最弱が世界を救う。

しにん。

弱い。

爆発により、周りの地形は跡形もなく吹き飛ぶ。


「ほう、これでダメなのか」


「いや〜、危なかったよ」


砂埃が消えると大きな翼が姿を現す。
レインの体は大きな翼に守られ難を逃れた。
しかし、翼の至る所が傷つき完全に防げたわけではなかった。


「一発大きなのを貰ったからお返しをしないとね」


レインはニコリと笑うと右手を天に掲げた。
ソロモンは上を見ずに察する。


「おいおい、それは反則だろ」


「お互い様だよ?」


空には太陽が二つあった。
一つは世界を照らす太陽。
一つは落下する太陽。


「これはヤバいな」


ソロモンは冷や汗をかきながら、対策を練る。
逃げる事は不可能だと仮定し、分厚い壁を作り出す。
ソロモンの魔力全てを使って壁を作り上げる。
それだけでは足りないと思い、水で出来た球体を落ちてくる太陽へと目掛けて投げつける。


「燃え尽きろ!!サンバースト!!」


水の塊と太陽がぶつかり合い、凄まじい量の蒸気が発せられ周辺をサウナ状態へとさせる。
太陽は水をすべて蒸発させるが、勢いは死んでいない。
近くの国へ被害が出る恐れがあるため、セレネは固有結界を発動し、半径百kmの円で周りを覆う。
ソロモンの壁と太陽がぶつかる。
レインは指を鳴らすと、太陽が消える。
ソロモンが立っていた場所には大きなクレーターができ、所々はまだ燃えている。


「レインさん……、エクスさんは大丈夫なんですか?」


「殺せなかった。手応えがなかったから多分逃げられた」


レインは警戒態勢をとき、セレネ達の元へ向かう。


「危ない!!レインさん!!」


「えっ?」


咄嗟のことに後ろを振り返ると槍が飛んで来ていた。
ギリギリの所を避けるが、腕に少し当たり血を流す。


「往生際が悪いって言うかなんと言うか。完全に君の負けだったよ?」


「まだまだ、終わってねぇぞ」


「そんなボロボロの体でどうするつもり?」


ソロモンはギリギリの所で悪魔を召喚し、命を取り留めていた。
命は無事だが身体的ダメージは大きく、立っているだけでもままならない。
ソロモンの目は死んでいなくとも、体は限界を迎えている。


「君はもう負けた。私よりも弱かった、いいね?」


「弱い……?」


その瞬間、何かが壊れる音がした。
ソロモンの体は震えだし、宙へ浮かぶ。


「レインさん逃げてください!!」


「えぇ!?わ、わかった」


大空を舞い遠くへと逃げる。
全速力で飛んでいる最中、嫌な空気に飲み込まれる。


「俺は……弱くない」


ソロモンの体から溢れ出る魔力により、固有結界を難無く壊す。
底知れぬ魔力が収まるとセレネはあることに気がつく。


「嘘でしょ───かすかにですがエクスさんの力を感じます。これはあくまでも予測ですが、エクスさんとあのソロモンの力が混じり合い、より強力な強さを身に宿そうとしています」


「それなら、エクスくんの精神が目覚めつつあるという事?」


「チャンスがあれば、エクスさんを取り戻せるかも知れません」


思いもよらぬ奇跡に、レインは喜びを隠せない。
しかし目の前で膨れ上がり、暴走一歩手前のソロモンを見ると喜びが一転し恐怖へとなる。


「まさか、あれを倒せと言うのかな?」


「ですが完全にこちらに敵意を向けている以上戦わざるを得ませんね。それに私の固有結界を容易く破るほどの力です。一瞬の油断が死だと思っていたがよさそうですね」


「微力ではありますが、エインガルドの姫として、皆さんの友として参戦します」


ソロモンからは大きな角が二つ生え、背中には黒い羽が現れる。
その姿はまるで───魔王。


「俺は、弱くなんか無い!!」

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