最弱が世界を救う。

しにん。

グリモワール。

何も無い草原の中、二人の影。
それを餌へと悪魔が近づき、捕食される。


「見事な力。これがあれば次こそは」
「すごい、力です、ね」


初めて見る召喚術にミルティはただただ感心する。
ソロモンの力の源はグリモワールと呼ばれる魔法の本。
本の中には様々な魔法陣が描かれてあり、それらを駆使し悪魔を呼び出す。
ソロモンが手にしているグリモワールは、『ゴエティア』。
かつて、ソロモンが封印したとされる72の悪魔を呼び出す。


「まだこの体に慣れていない。本調子を出せばもっと面白いことが出来る」


ソロモンは不気味な笑みを浮かべながら、歩を進める。
遅れないようにミルティは小走りで追いかけるが、背が低く足が短いためずっと走っている。


「それよりもずっと走っているが疲れないのか?」
「数時間は、走れ、ます。でも、そろそろ疲れて、来ました」
「そうか、すまなかったな。それではこの辺で休憩とするか」
「はい、ありがとう、ございます」


ミルティは呼吸を落ち着かせ横になる。
空は晴れているが木の下にいるため幾分か涼しく感じられる。
ソロモンはミルティが寝たのを確認し、少し離れて再度力の検証を始める。


「グリモワール・ゴエティア展開オープン召喚イヴォークベリアル」


本から炎が巻き上げソロモンの体を覆い尽くす。


「地獄の炎、汝に使えるかな?」
「私を舐めるなベリアル」
「いいだろう、我が力存分に使うがよい」


背中から一対の炎の羽が生え存在感だけで悪魔を威圧する。
瞳の色は紅く染まり、体の周りには炎が渦巻く。


「地獄の炎によりて、燃え盛れ」


一言で目の前の悪魔は発火し、悲痛な叫びを上げながら灰へと生まれ変わる。
灰は風に運ばれ跡形もなく消える。


「ありがとう、ベリアル」
「なに、我が主の願いとあらば」


まとっていた炎は『ゴエティア』へと還ってゆく。


「昔ほどではないが充分に力は使えるようだな。おっとすまない、起こしたか?」
「あ、いいえ、大丈夫、です。それよりも、大分回復、したので」
「先へ進みたいところだが、時期に日が暮れる。今日はここで野宿になりそうだ。野宿は平気か?」
「は、はいぃ」
「そうだ、そんな汚い身体だと気持ち悪いだろう」


ソロモンはエクスの力を使い、水を生成する。
掌から湧き出る水は空中で止まり、大きな水玉へとなる。
ミルティは全身を覆うローブを脱ごうとしないため、ソロモンは少し怒りながら問う。


「どうして服を脱がない。お前を洗おうというのだぞ?」
「えっと、その、えぇい!!」


半ば無理やりローブを脱ぐと、体は小さいながらも胸は程よく大きくとても華奢な体をしている。
体型よりも驚いたことが


「お前……女だったのか?」


ソロモン自身、ミルティが女だということを気づかずにいたこと。
ローブで体を隠してはいたが、顔は出していた。


「えぇ?気づか、なかったん、ですか?」
「その……すまない」


それから、二人の空気は気まづくなり無言の夜が始まった。
聞こえてくる音は、虫の鳴き声やたまに悪魔の唸り声。
この空気に耐えれなくなったのか、ソロモンが声を発する。


「その、なんだ。寝ている時に悪魔に襲われちゃいけないから魔法をかけるぞ。グリモワール・ゴエティア展開オープン召喚イヴォークバラム」


本から一人の男が飛び出てくる。


「この度はどうなさいましたか、王よ」
「私とこのミルティに夜が明けるまででいい。不可視の力を使ってくれ」
「その願い聞き入れました」


二人の姿は透明になり、悪魔はこちらの姿を確認することは不可能となった。
欠点としては、互いに透明になるため場所の確認ができない。


「あれ、ソロモンさん、どこです、か?」
「私はここ───」


手には柔らかな感触が伝わる。


「ひゃう」


ミルティと思われる声は、今まで聞いたことがない高さで響く。


「私は今どこを触った?」
「む、むねですぅ」


声は怯え、明らかに泣いている。
そこから二人の空気は更に悪化する一方であった。

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