拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。
拝啓、❬教皇❭殿。哀れなものだな。
❬教皇❭。それはかつての❬法王❭である。
今では王という立場を降り、現在の❬法王❭の助言役、また各行政機関のトップを担っている。
❬法王❭の力は子供へと遺伝する。つまり、❬教皇❭は現在の❬法王❭の実の父親に当たる。
やはり元々は常人族の切り札であり、年老いた今でも一線を画す力を保有している。
その❬教皇❭に対して、軽口を叩く程の余裕を持つ男がいた。
その男とは……
「まだそんな聖職者ごっこをしているのか?❬大神父❭よ」
「おっと『ごっこ』とは酷い。こちらはいつも神に懺悔しているというのに」
そういうものの、❬大神父❭の口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「もういい。その口を閉じろ」
「分かったよ。ちなみに……要件に入ってもいい?」
「口を閉じろと言ったろうに……。それに、許可を取らなくても入るだろうよ、お前は」
呆れた顔で❬教皇❭が言う。
「ああ。それはそうだけど。で?これは許可が出たってことでいいんだよね?」
「……」
どこまでも呆れるような表情を作る❬教皇❭。
「じゃあ、それは無言の肯定ってことで!」
そう言った次の瞬間には❬大神父❭は得物の槍を魔法で取り出し、❬教皇❭の目の前に迫っていた。
❬教皇❭に向かって無慈悲な突きを繰り出す。彼方との訓練では出さなかった本気の攻撃。
「急に攻撃を仕掛けてくるのも変わらんな」
しかし、❬教皇❭はそれを顔色一つ変えずに防御魔法で受け止めていた。
❬教皇❭の『無詠唱』。かつて❬法王❭だった彼が接近戦でも戦えるように編み出した技術。
使える者はこの世界におけるトップクラスの魔法使いのみ。
「ハッ!この攻撃でくたばるような奴に私の相手が務まるか!?」
自らの本気の攻撃がいとも簡単に受け止められたというのに❬大神父❭は楽しそうにしている。
「貴様の初撃を防げる者など、もはやこの世界に数えるほどしかおらんだろう」
魔力により作られた障壁と、鋭い槍がぶつかり合い、細かい魔法の光を散らす。
「!」
そこで何かに勘づいた❬大神父❭が即座に後ろへ跳んだ。
その刹那、❬大神父❭がもと居た場所にとてつもない衝撃が生じた。
「ほんとにさ、それ反則だよね。あと一瞬反応が遅れてたら自分の攻撃の衝撃で死んでたじゃん」
「いとも容易く、それを回避したくせによく言う」
魔法《反転》。魔法の効果そのものは至ってシンプル。自分が受けた物理衝撃をそのまま方向を逆転させて返すというもの。
恐ろしいのはこの魔法ではない。真に恐ろしいのは、❬教皇❭は魔法そのものに魔法付与できるということ。
今の場合だと、防御魔法に《反転》を付与していた。
一つの魔法に付与できる魔法の数は最高で三つ。
❬教皇❭のみに許された、数々の敵を屠ってきた不可視の刃である。
「ははっ。いいねぇ、久しぶりに全力で戦えるよ!」
「この戦闘狂が!」
もはや、この二人の攻防は常人の目で捉えられるものではなかった。
幾重もの金属の光が刹那の内に閃く。
しかし、それと同時に❬教皇❭の前に魔法障壁が展開され、次の瞬間には❬大神父❭に衝撃が返る。
それを❬大神父❭は全て回避する。
……が。それを先読みしていた❬教皇❭がすかさず電雷を纏った紅蓮の焔を放つ。
宮廷魔導士が複数人集まってようやく放てる魔法を❬教皇❭はいとも容易く放った。
長年に渡る魔力量増幅の鍛練の賜物である。
あらゆる物を破壊し尽くす程の熱量を内包した大魔法を、❬大神父❭はただの突きでかき消した。
正確には❬大神父❭が放った強烈な突きが起こした業風が炎を消したのだが。ともかく、人間の所業ではない。
この世の『武』を極めた❬大神父❭。
それに対をなすように『魔法』を極めた❬教皇❭。
この世界においてトップクラスの実力者二人が、一対一で戦うなど種族同士の雌雄を決する、戦争であっても見られない。
「……秤彼方とは何者だ?」
二人の激しい攻防が止んだ時、ふと❬教皇❭が❬大神父❭に向かって問いかけた。
「あやつは、まるで世界を救う力など持っていない。神から渡されたのは真名を解放されていない神器もどき二つに、魔力効率の悪すぎる魔眼や加護、ヒトの身では展開できぬ❬固有世界❭。それに……中途半端な剣術の才。どうして我らが信じる神々はあやつを選んだのか、私には甚だ理解できん」
秤彼方という少年は……世界を救う器の持ち主ではないと、❬教皇❭は断言した。
そんな❬教皇❭の言葉を。
「は……ハハハハハハハッ!ついに、ついにそこまで老いたのか❬教皇❭!かつて❬賢王❭とまで呼ばれた王も、寄る年波には勝てなかったか!」
❬大神父❭は大声で嘲笑った。
「なんだと?」
「ああ、そうだ!彼は神々に騙されている!手のひらの上で踊らされているに過ぎない!なんともまあ、中途半端な力ばっかり渡されたのに、それをチートだと信じこんで疑わない!自分を強力な力を持った主人公だと思い込んでいるどうしようもない愚か者だよ!」
❬大神父❭は先程の言葉とは裏腹に、秤を嘲る。その様子は大変愉快そうであった。
「だが……この世界を救うのに値する英雄は!特異で無ければならない!神々から授かった力に頼りきり、自らの力で!自らの進む先を切り開けないような者に、この世界が救えるわけがない!」
❬大神父❭の主張は止まらない。
「彼はまだ英雄なんかじゃない愚者だ!しかし……世界を変えてきたのは何時だって愚者達だった!」
そして断言する。
「愚者は、英雄の器たる証拠だ!彼が私達や神々の予想を超えた時……もはや彼を止められる者など居るまい!」
そして最後に。
「それを一番良く知っていたのは……❬教皇❭。あなただったのに」
❬大神父❭は包帯で目を隠しているが……その時❬教皇❭に向けて失望の眼差しを向けていたであろうことは用意に分かった。
「あなたが神々のご意志を読み取れないほど落ちぶれていたなんて……」
❬大神父❭が目に右手を当て、天を仰いだ。
「……なるほど。お前はそれを分かって、秤彼方を鍛えたということか」
❬大神父❭の考えを看破しようとする❬教皇❭。
「いや?そんなことは全然ないけど?」
が、❬大神父❭の考えは遥か斜め先を行く。
「俺はただ、彼に強くなってもらいたいだけだ。俺と渡り合えるくらいに」
❬大神父❭の一人称が遥か昔の物に戻っている。それだけ興奮しているのか。
それを聞いて❬教皇❭は❬大神父❭を指差し、侮蔑するようにこう言った。
「やはり、お前は化け物だ❬大神父❭。神々を信仰し始めた理由といいな」
「化け物に化け物と言われるとは心外だな」
おどけてみせる❬大神父❭。
「いいや、お前の方がよほど化け物だ。不老不死、二種類の魔眼、戦闘における才、人の心を理解できない狂気……あげたらきりが無い。今だって、その目を覆っている包帯……いや《不死殺し》を解けばすぐさま全盛期の姿へと戻り、魔眼も使えるようになるのだろう?」
「いやぁ、そこまで誉めないでくれよ」
またもや、不敵な笑みを浮かべる❬大神父❭。
「神を殺し、同族を全て失い、仲間達からの呪いから逃げるためだけに入信したのがお前だ。王でありながら民の事など考えない自己中心的だったお前が皮肉なものだと思ったよ」
先程罵られたのを返すかのように❬教皇❭の言葉は続く。
「なぁ。自分こそが特異な存在であると分かっているのか、❬大神父❭。いや……あえてこう呼ぼう。
今は滅亡した聖魔族の唯一の生き残り❬混沌王❭ロンギヌスよ」
今では王という立場を降り、現在の❬法王❭の助言役、また各行政機関のトップを担っている。
❬法王❭の力は子供へと遺伝する。つまり、❬教皇❭は現在の❬法王❭の実の父親に当たる。
やはり元々は常人族の切り札であり、年老いた今でも一線を画す力を保有している。
その❬教皇❭に対して、軽口を叩く程の余裕を持つ男がいた。
その男とは……
「まだそんな聖職者ごっこをしているのか?❬大神父❭よ」
「おっと『ごっこ』とは酷い。こちらはいつも神に懺悔しているというのに」
そういうものの、❬大神父❭の口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「もういい。その口を閉じろ」
「分かったよ。ちなみに……要件に入ってもいい?」
「口を閉じろと言ったろうに……。それに、許可を取らなくても入るだろうよ、お前は」
呆れた顔で❬教皇❭が言う。
「ああ。それはそうだけど。で?これは許可が出たってことでいいんだよね?」
「……」
どこまでも呆れるような表情を作る❬教皇❭。
「じゃあ、それは無言の肯定ってことで!」
そう言った次の瞬間には❬大神父❭は得物の槍を魔法で取り出し、❬教皇❭の目の前に迫っていた。
❬教皇❭に向かって無慈悲な突きを繰り出す。彼方との訓練では出さなかった本気の攻撃。
「急に攻撃を仕掛けてくるのも変わらんな」
しかし、❬教皇❭はそれを顔色一つ変えずに防御魔法で受け止めていた。
❬教皇❭の『無詠唱』。かつて❬法王❭だった彼が接近戦でも戦えるように編み出した技術。
使える者はこの世界におけるトップクラスの魔法使いのみ。
「ハッ!この攻撃でくたばるような奴に私の相手が務まるか!?」
自らの本気の攻撃がいとも簡単に受け止められたというのに❬大神父❭は楽しそうにしている。
「貴様の初撃を防げる者など、もはやこの世界に数えるほどしかおらんだろう」
魔力により作られた障壁と、鋭い槍がぶつかり合い、細かい魔法の光を散らす。
「!」
そこで何かに勘づいた❬大神父❭が即座に後ろへ跳んだ。
その刹那、❬大神父❭がもと居た場所にとてつもない衝撃が生じた。
「ほんとにさ、それ反則だよね。あと一瞬反応が遅れてたら自分の攻撃の衝撃で死んでたじゃん」
「いとも容易く、それを回避したくせによく言う」
魔法《反転》。魔法の効果そのものは至ってシンプル。自分が受けた物理衝撃をそのまま方向を逆転させて返すというもの。
恐ろしいのはこの魔法ではない。真に恐ろしいのは、❬教皇❭は魔法そのものに魔法付与できるということ。
今の場合だと、防御魔法に《反転》を付与していた。
一つの魔法に付与できる魔法の数は最高で三つ。
❬教皇❭のみに許された、数々の敵を屠ってきた不可視の刃である。
「ははっ。いいねぇ、久しぶりに全力で戦えるよ!」
「この戦闘狂が!」
もはや、この二人の攻防は常人の目で捉えられるものではなかった。
幾重もの金属の光が刹那の内に閃く。
しかし、それと同時に❬教皇❭の前に魔法障壁が展開され、次の瞬間には❬大神父❭に衝撃が返る。
それを❬大神父❭は全て回避する。
……が。それを先読みしていた❬教皇❭がすかさず電雷を纏った紅蓮の焔を放つ。
宮廷魔導士が複数人集まってようやく放てる魔法を❬教皇❭はいとも容易く放った。
長年に渡る魔力量増幅の鍛練の賜物である。
あらゆる物を破壊し尽くす程の熱量を内包した大魔法を、❬大神父❭はただの突きでかき消した。
正確には❬大神父❭が放った強烈な突きが起こした業風が炎を消したのだが。ともかく、人間の所業ではない。
この世の『武』を極めた❬大神父❭。
それに対をなすように『魔法』を極めた❬教皇❭。
この世界においてトップクラスの実力者二人が、一対一で戦うなど種族同士の雌雄を決する、戦争であっても見られない。
「……秤彼方とは何者だ?」
二人の激しい攻防が止んだ時、ふと❬教皇❭が❬大神父❭に向かって問いかけた。
「あやつは、まるで世界を救う力など持っていない。神から渡されたのは真名を解放されていない神器もどき二つに、魔力効率の悪すぎる魔眼や加護、ヒトの身では展開できぬ❬固有世界❭。それに……中途半端な剣術の才。どうして我らが信じる神々はあやつを選んだのか、私には甚だ理解できん」
秤彼方という少年は……世界を救う器の持ち主ではないと、❬教皇❭は断言した。
そんな❬教皇❭の言葉を。
「は……ハハハハハハハッ!ついに、ついにそこまで老いたのか❬教皇❭!かつて❬賢王❭とまで呼ばれた王も、寄る年波には勝てなかったか!」
❬大神父❭は大声で嘲笑った。
「なんだと?」
「ああ、そうだ!彼は神々に騙されている!手のひらの上で踊らされているに過ぎない!なんともまあ、中途半端な力ばっかり渡されたのに、それをチートだと信じこんで疑わない!自分を強力な力を持った主人公だと思い込んでいるどうしようもない愚か者だよ!」
❬大神父❭は先程の言葉とは裏腹に、秤を嘲る。その様子は大変愉快そうであった。
「だが……この世界を救うのに値する英雄は!特異で無ければならない!神々から授かった力に頼りきり、自らの力で!自らの進む先を切り開けないような者に、この世界が救えるわけがない!」
❬大神父❭の主張は止まらない。
「彼はまだ英雄なんかじゃない愚者だ!しかし……世界を変えてきたのは何時だって愚者達だった!」
そして断言する。
「愚者は、英雄の器たる証拠だ!彼が私達や神々の予想を超えた時……もはや彼を止められる者など居るまい!」
そして最後に。
「それを一番良く知っていたのは……❬教皇❭。あなただったのに」
❬大神父❭は包帯で目を隠しているが……その時❬教皇❭に向けて失望の眼差しを向けていたであろうことは用意に分かった。
「あなたが神々のご意志を読み取れないほど落ちぶれていたなんて……」
❬大神父❭が目に右手を当て、天を仰いだ。
「……なるほど。お前はそれを分かって、秤彼方を鍛えたということか」
❬大神父❭の考えを看破しようとする❬教皇❭。
「いや?そんなことは全然ないけど?」
が、❬大神父❭の考えは遥か斜め先を行く。
「俺はただ、彼に強くなってもらいたいだけだ。俺と渡り合えるくらいに」
❬大神父❭の一人称が遥か昔の物に戻っている。それだけ興奮しているのか。
それを聞いて❬教皇❭は❬大神父❭を指差し、侮蔑するようにこう言った。
「やはり、お前は化け物だ❬大神父❭。神々を信仰し始めた理由といいな」
「化け物に化け物と言われるとは心外だな」
おどけてみせる❬大神父❭。
「いいや、お前の方がよほど化け物だ。不老不死、二種類の魔眼、戦闘における才、人の心を理解できない狂気……あげたらきりが無い。今だって、その目を覆っている包帯……いや《不死殺し》を解けばすぐさま全盛期の姿へと戻り、魔眼も使えるようになるのだろう?」
「いやぁ、そこまで誉めないでくれよ」
またもや、不敵な笑みを浮かべる❬大神父❭。
「神を殺し、同族を全て失い、仲間達からの呪いから逃げるためだけに入信したのがお前だ。王でありながら民の事など考えない自己中心的だったお前が皮肉なものだと思ったよ」
先程罵られたのを返すかのように❬教皇❭の言葉は続く。
「なぁ。自分こそが特異な存在であると分かっているのか、❬大神父❭。いや……あえてこう呼ぼう。
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