最弱が世界を救う。

しにん。

後継者。

王女との話を終えるとエクスは多少ではあるが、元気を取り戻していた。
自らの変わりように少し驚きつつも、別の事へと意識を向ける。
求婚し、玉砕したエクスの頭の中はレインで一杯だ。


「エクスさん、お気分はどうですか?」
「まぁまぁ、ってとこかな。それでレインは?」
「多分ですが庭へ向かったのではないでしょうか?」


セレネからレインの大体の場所を聞き、すぐ様飛んでいく。
庭へと着いたがレインは見当たらない。
少しの間探してみるが、やはり気配すらも感じ取れない。


「もう移動したのかな。人っ子一人いな────なんだあれ?」


視線の先には、森へと続く道がある。
気にしたことはないが、明らかに人が通った跡がある。
少しばかりの好奇心を胸に森へと歩を進める。
初めて踏む土地だが、人が通った跡と足跡を頼りに奥へと進む。


「だいぶ険しくなってきたな。流石にこんな奥まで来るわけないよね」
 

周りは自然で包まれ、空気が澄んでいる。
言葉通りの未開拓地だ。


「さて、戻るか」


来た道を引き返そうと振り返った瞬間、誰かとぶつかる。


「あ、ごめんな────」


ふと、顔を上げると見慣れた顔がある。


「なんで……?」
「初めまして、私の力の後継者」


ぶつかった相手は、エクスそっくりの少年。
最初は疑い、目を擦り確認するがやはり目の前の光景には変わりない。


「後継者……?」


頭が真っ白になり、目の前の少年が発した言葉はほぼ聞こえなかった。
かろうじて聞こえたのは「後継者」という単語のみ。
理解が追いつかないため、エクスは目の前の少年へ聞くことにした。


「まだ君は気づいていないだろう。だから、君の中に残された私の魔力を使いこうして話している」
「一体何のことだ?」
「君は選ばれたのだよ。ソロモン王の後継者に」
「ソロモン王の後継者?だから、何の話を────」


聞き返そうとするエクスは目の前の力の強さを察し黙り込む。
目の前の相手は圧倒的に強い、と体が訴えかける。


「ふむ、なかなか察しがいい。気に入った、体を貰うぞ」
「うぐっ、うわぁ!!」


突然体が熱くなり、全身に痛みが走る。
これまで体験したことがない痛み。
まるで死んだと思わせるほどの痛みにエクスは意識を飛ばす────。






エクスが外へ出かけると同時に、レインは別の入口から城へと帰っていた。


「あら、レインさんここにいらしてたんですね。エクスさんが探しに行きましたよ?」
「会わなかったけど?」
「すれ違いですかね、中庭へと行きましたよ」
「わかった、行ってみるね」


セレネから案内され、中庭へと移動する。
気が立っているのかいつもよりも歩く速度は早く、すぐに到着する。


「ん?あれはエクスくん?」


中庭にはエクスがポツンと一人で立っていた。
何もせずただ1点を見つめている。


「おーい、エクスくーん」


大きな声で呼ぶと、エクスは振り向く。


「貴様は誰だ?」
「えっ────」


突然のことにレインは言葉が出ない。


「何度も言わせるな。貴様は誰だ」
「いや、エクスくん私だよ。レインだよ?」
「エクスか……」


エクスは目の前に空間を作り出し、そこから何処かへと消え去っていく。
レインは咄嗟のことに驚き、走って駆け寄るが間に合わずエクスは消える。

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