最弱が世界を救う。

しにん。

《暴食》9

「ふふふふっ!はははははっ!!この俺をここまで追いやる人間が現れるとはな。楽しくなってきたじゃねぇか!」
ベルゼバブはやや劣勢になってはいたが、それでも尚戦いを楽しんでいた。
「レイン!準備はどんな調子だ!」
「準備はOK!いつでも行ける!」
エクスとレインはセレネの作戦の確認をする。
「レインさん実行はまだです。このまま押してチャンスを待ちましょう。」
セレネの言う通り、あの作戦は一瞬のスキをついた一撃必殺の勝利への道だった。
「まさか七大悪魔と謳われた俺がたった3人に負けそうになっているとは……」
「何が3人だ……死んでいった兵士達も共に戦っている!あいつらの命を無かったことになんてさせるか!」
エクスは恐ろしい目つきでベルゼバブを睨みつけ吠える。


3人の連続攻撃はどんどんとベルゼバブを追い込む。片腕と羽を1枚切られたベルゼバブは一気に衰弱した。
エクス達3人はそれで勝ちを確信していた。
さっきまでは見えていなかった勝利の道。
「勝てるっ!ここからが正念場だ!」
「うん!」「はい!」
3人が声を発した瞬間、ベルゼバブの様子がおかしくなった。


ベルゼバブの目は黒く染まり奇妙な叫びをあげる。
目から血の涙を流し、切断された腕の傷口から血が溢れ出す。恐らくは活動限界なのだろう。
魔力の補給がほぼ無しの状態でこの戦いを繰り広げていた。ベルゼバブがゲートから出現してから約1時間が過ぎていた。
普段通りの戦いであればここまで魔力を消費せず勝っていただろう。
だが、今回は1度形態を変化させ、さらにはその状態で自身を強化していた。
もうベルゼバブの魔力はそこをついていた。


「ベルゼバブ!お前にはもう勝ち目はない。大人しくここで死んでくれ!」
「あぁ、恐らく勝っても負けても死は近い。だったら───」
ベルゼバブの心臓であろう場所が急に光りだす。
「一体何をする気だ……?」
するとセレネは説明を始める。
「状況がよろしくありません。恐らく《暴食》は自爆するつもりです。自爆用に魔力を残していたのでしょう。七大悪魔の魔力であればこの国すべてを吹き飛ばす威力があるはずです。」
「自爆を……?止める方法はあるのか?」
「推測ですが心臓が止まれば自爆はできないはずです。今こそ"あれ"をするべきです。」
セレネは遂に作戦の実行へ移した。




エクスはレインから借りた聖宝星砕きを片手にベルゼバブへ突っ走る。
咄嗟の出来事にベルゼバブは近くにあった岩を投げる。エクスはその岩を避けようとしなかった。
ベルゼバブは避けようとしないエクスに驚き目を見開く。岩は地面にぶつかり砕ける。その場にエクスの姿はなかった。
「なっ!あいつはどこに……」
「安らかに眠れ!」
突如後ろからエクスとレインが現れ、聖宝星砕きがベルゼバブの心臓を貫いた。

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