最弱が世界を救う。

しにん。

元気。

1週間眠り続けたためかどうも体が怠く重たい。


「とてつもなく体が重たいんだが。」


エクスは体の不調を訴えた。


「んーなんでだろうね?もしかして言ってた記憶と関係あるのかな?そう言えば、もうそろそろ体を動かしても大丈夫な頃だし腕試しでもしてみる?」


念のためエクスは少しの間修行を中断していた。
もちろん体のことを考えてだが、エクスは少しやり過ぎてはないかというほどレインが面倒を見ていた。


「腕試しかぁ……そうだね。やってみよう。」
「うん!行こう行こう!」


いつも以上に元気のいいレインと共に外へ出て取り戻した記憶を確認してみる事にした。
レインがいつも以上に元気な事には理由があった。
もちろんエクスが目を覚ました事もあるが、エクスが眠っている間ファントムから心躍る事を言われた。


「──この少年はとても面白い。」
「それはどういう意味ですか?」


ファントムの独り言に、なかなか目を覚まさないエクスを心配し、涙を流しているレインが問いかける。


「もちろんそのままの意味さ。ゼクスが封印した記憶が面白いものばかりだ。レイン君が惚れた男はとてもいい男だ。」


ファントムは仮面越しでもわかるほどニコリと笑いレインを元気づける。




「ふっふふ~ん♪」
「やけに上機嫌だけどどうしたの?」
「いや~なんでもないよ~」


周りを幸せにするほどニヤニヤしてるレインにエクスは、保護者の様な目をして見守る。


「あんまり浮かれすぎて足元をすくわれないようにね?」
「だいじょー、ぶへっ」
「言ったこっちゃない。大丈夫?」


注意した瞬間レインは見事につまづいて転ぶ。
あわてて手を差しのべるエクスに、レインは顔を真っ赤にして照れる。


「あ、ありがと///」
「ちゃんと注意してね?」
(意識しすぎでしょ私!いつも通りに!平常運転!平常運転!)


心の中で反省会を終えて自らの頬を軽く叩き気を引き締める。


「さ!早く行こ!」


まるで天使のような笑顔でエクスを引っ張り外へ連れ出す。




エクスとレインが腕試しを始める同時刻───


「こちらチームニケ。《嫉妬》の悪魔を逃した。そっちへ向かった。」
「こちらチームアイギス。了解っす。」


エインガルドを東に行った所──ラフィナと呼ばれる国のはずれの荒野で戦いが行われていた。
世界最強と呼ばれた軍隊『アテナ』と《嫉妬》の悪魔が戦っていた。
深手をおった《嫉妬》の悪魔が逃げるように海へと飛んでいった。
『アテナ』は前衛のチームニケと後衛のチームアイギスの2チームに分かれ、ニケが《嫉妬》の悪魔と交戦していた。
だが、一瞬のすきをついて《嫉妬》の悪魔が逃げた。


「こちらチームアイギス。すまねぇっす。あいつ速すぎて撃ち落とせませんでした。海へと逃げられてしまいましたっす。」
「こちらチームニケ。今回の作戦は失敗だ。1度ラフィナへ戻り各自休みを取るように。それでは解散。」


チームニケの隊長ゼノ・フェンルが指示を出しそれぞれラフィナへ軍を戻す。
鮮やかな金髪を風になびかせ、赤と青の瞳が日に晒されて光っていた。


「《嫉妬》の悪魔……次こそは……」


ゼノは低く唸るような声で呟く。



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