守護者は眠る

香月 玄_コウヅキ ハル

Episode9

4

「ちなみに…カヤ…さん?」
カヤ。』
彼は嗜めるように言った。僕は続けて話す。
「…は黒ノ民の力を使えるんだよね?目は隠れて見えないからわからないけど、髪は黒いし…黒ノ民でしょ?」
『あー…俺は…黒ノ民の力“も”使えるな。』
「…も?」
妙な言い方が気にかかり、つい聞き返すと、カヤはしまった、と言うように顔を反らす。
『俺は…民の長並みに強いからな!』
そう慌てたように言った彼は、これ以上追求されたくないのか知らないが、困ったような雰囲気である。
「…ふーん?」
納得がいかないものの、困らせるのは我ながら申し訳なく取り敢えず頷くのだが。
(力が強いと金ノ民以外でも、別の力も使えるんだっけ…?仕組みがイマイチわからないや…。)

「ね!ちょっとやってみて!見てみたい!」
ぱっと場の雰囲気を変えようと極力明るく言った僕の言葉に、親切なことにいいぜ、と頷いて立ち上がった。そして僕の目の前で手のひらを広げてみせる。
『〈黒…フォンセ〉』
その静かな宣言の言葉と同時に、彼の広げた大きな手のひらの上に真っ黒な“靄”が表れた。そしてそれは少しずつ大きくなっていく。

「!!!!!」
これには流石に呆気にとられ、ニの句が継げなかった。だって…言い方は違えど、いま自分が見ているのは魔法だ…魔法なのだ。
息を吸うのも忘れ見入っているうちに、手のひらをはみ出るかはみ出ないかくらいまでに大きくなったそれは“成長”をストップした。

「すっっっっっご!!!!!!」
目を輝かせて様子を見守っていた僕。カヤは満足気に頷いて、もやを投げるように手を払った。

その時のもやはまさに“雲の子を散らす”だ。散り散りになって跡形もなく消えていく。

「いいなぁぁ、僕にも出来たらなぁぁ…。」
そんなことを言うと、やってみれば、といとも簡単に言ってくれた。
『もしかしたら瑞玄ミハルも力を持つ者の1人かも知れないぞ?』
「何億分の一だよ?!」
『宣言だけでもかっこいいぞー、やってみろって。』
はたからみれば厨二病だ。
だが、どうせここには2人しかいないのだからと開き直り、挑戦はしてみようと思い、彼を真似て宣言してみた。
…勿論何も起こらない。そりゃあそうだ…わかっていたけど何だか悔しい。
加えて彼の大爆笑。

あーもー!うるさーい!!プンスカと頬を膨らませ、大爆笑しているカヤを一発殴ろうと追いかけ回した。
…出来ないことくらいわかっていたさ。

一向に捕まらないので諦めてそっぽ向いた。
まだ彼は肩を震わせて後方で笑っていた。

瑞玄ミハル〜、明日は来るのかァ?』
ようやく笑いがおさまったようだ。こちらへ来ながら問いかけた。
「…来ていいなら?」
上目遣いで言うと彼はニィ、と笑って僕の頭を軽く小突いた。
『いつでも来いよ?』

彼といると、笑いが絶えないようだ。
出会えてよかったと思える相手に出会える確率こそ何億分の一だろう。それは特別な力を手に入れるより価値のあるものだと思う。



出会ってそんなに日が経っていないのに、彼は、僕にとって兄とか、親友とか…そんな存在になっていた。
…一瞬“近所のオジサン”、と思い浮かべたのを知ったら彼は怒るだろうか。

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