いことって何したの?」
「ルーを幸せにしてやれって頼まれていたんだ。今、ルーがやっていることは自分からじゃなく、使命だからやってるだけだと思うんだ」
「そんなことないよ、ルーちゃんは太陽のような笑顔で私に言ったの。パパとママを助けるために行くって」
話を聞いているだけで、ルーの天使の笑顔を思い出した。
実の娘ではないが、血の繋がった大切な家族のような存在。
いろんな心配をしていたが、一瞬でそんな悩みが吹き飛んだ。
「これ以上は止めよう。今は目の前の敵のことだけを考えないと心が持たないよ……」
「そう……だな。レインの命が尽きる前に《憤怒》の悪魔を倒す。ただ、相手が今まで通りに行くとは限らないな」
「《憤怒》の悪魔、サタンと言われてるけど《傲慢》である私と同等かそれ以上の存在。勝ち目はほぼないだろうね……」
レイン曰く、七つの大罪での戦力差は大きく違うらしい。
最強角が、《憤怒》と《傲慢》。
次いで《暴食》など続くと言っていた。
《色欲》などは、下っ端をまとめるための王として居るだけでありそこまで強くないとのこと。
「サタン……か。そいつの力を肌で感じたが俺と同じ次元とは思えない。あれは神と言っても過言ではないなぁ……」
「そんなしょぼくれたこと言ったらダメだよ」
レインはエクスの額を軽くデコピンし、頬をふくらませていた。
唐突なことに驚き口を開きっぱなしにしてしまう。
「エクスくん、君は世界中の人からなんて呼ばれてるか自覚はあるの?」
「英雄……?悪魔殺し?」
「確かに一時はそう言われてたかもね……でも今は違う。人類最後の希望と言われてるんだよ。その自覚を持って戦わないと世界は終わるよ。案外世界ってものは簡単に壊れるかもしれないんだし」
「人類最後の希望……俺が負けると世界が……」
「そんなに気負わないで大丈夫だよ、私がついてる」
優しく抱き寄せ、エクスは落ち着きを取り戻す。
暫く時間が過ぎると、日は沈み空には星が夜を飾っていた。
「これから、どうすればいいんだ?いや、答えはもう見つかってるのかな」
「最近おかしな事を言うね?どうしたの?」
「色々と言われたんだよ、試練の時に。答えを見つけることで人は成長するとかなんとか」
「なら答えは?聞かせてよ」
「決まってんだろ、指定された場所に行ってぶっ飛ばすまでだ」
「指定された……場所?」
「俺らの旅の初めて行った場所。最大国家、エインガルドだ」
最終決戦の地、エインガルドへ―――
同時刻、エインガルド中央街の裏通り。
「はぁ……はぁ……はぁ……早く、早くエクスさん達へ連絡をしないと、―――ッ!」
「良くもまぁそんな深手を負った状態で、最善の手を打てる思考能力がありますね」
少女は腹部から大量の血を流し、手のひらで抑え止血を試みていた。
止まることを知らない血は無情にも溢れ出る。
口から吐血し、白いドレスは赤く染まる。
「そこのお前、何をしている!!」
背後から聞こえた声に、犯人は逃走。
そのすきに少女は助けを求め、街路へと一心不乱に。
最後の力を振り絞り人気の多い場所へと辿り着く。
「さて、ひとまずエインガルドに来たことだしリリーたちに挨拶でも行くか。久しぶりに会う気がするなぁ」
「そうだね、それじゃ行こうか」
夜、エクスたちはエインガルドで一泊するために転移魔法を使い訪れていた。
二人は手を繋ぎ王城へ。
「なんだか夜に出歩くのっていけない事してるようでドキドキするねっ」
「あまり夜は出歩かないしね、まぁ、たまにはいいんじゃないか?」
「うんっ!」
夫婦仲良く歩いていると、突然誰かとぶつかる。
いきなり飛び出てきたのは少女だった。
「おっと、大丈夫?って、君は―――」
「いたぞ!!姫をお守りしろおおお!!!」
威勢のいい警備隊達がこちらへ向かって走ってきた。
「な、なんだなんだ」
あっという間に四方は警備隊に囲まれる。
ぶつかった少女は気絶していた。
「貴様、よくも姫を!!」
「待って誤解だ!話を―――」
「問答無用!!殺人罪でお前を拘束する!!」
手を背後にやられ、縄で縛られる。
縄を引きちぎろうと力を入れようとするが、思うように入らない。
何度も試すが次第に力は弱まり眠るように倒れる。
「エクスくん!!」
「下がれ!!」
殺意混じりに警備隊を睨むが、ビクともしない。
それだけ訓練が行き届いているのだろうか。
「エクスくんをどうするつもり。返答しだいでは黙っちゃいないよ」
「エクス……あぁ、七大悪魔を簡単に倒し英雄となった少年か。英雄だろうが関係ない。人を殺せば罪を与えられる。それだけだ」
「人殺し……?誰を―――」
ふと、先程ぶつかった少女に目をやると腹部付近が赤く染まり、口元には血が付いている。
……エクスくんなら一瞬で人を殺めることか可能……でも、理由がない。
そうだ、理由がない。
「エクスくんが犯人だって理由はあるのか!!」
「この現場を見れば一目瞭然。誰がなんと言おうと姫を殺したのはエクスとやらだ、言い逃れはできない」
「だからって―――」
「では、牢獄へ連れていけ」
あまりにも自己中心的な思考に、レインは行動を怒りに任せようとするがあと一歩のところでやめる。
そんな事をしてはエクスが悲しむ。
「くっ……くっそおおおおおおおお!!」
夜の街にレインの悲痛な叫びだけが響き渡る―――
薄れかかった記憶を無理やり思い出し、真実を伝える。
もちろん、それが最適と思いエクスは話した。
「なぁ、聞かせてくれ。一体どんな裏切りをしたんだ」
エクスの中で引っかかっていた疑問を、レインへぶつける。
反逆者だの、堕天しただの言っているがその理由を聞くために。
「とある命令が来たの。アダムとイヴという神に仕えろという命令が。誰がそんな事を言ったのかは当時はわからなかった。恐らくだけど、ゼウスだと思う。それで私は断ったら、私を殺すように指示が出ていたらしいの」
断った理由は言わなかったが、エクスの中でもいくつかの候補があった。
しかし、その一つもレインへは聞かないことにした。
きっと辛い過去のはずだから、これ以上傷口に塩を塗る訳にはいかない。
「くっ、もう少しだけ時間があれば……」
「時間?」
キョトンとした顔で首を傾げる。
「ゼウスに一発お返しできたのになって思ったな」
「それはダメ!!」
レインは大声でエクスの提案を否定する。
その理由はエクスにだって分かっていた。
神に抗うと言うことは、反逆者の仲間入り。
世界のガンだの、様々な言い訳を付けられ殺される。
「わかってる。でも、俺はゼウスを殺す。悪魔達は二の次だ。一番の目標はゼウスを殺し、敵を打つことただそれだけだ」
「やめて……エクスくんまで死なせるわけには……行かないよ」
静かに涙を流し、今にも消えそうな声でつぶやく。
エクスはギリギリ聞き取り、聞かないふりをする。
そうしないと精神が削られ身も心ももたない。
「そんなくらい顔するなよ、なーに心配は要らない。俺が誰かに負けるわけがない。そうだろ?」
「うん……そうだね。それじゃ、私が死んだ後も私の復讐は終わらない……だね」
涙声で、後半何を言っているのか聞き取るのが困難だった。
一連の話を終わらせると、エクスは周りを見渡し、
「ルーは何処に行ったんだ?俺が目を覚ましてから一度も見てない気がするけど」
「ルーちゃんはやるべき事を見つけたって言ってどこかに行っちゃったの。もちろん私は止めたんだけど「誰にもできない、双星の子だから出来ることがあるの。大丈夫絶対帰ってくる」って聞かなくて」
「双星……か。記憶が戻ったのかな、何にしろ俺らじゃ止めることは出来ない、アイツにしか出来ない何かがあるって事だろうよ」
「双星って何?」
根本的なことが分かっていなかったレインに、ルーの両親のことを話す。
双星と呼ばれた夫婦の話は、広まっていないためレインは真剣に話を聞いていた。
ノヴァとロットの二人は、神に囁かれ騙された。
魔力に食われた二人は、苦しかっただろう。
そんな感情を抱きつつ話を最後まで聞いた。
「やっぱりルーちゃんの力は才能じゃなく受け継がれた力ってことだね」
「まぁ、そんなところだ。でもグラートのおっさんに悪いことしちゃったかな……」
「グラートと言うと、ルーちゃんの親代わりの人だよね?悪いことって何したの?」
「ルーを幸せにしてやれって頼まれていたんだ。今、ルーがやっていることは自分からじゃなく、使命だからやってるだけだと思うんだ」
「そんなことないよ、ルーちゃんは太陽のような笑顔で私に言ったの。パパとママを助けるために行くって」
話を聞いているだけで、ルーの天使の笑顔を思い出した。
実の娘ではないが、血の繋がった大切な家族のような存在。
いろんな心配をしていたが、一瞬でそんな悩みが吹き飛んだ。
「これ以上は止めよう。今は目の前の敵のことだけを考えないと心が持たないよ……」
「そう……だな。レインの命が尽きる前に《憤怒》の悪魔を倒す。ただ、相手が今まで通りに行くとは限らないな」
「《憤怒》の悪魔、サタンと言われてるけど《傲慢》である私と同等かそれ以上の存在。勝ち目はほぼないだろうね……」
レイン曰く、七つの大罪での戦力差は大きく違うらしい。
最強角が、《憤怒》と《傲慢》。
次いで《暴食》など続くと言っていた。
《色欲》などは、下っ端をまとめるための王として居るだけでありそこまで強くないとのこと。
「サタン……か。そいつの力を肌で感じたが俺と同じ次元とは思えない。あれは神と言っても過言ではないなぁ……」
「そんなしょぼくれたこと言ったらダメだよ」
レインはエクスの額を軽くデコピンし、頬をふくらませていた。
唐突なことに驚き口を開きっぱなしにしてしまう。
「エクスくん、君は世界中の人からなんて呼ばれてるか自覚はあるの?」
「英雄……?悪魔殺し?」
「確かに一時はそう言われてたかもね……でも今は違う。人類最後の希望と言われてるんだよ。その自覚を持って戦わないと世界は終わるよ。案外世界ってものは簡単に壊れるかもしれないんだし」
「人類最後の希望……俺が負けると世界が……」
「そんなに気負わないで大丈夫だよ、私がついてる」
優しく抱き寄せ、エクスは落ち着きを取り戻す。
暫く時間が過ぎると、日は沈み空には星が夜を飾っていた。
「これから、どうすればいいんだ?いや、答えはもう見つかってるのかな」
「最近おかしな事を言うね?どうしたの?」
「色々と言われたんだよ、試練の時に。答えを見つけることで人は成長するとかなんとか」
「なら答えは?聞かせてよ」
「決まってんだろ、指定された場所に行ってぶっ飛ばすまでだ」
「指定された……場所?」
「俺らの旅の初めて行った場所。最大国家、エインガルドだ」
最終決戦の地、エインガルドへ―――
同時刻、エインガルド中央街の裏通り。
「はぁ……はぁ……はぁ……早く、早くエクスさん達へ連絡をしないと、―――ッ!」
「良くもまぁそんな深手を負った状態で、最善の手を打てる思考能力がありますね」
少女は腹部から大量の血を流し、手のひらで抑え止血を試みていた。
止まることを知らない血は無情にも溢れ出る。
口から吐血し、白いドレスは赤く染まる。
「そこのお前、何をしている!!」
背後から聞こえた声に、犯人は逃走。
そのすきに少女は助けを求め、街路へと一心不乱に。
最後の力を振り絞り人気の多い場所へと辿り着く。
「さて、ひとまずエインガルドに来たことだしリリーたちに挨拶でも行くか。久しぶりに会う気がするなぁ」
「そうだね、それじゃ行こうか」
夜、エクスたちはエインガルドで一泊するために転移魔法を使い訪れていた。
二人は手を繋ぎ王城へ。
「なんだか夜に出歩くのっていけない事してるようでドキドキするねっ」
「あまり夜は出歩かないしね、まぁ、たまにはいいんじゃないか?」
「うんっ!」
夫婦仲良く歩いていると、突然誰かとぶつかる。
いきなり飛び出てきたのは少女だった。
「おっと、大丈夫?って、君は―――」
「いたぞ!!姫をお守りしろおおお!!!」
威勢のいい警備隊達がこちらへ向かって走ってきた。
「な、なんだなんだ」
あっという間に四方は警備隊に囲まれる。
ぶつかった少女は気絶していた。
「貴様、よくも姫を!!」
「待って誤解だ!話を―――」
「問答無用!!殺人罪でお前を拘束する!!」
手を背後にやられ、縄で縛られる。
縄を引きちぎろうと力を入れようとするが、思うように入らない。
何度も試すが次第に力は弱まり眠るように倒れる。
「エクスくん!!」
「下がれ!!」
殺意混じりに警備隊を睨むが、ビクともしない。
それだけ訓練が行き届いているのだろうか。
「エクスくんをどうするつもり。返答しだいでは黙っちゃいないよ」
「エクス……あぁ、七大悪魔を簡単に倒し英雄となった少年か。英雄だろうが関係ない。人を殺せば罪を与えられる。それだけだ」
「人殺し……?誰を―――」
ふと、先程ぶつかった少女に目をやると腹部付近が赤く染まり、口元には血が付いている。
……エクスくんなら一瞬で人を殺めることか可能……でも、理由がない。
そうだ、理由がない。
「エクスくんが犯人だって理由はあるのか!!」
「この現場を見れば一目瞭然。誰がなんと言おうと姫を殺したのはエクスとやらだ、言い逃れはできない」
「だからって―――」
「では、牢獄へ連れていけ」
あまりにも自己中心的な思考に、レインは行動を怒りに任せようとするがあと一歩のところでやめる。
そんな事をしてはエクスが悲しむ。
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