最弱が世界を救う。

しにん。

恐怖。

「さぁ、どこからでも来なさい。」
ニコリと笑いエクスを挑発する。
「言われなくても!」
両手に持った剣を絶え間なく振り続ける。
先程とは違い《暴食》は前を向き目を開いて剣を避ける。
「どうしたどうした。そんなもんか?」
前を向いているからか《暴食》からは余裕な表情がうかがえる。
「まだまだぁ!」
レインとの1週間という短い修行はとても中身が濃ゆく無駄がなかった。
最弱とバカにされたエクスがここまで動けるのもレインのおかげだ。
それでもまだエクスは弱いままだった。
「さて、私からも行きますか!」
《暴食》がエクスに突っ込んでくるのを見てエクスは驚く。気づいた時には頬の熱が熱くなるほど強い拳を受けていた。
「反撃するなんて聞いてないぞ!」
「言ってないからね。でも、ただ剣を当てるだけとも言ってはいないぞ?」
明らかにハメられたエクスは目の前の現実を受け入れるしかなかった。


1度作戦を立てるため後ろへさがる。
(どうする……俺の剣術じゃ当てることはまず無理。うまくスキを突ければ……っ!そうだ!)
エクスは1つ作戦を思いついた。


「よし!行くぞ!」
エクスは両手に持った剣を強く握り直し《暴食》への走り出す。
途端にエクスは左手に持っていた剣を《暴食》へと投げる。
流石に驚いたのか大きく右へ飛ぶ。
そのスキを逃すまいとエクスは、予測していた通りの方へ動き、残していた右手の剣で《暴食》へ振り下ろす。
「決まった!」
エクスはここで完全に勝ったと思い込んだ。
気がつくと右手に激痛が走る。
「ぐああああああああああああ」
悲痛な叫びが部屋一帯に響く。
エクスの右腕は綺麗に切断されていた。


「流石に今のはちょっと驚いたよ。でも済まないね。腕を切らせてもらったよ。でも心配はいらない、試練が終わると元に戻るよ。」
戻ると言ってもそれは試練が終わった後である。
つまり試練の最中は左腕1本で戦わなければいけない。
劣勢に立っていたエクスは更に追い込まれる。
「ぐっ……まだ……まだだ!!」
「威勢は認めるが他がダメだ。」
追い討ちをかけるように《暴食》はエクスを殴り、蹴り、心を折る。
「お前には圧倒的に足りないものがある。それが何かわかるか?」
「俺に足りないもの……?」
エクスは考える。
(強さが足りない……?いや、そんな事であいつは足りないなんて言わない。元から知っているから。)
壁に寄りかかり考えるが答えが見つからない。
「教えてやろう。それは覚悟だ。」
その瞬間エクスは、はっと気づく。
確かにエクスには様々な覚悟が足りなかった。
世界を救う覚悟。七大悪魔を倒す覚悟。そして何より命を奪う覚悟。
それら全てがエクスには足りていなかった。
「覚悟が足りなければ強くなんてなれない。せいぜいこの場では自分を恨め。」
《暴食》の言葉が重くのしかかる。


エクスは気づいた時には涙を流していた。
「俺は……俺には、まだ足りないものだらけだ……でも俺は全ての悪魔を倒すと誓った。全てを!」
エクスは我を忘れ傷だらけの体を動かし《暴食》へと突っ込む。
先程同様、余裕の表情で避けようとした《暴食》が避け無かった。正確には"動けなかった"
「なに!一体何が起こっている!」
目の前の現実を信じられない《暴食》は自分の体が恐怖で震えていることに気づく。
「私は一体何に恐れているのだ……」
動こうとしない《暴食》をめがけてエクスは剣を体の前へ持っていき突き刺す。


「試練終了ですマスター。」
突如ムシュの声が響いた。
何が起こったのか《暴食》とエクスは見当もつかなかった。

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