最弱が世界を救う。

しにん。

異端。

「それでは、試練の儀式を始めます。」


暗い部屋でセレネの声が響く。
《暴食》の時とは違い、魔法陣を床に書いていない。
修行の成果はまずここで披露された。


「今後旅先でも儀式をするために、魔法陣無しで出来るように私も修行していました。」


エクスは眠りにつき、ムシュの図書館へと意識を飛ばす。




「───っと、さてとムシュ。試練を始めよう。」
「はい、マスター。」


試練の部屋に行くにつれ、エクスの足取りは重くなる。
姿形はレヴィ。中身は別人。
そんなことを考えていると、徐々に表情も無くなっていく。


「それでは、試練を始め───のはずですが、今回はイレギュラーです。覚悟をしてください。」
「……?」


ムシュの注告の意味が全くわからず、扉を開ける。
すると扉の向こうから女性が現れ、エクスに抱きつく。


「えっ!?誰……?」
「また会えました……エクスくん。」


突然のことで頭は回らなかったが、エクスはふと涙を流す。
「レヴィ……?」
「うん。私だよ。」
「どうして、レヴィの心が……?」


「イレギュラー」の言葉が妙に引っかかる。
一体目の前で何が起こっているというのだ。


「説明します、マスター。この試練で現れる存在は組み込まれたデータです。心があるなんて絶対にあり得ない───はずでした。この現象は恐らく、マスターへの強い思いが出した奇跡、とでも言いましょう。」


またレヴィに会えたことにエクスは涙を流すことしか出来なかった。


「それじゃあ、試練を始めようか、エクスくん。残念だけどこの試練が終わると、私は役目を終え消滅する。」
「消えてしまうんだね。」


試練の終わりがレヴィの終わりと理解し、覚悟を決める。


「もう、逃げない。レヴィ、試練とは何を?」
「試練の前に確認したいんだけど。私が渡したネックレスはちゃんとある?」


死ぬ直前渡されたネックレスを出し、レヴィに見せる。


「魔力反応……?まさかこの中に何か封印したの?」
「封印かどうかはわからないが、俺なんか暴走したらしく、その時にネックレスの中へ吸い込まれた。そんな話感じの話を聞いたけど。」
「なるほど、エクスくんが隠し持っていた魔力。それなら納得がいく。それじゃ、始めようか。」


何をするのか聞かされずに試練が始まった。
始まったのと同時に、レヴィは容易くネプチューンを生成する。


「金髪の少年と戦った時、エクスくんはネプチューンを完成させた。だけど、君のは私の上位互換に当たると考えてもいい。」
「ま、まって。俺のが上位互換……?」
「簡単に説明すると、私と君との魔力差だよ。君の中には何かとんでもない者が潜んでいる。」


レヴィはわざとらしくムシュへ視線を送る。
ムシュは気づかないフリをし、無視を決める。


「俺の中にとんでもない者……それが一体どんな関係を?」
「つまりは、そのとんでもない者の力を使える。私が使えなかった魔法もさえ使えるだろう。」


今までエクスは、魔法が使えないと思っていた。
それが今は使える。
しかも、教えてくれた師よりも、強くなる。
そんなことを言われ、エクスは天にも昇るような気持ちになっていた。


「あ、でも、一歩でも踏み間違えるとどこまでも弱くなるよ。心の持ち方によっては、先日のように暴走しかねない。」


一瞬で地面に叩きつけられた。


「慢心はダメってことだよ?」
「肝に銘じておきます……」
「さて、本題。そこで、私の試練はとある技を習得してもらう。その技は、軽く人を殺せる力を持っている。細心の注意をはらいつつ挑んで欲しい。」


レヴィが真剣な眼差しをエクスに送ると、エクスも悟り喉を鳴らす。



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