最弱が世界を救う。

しにん。

最後。

無数の槍はレインの作り出した太陽へと一直線へと進み、衝突する。
槍の負けかと思い、レインはすぐさまソロモンへと意識を向ける。


「貴様一体どこを見ているのだ?よそ見は厳禁だぞ?」


「君の槍は私の太陽には勝てなかった。だから私は君へ───」


「だから何を見ている。お前の太陽は負けているぞ?」


ソロモンはニヤリと笑う。
指さした方を見ると、レインが作り出した太陽は跡形もなく消え無数の槍は矛先をこちらへ向けている。


「嘘でしょ───一体どうやって」


「簡単な話だ。貴様の太陽を鎮火したまでだ」


「エクスくんの力……か。すっかり忘れていたよ」


完全に槍の勝ち、というわけではなかった。
先程に比べ槍の数は半分以下になっており、残った槍も既に壊れかけていた。


「強がりは良くないよ?」


「大きなお世話だ」


そこから二人の戦いは、純粋な力比べへと変わる。
先制攻撃を決めたのはソロモンの槍。
レインは圧倒的なスピードで避け、顔スレスレに飛んできた槍を素手で掴む。
掴むまでは予定通りだったが、レインの掌は火傷で皮膚がただれていた。


「熱い……火を扱う私でさえ負けるほどの高温」


飛んでくる槍へと意識を向けていると、腹部へ強烈な痛みが走るのを感じる。
槍とソロモンのコンビネーションは、硬い防御すらも突破する。
レインはソロモンへと意識を集中させる。
が、それを読んでいるソロモンはレインの背後から槍をぶつける。
後ろからの飛来物を感知し、ギリギリの距離でかわし、転移魔法を使いソロモンの真横へと飛ぶ。


「エンジェル・ブラスト!!」


超高速移動からの懇親の一撃。
不意を突かれたソロモンは勢いよく吹き飛ぶ。


「なかなかの一撃だ」


ソロモンの傷はすぐに癒える。
心で舌打ちをし、更なる一撃を打つためにレインは最後の策へと手を打つ。


「セレネ、あれをやるよ!!」


「わかりました!!」


レインはセレネの元へ転移魔法を使い、再度上空へと移動する。


光臨こうりんの矢!!」


「私の力を受け取れえええ!!」


セレネが放った矢目掛けて、レインは炎のホーミング弾を連射する。
光臨の矢はレインの炎を受け取り、眩い光と熱い炎を輝かせソロモンへと一瞬で突き刺さる。


「「光焔こうえんの矢!!」」


刺さった瞬間、ソロモンの体は勢いよく燃え始め、悲痛な叫びがこだまする。


「やったか……?」


辺り一帯は火の海へと変わり果て、地獄の風景へとなっていた。


「あれをまともに喰らって耐えれるはずが────いや、相手は人間のことわりを超えた存在。油断はダメだね」


「その通りです、レインさん。現に叫び声が聞こえています」


火の海の中から、宝石のような綺麗な光が輝き始める。
赤い火の海の中で、蒼く輝く一つの宝石。
それを見て、セレネは一度見たことがある輝きに目を疑う。


「あの光は……」


「セレネ────?」


火の海から生還したソロモンの片目は、蒼く光っていた。


「あの目は、エクスさんと同じ目……と言うことは完全にエクスくんを取り込んだ……?」


「助け出す方法が───消えたということ?」


「その辺のことはまだ分かりませんが、言えることは一つです。力が完全体になったから、こちらが負ける可能性が高くなった、ということです」


セレネの言葉を聞き、置かれている自分の立場を再度確認する。
力はほぼ互角か相手が一枚上手うわて
油断するとすぐに首が飛ぶと思え。
全ての力を使ってでも、何としてでも、エクスくんを取り戻す!!


「あーぁ、やっと、力を完全に使える。エクスも強情なやつだったな」


「本当にエクスくんを完全に取り込んだの……?」


震えた声で問う。


「そうだ」


冷たい返答を貰い、レインは膝から崩れる。


「諦めないでください!!まだ希望が消えた訳では無いでしょうが!!」


いつもは温厚なセレネは、ここぞとばかりに大声を荒らげ、レインを叱る。


「諦めちゃられない……絶望するのは、手を全て打った後だ!!」


「レインさん、今こそ明けの明星の真の力を発揮する時です」


「明けの明星……?」


握っていた、光り輝く星砕きを見て理解する。


「叫ぶのです」


頭の中で再生される言葉は自然と湧き出てきた。


「宵を照らすは我が使命。いざ、夜明けの時よ!!」


光り輝く星砕きから、炎が漏れ始める。
世界を優しく照らす朝日のような輝きを放つ明けの明星。
明けの明星を片手にレインはソロモンへと力をぶつける。


「エノシ・ガイオス」


「その手は食らうか!!」


空中に無数に顕現するトリアイナをすべて切り落とし、レインはソロモンの首めがけて剣を振るう。
誰しもが「決まった」と思う瞬間、ソロモンは姿を消す。


「しまっ────」


「おせぇ!!」


背後から現れたソロモンの攻撃を避けるべく、転移魔法を使う。
離れた場所へ転移すると、レインは膝をつく。


「避けれなかった……」


トリアイナは確実に命を狙っていたが、結果は翼を三枚引きちぎることに成功した。
致命傷を負ったレインは熾天使してんし形態モードを解く。


「勝負あったな、私はこれから世界を救いに行く。地獄で眺めてな」


「世界を救う……何を言っている、壊すのじゃ?」


「勝手な勘違いだ。私は世界を、ミルティを救う」


予想していなかった展開に、レインの思考は停止せざるを得なかった。


「聞いてはなりません、レインさん!!現にソロモンは人を殺しています」


セレネの言葉で我に返る。


「そうだよ……そんな都合のいい話あるわけが無い。エクスくんを返してもらう!!」


生身の体でソロモンへと立ち向かう。
力の差は歴然、レインに勝ち目は初めからなかった。
それを分かっていながらも、レインは目の前の壁へぶつかる。


「邪魔だ」


吹き飛ばされ、血を吐きながらもレインは抗い続けた。


「もう、誰も死なせるわけには行かないんだ!!」


レインは過去の事を思い出しながら、ソロモンへと挑み続ける。


「鬱陶しい、ならば貴様は死ね」


トリアイナをレインへと向け、勢いよく突き刺す。


「リリー!!今だ!!」


「分かっています!!死者の帰還!!」


上空からひつぎが落ちてくる。
棺が開くと、そこから出てきた女性を見てソロモンの動きは止まる。
ソロモンには見覚えのない女性だったが、何故だか止まる。


「体が……動かない────ッ!!」


太陽の光を浴びて、煌めく青い髪。
青い髪は風に遊ばれ、空中を鮮やかに踊る。
彼女はそっと目を開けると、綺麗な青色の瞳がこちらを見ている。


「成功です、レインさん」


「ナイスタイミングだよリリー」


リリーは見たことがなかったが、話には聞いていた女性。


「改めて見ても、綺麗だよね《嫉妬》の悪魔、レヴィ」


戦地でありながらも、レインは目の前の女性────レヴィを見て褒める。
しかし、レヴィは動かない。


「本当は動かせるようになってから使うはずだったけど、私の力不足です」


「いや、いい時間稼ぎだよ。リリー、決めちゃって」


「死を視ること帰するが如し。これで終わりです、鎮魂歌レクイエム


動けないソロモンを、リリーは斬り付ける。
剣は体へ触れると、沈みこんでいく。


「終わった……」


リリーが斬ったものは命でも体でもない。
ソロモンの魂そのものを斬り、強制的に浄化させた。
バタりと倒れ込み、ソロモンは死んだ。


「ん────?」


ソロモンの死体へすがり付くミルティを見てセレネは目をそらす。


「レインさん、一旦ここを離れましょう。私たちがここにいてはダメです」


三人は一度離れ、時間を潰す。


「ソロモン……さん。短い間でしたが、ありがとう、ございます……ソロモンさんと、過ごした人生、とっても楽しかった、です」


ミルティは感謝の言葉を伝えながら血を吐く。
セレネの血の監獄ブラッド・プリズンから逃げ出すために、縛り付けられていた四肢ししを引きちぎりここまで辿り着いていた。


「ソロモンさん、私、ソロモンさんのことを、好きになっちゃいました。奴隷、失格ですね」


徐々に呼吸は荒くなるが、ミルティは無理やり笑う。


「お別れ、なんて寂しいことは、言いません。私も、後を追います。ソロモンさんは、きっと地獄に行くと思います、私も地獄行き、ですね。私は、どんな所へでも、付いていきます」


無理やり笑っていたミルティは、涙を流す。
涙を拭き取る手、すらないミルティは流れ続ける涙を止めることは出来なかった。


「こんな役立たず、要らない、何て言われると思いますが、私はどんな場所へでも、付いていきます……ゲホッ、はぁ……」


必死に縋り付き、ミルティはソロモンの唇と自分の唇を重ねる。


「私を、お嫁さんに────」


最後の力を振り絞るも、足りない。
ミルティは倒れ、静かに息を引き取る。

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