最弱が世界を救う。

しにん。

結婚式。

誰にも語られない戦いが終わった。


「勝ったんだ……私たち、勝ったんだ」


「やっと、やっと終わったのですね」


「もうヘトヘト」


三人は倒れ込み、仰向けに寝転び空を見上げる。
朝、ソロモンへ戦いを挑んだが、現時刻は夕方を過ぎ、太陽と月がバトンタッチをしていた。


「それで、レインさん。つかぬ事をお聞きしますが、どうしてエクスさんの求婚を断ったのですか?」


「エクスくんが私の事を好きって気持ちは、痛いほどわかってる。でも、それ以上にエクスくんの心の隅にレヴィが居る」


トドメを刺す時、突然止まったソロモンの行動を思い出しながら語る。


「ソロモンの動きが止まったのは、多分だけどエクスくんがレヴィを好きって気持ちが勝ったからと思うんだ。だからあの時、求婚を断った。でも……でも、それは間違いだった……どうしてかな、断った時とても心が痛くなった」


レインは胸に手を当て、涙を流す。


「それってやっぱり、レインさんがエクスさんのことを好きって事ですよね。誰かに取られたくない、そう思っているのなら早めに仲直りした方がいいですよ?あぁ見えてエクスさんとても落ち込んでいましたし」


リリーの言葉に、レインは素直に頷く。


「あれって……」


背後からの気配に気づき、レインは振り返る。
その姿を見た瞬間、自然と涙が流れる。


「エクスくん……」


「ただいま、みんな」


エクスはゆっくりとこちらへ歩いてくる。
抱いている少女は四肢が無く、既に息を引き取っていた。


「その子は……」


「ミルティ。ソロモンへ忠誠を誓い、奴隷契約を結び、死んだ」


一同は静まり、目を閉じ黙祷もくとうをする。


「そっか、その子死んじゃったのか……まだこんな幼い子が」


唇を噛み締め、儚く散った命を悔やむ。
何をしたところでもう手遅れ。
その事を分かっていながらもレインは歯を食いしばり、涙を流す。


「ひとまず、エインガルドへ戻ろう。色んな人に迷惑をかけたはずだ。俺は一人一人謝りに行く」


エクスはどこか大人びた表情になっていた。


「エクスくん……話があるんだけど、良いかな?」


レインは心を決め、エクスを呼び出す。
誰もいない花畑まで、転移魔法で移動する。


「実は俺も話をしたかったんだ」


「エクスくんは知らないかもだけど、ソロモンに精神を奪われてもう半年近くすぎてる」


「そんなに……」


「この半年、ずっと考えてたんだよね。エクスくんとの結婚を断って、正解だったのか。それで、答えはさっきまで出なかった」


エクスは黙り込み、レインの話を聞く。


「そして、出た答えは間違えだった。断ったあの日から胸が締め付けられるように痛くて、エクスくんが消えた日から毎日が辛く、死にたいとも思った」


「レイン……また泣いてる」


心の声を出すと自然に涙が流れていた。


「だ、ダメだな……なんだか涙もろくなっちゃった」


何度も何度も涙を拭き取るが、涙は溢れ出て止まらなかった。
すると、急に全身を締め付けられる痛みが僅かだが感じられる。
目を開くと、締め付けていたものがエクスだと理解する。


「悲しい思いをさせてごめん……もう、どこにも行かないから」


「エクスくん……」


二人は見つめ合い、そっと唇を重ねる。


「レイン、俺と結婚して下さい」


「はいっ」


レインはこれ以上にないほどの笑顔で返事をする────






「ご結婚おめでとうございます!!」


エインガルドへ戻ると、大勢の人々が二人の結婚を祝福していた。


「ささ、式の準備は出来ておりますぞ」


執事であろう男性から案内されると、二人共衣装へと着替える。
エクスは白いタキシードを、レインは綺麗な白いドレスを身にまとい、式場へと急ぐ。
式場へ着くと、知っている顔から知らぬ者までがお祝いしていた。


「い、いったい何人の人がここにいるんだろう……」


「ざっと、数百はいそうだね」


二人はコソコソと後ろを向き内緒話をする。


「それでは、こちらへ」


二人は別々に案内される。
先に中へと案内されたエクスは、初めての経験に緊張する。
それもそのはず、エクスのいる場所は教会。
人生においての、最大イベントも言える結婚式の主役。


「そう緊張されなくて、もっと自然体で構いませんよ」


近くにいたセレネから、僅かな勇気を貰いレインを待つ。


「それでは、新婦様のご入場です」


司会者の声が響く。
何処からかオルガンの綺麗な音色が聞こえてきて、エクスは心を落ち着かせる。
扉が開くと、華やかなレインの姿が目に入った。
顔はベールで隠れているが、いつも見ていたレインとは違い大人な雰囲気を出していた。
本来の新婦入場の際は、親が同伴するものだがレインの親は昔に他界しており、急遽ゼノが親代わりとして共に歩いてくる。


「ついにこの日が来たね」


「うん……嬉しくて涙が出そう」


「泣くのはまだ早いよ」


レインの手にはブーケが持たされていた。


「レイン───」


「どうしたの?」


「とっても綺麗だよ」


レインは頬を赤く染め、下を向く。
セレネの綺麗な声で、二人の会話を遮断する。


「エクスさん。あなたはレインさんと結婚し、妻としようとしています。あなたは、この結婚を神の導きによるものだと受け取り、その教えに従って、夫としての役割を果たし、常に妻を愛し、敬い、慰め、助けて変わることなく、その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、死が二人を分かつときまで、命の日の続く限り、あなたの妻に対して、堅く節操を守ることを誓いますか?」


「誓います」


「レインさんは誓いますか?」


「はい、誓います」


「それでは、指輪の交換を」


エクスはレインへ。レインはエクスへ。
それぞれの愛の誓約の証とし、贈り合う。


「では、誓のキスを」


エクスはベールを上げて、レインの顔を改めて見る。
レインは目を閉じ、ウエディングキスを待っていて、とても綺麗だった。
顔を近づけ優しくキスをする。


「エクスくん、大好き!!」


レインは大きく飛び、エクスへと抱きつく。
九月十四日、エクスとレインは無事に結ばれた。
二人の結婚式は国中の人々からの祝福があり、長く大きく祝われた。






式場のはずれ────


「姉さん、綺麗な人だね」


「そうだね〜ベルくんっ」


小さい男の子と、その連れである女性は他人から見ればただの仲睦まじい姉弟。


「行こう姉さん、充分下見は出来たでしょ」


「うんっ、あれなら大丈夫そうかなぁ」


小さい男の子は一人すたすたと歩いていく。
「待ってぇ」と甘えた声で、女性は追いかけて行った────

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