最弱が世界を救う。

しにん。

死神。

「二人共順調に強くなっていってますね、ですが慢心してはいけません」


「大丈夫、その辺はわかっているから」


「私はちょっと慢心しそうでした」


リリーは舌を出し、お茶目なポーズをとる。
その姿をみて、セレネとレインは苦笑い。


「よし、休憩終わり。じゃんじゃん行こう!」


三人は再び自身の課題へと立ち向かう。
何度も闇魔法を使い、限界が来ては休憩。
そんな日々が続きリリーの総魔力は、前の二倍以上になっていた。


「流石に同じ相手だと飽きてくるかな」


「わかりました、では昔の私では無理だった技を使ってみますね。死してなお生き続ける魂、全てを狩りとれ!!死の管理者タナトス!!」


リリーは親指を噛み血を地面に垂らす。
血は円形に広がっていき、一つの魔法陣を作成する。
チャキンっと音がすると、今まで戦っていた悪魔達の首が飛び跳ねる。


「何今の、速すぎて何も見えなかった」


「これが今の私が出せる最大の魔法、死の管理者タナトスという神を召喚させたの」


目を凝らして見ると、リリーの横に不気味な影が現れる。
全身はマントで覆われており、顔はフードで隠れているため何者かさえもわからない。
ただ一つわかることは、タナトスと呼ばれた者が持つ鎌は沢山の魂を切ってきたことだけ。
ただならぬオーラだけでレインは息を呑む。


「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ?ちゃんと私に隷属してるから」


「ほんとに?何かの拍子に殺しに来たりしない?」


「んー、分かんないなぁ……」


「ま、まぁいいか。それでそのタナトスを召喚してどうするの?」


「決まってるでしょ?この子と訓練するよ?」


「確かに強そうだけど、大天使形態モードになったら多分相手にもならないよ?」


「大丈夫、多分レインさんは勝てないから」


「それはどういう──」


質問は寸前で止められる。


「なるほど……確かに予想以上だね」


レインの首元には鎌がかけられていた。
お前は弱い、と言っているかのような目線にレインは素直に驚く。


「タナトスは刈った魂の数だけ強くなる。得られる力は絶大なものだけど、その分の代償も大きい。失うものは私の寿命」


「具体的にどのくらい減るの?」


「百体倒すと私の寿命が一年減る計算かな」


「今倒した数はどのくらいなの?」


「初めて召喚したから刈った数は、今相手にしていた百四十四体」


タナトスがいれば前回のソロモンとの戦いにも勝てた。
そう思わせるほどの力がタナトスから感じ取れる。
が、あの時は弱かった。力がなかった。
レインは自分の未熟さを痛感する。


「もっと、私はもっと力が必要だ!!」


唐突に決意を叫ぶレインに驚き、二人共一気に視線を向ける。
恥ずかしかったのか、両手で顔を隠す。


「そんなことより!!始めようよ」


未だに顔を赤くし、レインは少しばかり涙を溜めていた。


「わかった、わかったってば」


呆れた顔でリリーは反応する。
指をパチンっと鳴らすと、タナトスは殺気を見せつける。
まるで、手を抜くと殺すと言わんばかりに。
レインは何も言わず、大天使形態モードへと姿を変える。


「死を刈り取り、死を管理する者。全ての力を以てお相手します」


「礼儀正しいのね?それじゃ、練習相手として戦わせてもらうわ」


六枚の羽を広げ、星砕きを顕現させる。
今までとは違い星砕きの色が少し闇に染まっていた。


「星砕き?何これ」


「恐らくはレインさんの心の乱れを感じ取り、百パーセントの力を出せずにいるのでしょうか?」


「心の乱れ……か。確かにそうかも」


それでも───私は強く。
心の中で叫び、自分に言い聞かせる。
その隙を突き、タナトスが目の前まで近づくのを気づけずにいた。


「油断は禁物。戦場で余所見よそみは死だ。常に相手を見ろ」


意識をタナトスへ向けると、時すでに遅し。
首元には鎌がピッタリとくっついていた。


「これが実戦なら死んでいたぞ?戦いを甘く見るな人間よ」


「済まなかった。少し考え事をしていた」


レインは頬を軽く叩き、気合を入れる。
再度練習を始める。
大きな鎌を振り回し、動きが遅いと思っていたが予想以上に早く、レインは防御だけで精一杯だった。


「くっ、強い」


「当たり前です。強くなくては死の管理者なんて名乗れません」


激しい戦闘は、練習ということを忘れるほど緊迫した雰囲気だった。
たった一手のミスは死へと繋がり、相手の一瞬の隙を見つければ勝利へと繋がる。
戦いとはシンプルで、強者が勝つ。弱者は死ぬ。


「いいですか、練習は実戦のように。実践は練習通りに。簡単のように思えますが、正直に言いますとそれは無理です。だからこそ、実現するとより強くなれます」


「奥が深いですね、でもとても勉強になります」


アドバイスを度々貰い、戦っていくうちにタナトスの力へと少しずつ追いついていく。
防御で精一杯だった少し前とは違い、今は押している。
攻撃は最大の防御なり、まさにこの事だった。
レインは防御への意識をすべて飛ばし、次々と攻撃を仕掛ける。
タナトスの小さなミスを見逃さず、大きな一歩を踏み出し、勝利の一手を───刺そうとした瞬間タナトスが消える。


「あれ?どうしたのリリー」


ドサッ───
リリーから聞こえてきた音は返事ではなく、何かが倒れた音。
振り向くとリリーはその場で倒れていた。


「大丈夫?熱があるっぽいけど」


「大丈夫。タナトスの召喚時間を大幅に超えてたみたい。タナトスは呼べて五分かな」


力の代償は予想より酷いものだった。
今の段階では戦闘は愚から、召喚後の維持さえ危うい。


「リリー、質問いいかな?」


「なにかな?」


「今のリリーが出せる最強の技はわかった。ならその次の技はある?」


「一つ私だけが使える魔法、死者蘇生。死者が生き返るって言っても、動かないし中身は空っぽの人形さん。あまり使えない魔法だけどね」


「死者蘇生……か」


「どうしたの?」


「いや、大丈夫」


レインは少し考え事をするように、口元に手を置き黙り込む。


「もうすぐ、決戦の時ですね。その時まで自分を追い詰めてください」


セレネの一言で、二人共頷く。
三人共、目標は一つ───エクスの奪還。
互いの想いを胸に、三人は修行を続ける。
それが、破滅をいざなうとしても……

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