最弱が世界を救う。

しにん。

終戦。

上空から地面に叩きつけられたのは───レインの方だった。
レインの体は既に限界を迎え、戦える状態では無かった。
それでもレインの強い思いは体を動かす。


「レインさん!!もう辞めてください、それ以上やると死にますよ!!」


リリーはレインを抱き抱え、大粒の涙を流す。
無情にも空を飛ぶソロモンはトドメを刺すために、動いていた。
地を震わせる低い唸り声は、世界の終わりを告げるようだった。


穿うがて、地を割り海を割りて、星をも貫け!!海王ポセイドン『トリアイナ』」


エクスの最終武器とも言えるトリアイナを生成する。
自らの魔力も注ぎ込み真っ黒にトリアイナを染める。
その姿は槍ではなくまるで───死の鎌。
リリーとレインは死を察する。
目の前の敵はいくら抗っても勝てない。
勝たせてはくれない、と。


「───ッ!!」


見ていたソロモンが視界から消え、次の瞬間には目の前に来たことで死を受け入れた。
死を視ること帰するが如し、リリーが最後に思い描いた言葉。
その意味は、死をのぞんで恐れるな。
散々口にしてきたその言葉は、常に勝ちを確信した時に使ってきた。


「まさか、最後にその言葉を向ける相手が自分自身とはね──」


槍が体を貫く瞬間、違和感に気づく。
貫かれたはずの槍は貫いておらず、当たる手前約一ミリで止められていた。
二人はカタカタと震え顔を上げる。
ソロモンの顔を見ると苦しそうにしていた。


「何故だ──何故最後にお前が──」


『その子達は殺させはしないよ、ソロモン』


ソロモンの体は一つだが、心は二つあるように見える。
レインはすぐにもう一人の心の持ち主に気づく。


「エクスくん!!目が覚めたんだね」


『待たせた。だけどまずはソロモンをどうにかしない限り精神の主導権はソロモンの物のままだ』


「笑わせるな、力の後継者よ。貴様はもう目覚めさせる訳にはいかない」


『がああああああああああああああ!!』


悲痛な叫びが辺り一面へ響く。
空中へ展開された魔法陣から飛び出てきた、鎖がソロモンの体を縛るとすぅっと消える。
カチリ、と施錠された音がするとソロモンは倒れる。


「さて、体を拘束し抵抗できないようにしよう。じゃないと命がいくつあっても足りない」


少しだけ回復した体力で立ち上がりソロモンへと近づく。
あと一歩まできて、レインの足は止められる。


「──ダメ」


誰も予想しなかった声が谺響こだまする。
ソロモンをかばうミルティを呆れた顔でレインは言葉を発する。


「どいて。私はエクスくんを取り戻さないとダメなの」


「ダメ!!」


ミルティは断固として拒否する。
首は縦には振らず、答えは変わらない。
あまりの頑固さにレインは眉間にしわを寄せ頭を抱える。


「どうしてその人を庇うの?」


「私の、命の、恩人。誰も、殺させは、しない!!」


耳を塞ぐほど大きな声はゴエティアを呼び起こす。


「どうしてあの本がッ!!」


セレネはゴエティアを見るな否や驚嘆する。


「セレネあの本何か知ってるの?」


「あれは悪魔を召喚できると言われる魔法陣が書かれた、ゴエティアと呼ばれるグリモワールです。かつてのソロモン王が封印したとされる七十二体の悪魔を召喚できると言われています」


「あ、悪魔を召喚──」


ミルティの前に飛んできたゴエティアは開き、とある悪魔のページで止まる。
その悪魔をミルティは見たことがあり、助けられた。


「ぐ、グリモワール・ゴエティア展開オープン、い、召喚イヴォークセーレ」


「お呼びですかマスター─── ってあれ、君は誰かな?それにマスターのその姿はどうなさったんですか?」


「そ、ソロモンさん、をここから、逃がして。お願いします!!」


「ふむ、君はマスターの味方のようですね。あちらの三人が敵ですか、ひとまず撤退しましょう」


ゼーレがソロモンとミルティの肩に触れるとその場から消える。
仕留め損ねた事にレインは怒りを隠せない。

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