最弱が世界を救う。

しにん。

覚悟。

「それでは、試練はじめです。」
ムシュの合図と共に一直線に走り出し剣を振り下ろす。
だが、《暴食》は後ろを向き更には目を閉じて回避する。何度も剣を振るうが《暴食》にはかすりもしなかった。
「背中に目でもあるのかこいつ……だったら」
エクスはベルゼバブを倒した時と同じように体を動かそうとした。しかし体は言うことを聞かず転んだ。
「えっ……前よりも弱くなってる……?」
エクスが困惑しているとムシュが無表情のまま答える。
「ベルゼバブを倒した時のとおりに動かそうとしても無駄です。あの時は私が全身の筋肉を増強させていたので。」
あの時思い描いたように動けていたのはムシュのおかげだった。その事を忘れ自分の強さだと思っていた。
エクスは自分が強いと錯覚していた。


軽く30分は過ぎただろうか。
エクスは《暴食》に剣を振るうが未だに目すら開けてもらえなかった。
「そんな剣では私には当てることは出来ないぞ。」
短く、強く、冷たく告げる
「まだまだ!!」
エクスは両手に剣を持ち振り回すが無駄だと理解した。
「お前の弱さは覚悟が足りていないことだ。お前は何の為に戦う?」
《暴食》が振り向きエクスに話しかけた。
「七大悪魔の全員を倒して世界を救う。それだけだ!」
「救って何をする?」
《暴食》は目を細めにらみつける。
「なんの……ために?」
この時エクスは初めて世界を救う事の難しさ、意味、それら全てを考えた。
「すぐに答えれないようではまだまだ夢物語ということだ。そんなんでは一生私には勝てない。」
エクスは肩で息をして考える。


俺は何の為に戦っている?
何かを守るため?いや、何も守ろうとしていない。
じゃあ何の為に……
目をつむり自分の心に問いかける。


俺は──強くなりたい。
強くなって親父を超え、世界を救い、全ての人を守り、尊敬され、バカにしてきた連中を見返したい。
全ての弱き者の見本となり強くなりたい。
様々な考えをするがそれではまだ足りないと自覚する。
そして脳裏に幼き頃の思い出が蘇る。
あの子との約束を。




「だいぶ考えているようだが、そろそろ答えを聞こうじゃないか。」
《暴食》は問い詰める。
「俺は……約束を果たすために戦う。」
「約束?それは?」
「全ての悪魔を倒す。」
《暴食》は大きな声で笑い始めた。
「ふふっ、ふはははは!約束のために戦うか。面白い。いいだろう。試練を始めよう。」
《暴食》は試練を始めようと言った。
それがどんな意味か知らずにエクスはただひたすらに剣を振るう。

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