最弱が世界を救う。

しにん。

涙。

「おい、貴様一旦止まれ」


「なにっすかー?」


ゼルから思い切り引っ張られ、無理矢理同行させられていた。


「私をどこへ連れていくつもりだ」


「ゼノのとこっすよ、ゼノも君と会うのを楽しみにしてるはずっす」


何度も止めるように訴えたが、とうとう目的地へ着くまで無理矢理だった。
何度か振りほどこうと全力で抵抗したが、見た目や態度とは裏腹に力は強い。
後半からはソロモンは諦めムードで仕方なく連れていかれた。
連れてこられた場所はどこか古びた建物だった。


「さぁ、ゼノへって言いたいですが貴方は誰っすか?」


「ここまで無理矢理連れてきてそれはないと思うが?」


「まぁまぁ、質問に答えてもらうっすよ?」


「いいだろう。私はソロモン、人間の王だ」


「へぇー」


適当な返答にソロモンは少し怒りを覚えたが、得体の知れない強さの前に一歩退く。


「ゼノ〜、エクスくん来たっすよ〜」


「あぁ、今行く」


目の前の扉から出てきた少年は一言で言うと美少年。
鮮やかな金髪は風に靡き、両目の赤と青の瞳は太陽の光を浴び美しく光って見えた。


「初めまして、私はゼノだ。よろしくソロモン」


「で、私達は何故ここに連れてこられた?」


「君たちは今指名手配中なのは知ってるかな?」


「指名手配中?一体私達が何をしたと?」


「先日、亜人が沢山住んでいる国で大暴れをしたそうじゃないか、その罰という事だよ」


「何も知らない奴と話すつもりは無い。邪魔した」


その場から逃げるように背を向けると、ソロモンは失態に気づく。
たった一瞬でソロモンの体は自由を奪われた。


「私が逃がすとでも思うかい?」


ゼノの周りに見える電気のようなものを見てソロモンはやっと理解する。
全身の筋肉を電気ショックさせ、一時的に麻痺させられていた。


「ミル……ティ……逃げろ!!」


ソロモンでも敵わない相手とわかり、ミルティは逃げようとするが目の前に立ち塞がるゼルによって逃げ場を失う。


「さぁ、君も同罪っすから、一緒に来てもらうっすよ?」


不気味な笑みのまま近づいてくるゼルに恐怖を抱き、涙を流す。


「ごめん、なさい……」


「泣いて謝ってもダメっすから」


ミルティは恐怖によって涙を流したわけではなかった。
ましてや、命乞いの為の涙でも無かった。
謎の涙を察し、ゼルは一気に攻撃態勢へと切り替える。


「まだ……その力は不完全だ……やめろ!!」


力を振り絞りソロモンは叫ぶ。
だがミルティはもう止まらない。
ミルティの体の周りから急に風が吹き始め、砂埃をあげる。
砂埃で姿が消えると、ゼルは追いかけるように突っ込む。


「待ちやがれっすよ!!」


砂埃の中へゼルが消えた瞬間、何者かの影が飛んでくる。


「姉さん!?」


予想外の出来事にゼノは立ち上がり、ゼルの元へと走る。


「大丈夫か、姉さん」


「何っすか今の一撃。まさかあの小さな女の子が?」


やがて砂埃が消え始めると、現れたのは一人の女性だった。
ゼルの標的だった、触れると壊れそうな華奢な体の持ち主とは掛け離れた姿にソロモン以外の人が驚く。


「まさか、アブノーマルっすか?あんな化け物相手だと骨が折れるっすよ」


「仕方ない、私も参戦しよう」


「お、ゼノが手伝ってくれるとはどんな心変わりっすか?」


「姉さんは知らないかもだけど、アブノーマルの力の開花は年齢が低いほど強さは増す。さっきの女の子は多分十歳未満、舐めてかかると死ぬぞ」


「ご忠告どうもっす」


砂埃が完全に消え女性の全身が完全に姿を現す。
身長は大人とほぼ大差なく、豊かな胸は異性を魅了する。
大きな耳はピンと立ち、凛とした表情がよく絵になる。


「私の力はご主人様のために。全ての力を捧げます」


頼りなかったミルティは、頼り甲斐のある女性へと姿を変えた。
ソロモン自身、この姿を初めて見た時は言葉を失った。
護身術の練習をしていると、ミルティの肌には赤い模様が浮かび上がりいきなり変身した。
見た目だけではなく、強さも段違いだった。
体術では先日戦った、アブノーマルのパラクを凌駕するほど。


「ゼノ、私は遠距離で攻めるっす。接近戦で勝てる気がしないっす」


「了解。作戦開始」


ゼノの指示が出た瞬間、ゼルは後方へ全力で走り出す。

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