拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。
拝啓、魔女。お世話になりました!
「ふぁぁ……。よく寝たな……」
ふかふかのベッドから身を起こす。
「……というか、今何時だ?」
ふと思い、部屋に取り付けられている時計に視線を向ける。
「……もうすぐで10時か。本当によく寝たな……というかもうすぐでチェックアウトの時間じゃんか!早く身支度しないと!」
というか、昨日は部屋に入ってすぐに寝てしまったので風呂すら入っていない。
「……」
俺は無言で風呂へと向かった。
「ふう……」
しっかりと体を清め、魔法❬マジックボックス❭から着替えを取り出し着替える。
「って!ゆっくりしてる場合じゃない!」
俺は急いで部屋を飛び出した。
なんとか10時前にチェックアウトを済ませられた俺は早速ラグリス村への行き方を探していた。
「あの、すいません。ラグリス村へはどうやって行けますか?」
歩いていた町人に尋ねる。
「ラグリス村?あんな所に何の用だい、少年。あそこは危険で君みたいな少年が行ける場所じゃないぞ?」
「ラグリス村にどうしても会いたい人がいるんです。……それに、俺一応それなりには戦えるんでご心配無く」
「そうなのか?……にしても、ラグリス村か……。あまり、大きい声じゃあ言えないんだが、この道をまっすぐ進んだ所に噴水広場がある。その近くの路地裏に転移屋っていう店があるんだが、まあ、国に営業の許可を貰ってないのに営業してる店なんだ。金さえ払えば異人族の主人が転移魔法で行きたい場所に飛ばしてくれる。……ここからラグリス村に行きたいならその店を利用するしかねぇな」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「……なあ、少年。今言ったように転移屋は違法な店だ。だが、その転移魔法の腕はかなりのもんだ。だからこの町の住人の多くも使用してる店なんだ。死にかけの奴を王都の病院に転移させて命を救ってくれた事もある……まさにあそこの主人は命の恩人なんだ。だから頼む。国に伝えたりはしないでくれないか?」
「伝えませんよ。……だって俺も今からその店を利用させてもらうんですから」
そう言って俺は噴水広場に足を向けた。
さっきの場所から歩くこと数分。噴水広場に到着した俺は明るく遊ぶ子供達を見かけた。
(……こんな平和に見えるのにこの種族の長は世界を戦乱の世に陥れている本人に操られているなんてな。……いつこの世界が滅びてもおかしくない)
この『平和に見える世界』を少しでも早く『平和な世界』に戻して見せる、と俺はもう一度強く心に誓った。
(……それに、グラハムさんや神様にも頼まれたしな。もう、後には引けない……)
そして、自分の背中に乗っかった身の丈に合わないとてつもなく重い使命を再確認する。
遊ぶ子供達を尻目に、俺は転移屋があるという路地裏に入っていく。
日が明るく照らす広場と、薄暗い路地裏。
明るい世界から暗い世界へ足を踏み入れる。
明るい世界で遊ぶ子供達と暗い世界へ進む俺。それはまるで、俺の未来を暗示しているかのようだった。
「ここが転移屋か……?」
路地裏を進むとオカルトグッズが置いてある怪しげな雑貨屋を見つけた。
「……いや、こんだけ怪しい雰囲気出しといてここ以外な訳ないよな」
俺は恐る恐る、店の扉を開ける。
「お、おじゃましまーす……」
「あら、見ない顔ね、坊や。お望みの物は何かしら?」
店内に居たのはいかにも魔女といった雰囲気の女性。正直、店の外観も古かったからこう……老婆みたいな風貌の魔女が出てくるのかと思っていたのだが、実際は妙齢の妖艶な雰囲気の美女だった。黒ずくめのローブに、鍔の広いとんがり帽子。パイプまで持っている。俺の想像していた異世界の魔法使いのイメージそのもの。
(おお……!まさか鉄道で異世界のイメージを破壊された次の日にこんなザ・異世界みたいな人と会えるなんて……!)
「坊や?大丈夫?私を見た途端に固まって……魔女特製のお薬いる?」
魔女が俺の目の前で手のひらを左右に振っている。
「い、いえ!なんでもありません!」
あまりの喜びと衝撃に挙動不審になる。
これでも元々いた世界ではオタクだったので異世界転移とか異世界転生には憧れを少なからず抱いていたのだ。だから、つい、こう異世界感がある物を目にすると素直に喜んでしまうのだ。
……まあ、まさか転移先の異世界を救うなんて重い使命を背負うなんて思ってもなかったが。
「……?そう?あ!もしかして私の色香に惑わされちゃったとか?」
薄い笑みを浮かばせながら聞いて来る。
「あ、いえ。そういう訳ではないので」
なぜかここだけは自分でも驚くくらい冷静に答えられた。
「あ、そう……。少し期待したのだけれど……」
魔女が少しムッとした表情を浮かばせる。
「そうだ!俺、ここでラグリス村まで行けるって聞いて来たんですけど……」
「あら。坊やは転移目当てのお客様だったのね。分かったわ。ついてらっしゃいな?」
魔女が歩き出したので大人しくついていく。
魔女についていき、いくつかの部屋を通った後……俺は長い直線の通路を通っていた。
「あの……すいません。どこまでついていけばいいんですか?」
と、俺は尋ねた。さっきから割と長い距離を移動しているのに、一向に転移魔法を使ってくれる気配がない。
「そうね……あともう少しよ」
俺の問いに対して魔女はそう、答えた。静かに、とても冷たく、落ち着いた声音で。先ほどの態度からは考えられない声だった……俺には、その言葉の裏にある物が何なのか察する事ができなかった。
その魔女の言葉はやけに不自然に通路で響いていた。
その数分後。俺は長い通路の果てにあった扉の前に立たされていた。
「……この奥で転移魔法を使うんですか?」
俺が尋ねると、
「転移魔法?ああ、気付いていないのね。貴方、もう転移してるわよ?」
魔女は俺をからかうような表情でそう言った。
「え?」
予想外の答えに唖然とする。
「ほら、今通って来た一本道あるでしょう?この道は私の魔法……❬魔女の秘密❭によって作られた、言わば空間の抜け道。もしかして坊や一瞬で移動する魔法をイメージしてた?残念、そっち使っちゃうと王国の宮廷魔導師達に見つかっちゃうのよねぇ。ごめんなさいね、地味で……」
申し訳無さそうに魔女が言う。
……正直、瞬間移動みたいなのをイメージしてたのは確かだ。実際、❬魔君主❭と戦った時に使われていたのはそんな感じの魔法だったし……。
「い、いや、別に大丈夫ですよ!それよりも……途中、機嫌悪かったですよね?俺、何か失礼な事しましたか?」
申し訳無さそうにしている魔女に対してフォローをしておく。ついでに、さっきの冷たい声音についても聞いておく。
「そう?なら良かったのだけれど……。ところで坊や?別に私、機嫌なんて悪くしてないわよ?」
「え?でもさっき、すごい冷たく質問の返答をされたような……?」
「ああ……それはね?ただ魔法を使うのに集中していただけなのよ。空間の抜け道を維持するのってものすごく集中しなきゃならないの」
……そういう事だったのか。心の中で安堵する。
「じゃあ、この扉の先は……」
「貴方の目的地、ラグリス村よ。ところで、なんでこんな辺境の村に来たいと思ったの?」
「……ここに、どうしても会わなくちゃいけない人がいるんです。俺が背負った使命を達成するための鍵を握っている人が……」
俺の言葉には意識しないうちに熱と強い意志が宿っていた。
「ふーん。坊やが身の丈に合わない責任を背負っているのは分かったわ。でもね……自分の存在意義と背負った使命を一緒にする事はよしなさい、坊や。……これは年長者からのありがたい言葉よ。ゆめゆめ忘れないようにしなさいね?」
「……はい」
魔女が言ってくれた言葉は、俺の張りつめていた心をほぐしてくれた。肩の荷が多少無くなった気分。確かにありがたく……そして何より優しさがこもっていた。
「というか、年長者って。俺達そんな年変わりませんよね?」
魔女はまだ、二十代前半に見える容姿をしているが……。
「あら、そう見える?ふふっ。坊やも上手ねぇ」
魔女がニマニマと怪しい笑みを浮かべている。
「え?違うんですか?」
俺は軽く困惑する。
「坊や、レディに年を聞くのはマナー違反よ?」
「す、すいません……」
魔女が出した威圧感に負け、謝ってしまう。……グラハムさんの戦闘時の威圧よりも怖かったかもしれない。
「まあ、いいわ。じゃあ、いってらっしゃい坊や!」
「あ、はい!行ってきます!」
魔女に別れを告げ、心が軽くなった俺は❬大神父❭の待つ村に繋がる扉を思いっきり開けた……!
ふかふかのベッドから身を起こす。
「……というか、今何時だ?」
ふと思い、部屋に取り付けられている時計に視線を向ける。
「……もうすぐで10時か。本当によく寝たな……というかもうすぐでチェックアウトの時間じゃんか!早く身支度しないと!」
というか、昨日は部屋に入ってすぐに寝てしまったので風呂すら入っていない。
「……」
俺は無言で風呂へと向かった。
「ふう……」
しっかりと体を清め、魔法❬マジックボックス❭から着替えを取り出し着替える。
「って!ゆっくりしてる場合じゃない!」
俺は急いで部屋を飛び出した。
なんとか10時前にチェックアウトを済ませられた俺は早速ラグリス村への行き方を探していた。
「あの、すいません。ラグリス村へはどうやって行けますか?」
歩いていた町人に尋ねる。
「ラグリス村?あんな所に何の用だい、少年。あそこは危険で君みたいな少年が行ける場所じゃないぞ?」
「ラグリス村にどうしても会いたい人がいるんです。……それに、俺一応それなりには戦えるんでご心配無く」
「そうなのか?……にしても、ラグリス村か……。あまり、大きい声じゃあ言えないんだが、この道をまっすぐ進んだ所に噴水広場がある。その近くの路地裏に転移屋っていう店があるんだが、まあ、国に営業の許可を貰ってないのに営業してる店なんだ。金さえ払えば異人族の主人が転移魔法で行きたい場所に飛ばしてくれる。……ここからラグリス村に行きたいならその店を利用するしかねぇな」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「……なあ、少年。今言ったように転移屋は違法な店だ。だが、その転移魔法の腕はかなりのもんだ。だからこの町の住人の多くも使用してる店なんだ。死にかけの奴を王都の病院に転移させて命を救ってくれた事もある……まさにあそこの主人は命の恩人なんだ。だから頼む。国に伝えたりはしないでくれないか?」
「伝えませんよ。……だって俺も今からその店を利用させてもらうんですから」
そう言って俺は噴水広場に足を向けた。
さっきの場所から歩くこと数分。噴水広場に到着した俺は明るく遊ぶ子供達を見かけた。
(……こんな平和に見えるのにこの種族の長は世界を戦乱の世に陥れている本人に操られているなんてな。……いつこの世界が滅びてもおかしくない)
この『平和に見える世界』を少しでも早く『平和な世界』に戻して見せる、と俺はもう一度強く心に誓った。
(……それに、グラハムさんや神様にも頼まれたしな。もう、後には引けない……)
そして、自分の背中に乗っかった身の丈に合わないとてつもなく重い使命を再確認する。
遊ぶ子供達を尻目に、俺は転移屋があるという路地裏に入っていく。
日が明るく照らす広場と、薄暗い路地裏。
明るい世界から暗い世界へ足を踏み入れる。
明るい世界で遊ぶ子供達と暗い世界へ進む俺。それはまるで、俺の未来を暗示しているかのようだった。
「ここが転移屋か……?」
路地裏を進むとオカルトグッズが置いてある怪しげな雑貨屋を見つけた。
「……いや、こんだけ怪しい雰囲気出しといてここ以外な訳ないよな」
俺は恐る恐る、店の扉を開ける。
「お、おじゃましまーす……」
「あら、見ない顔ね、坊や。お望みの物は何かしら?」
店内に居たのはいかにも魔女といった雰囲気の女性。正直、店の外観も古かったからこう……老婆みたいな風貌の魔女が出てくるのかと思っていたのだが、実際は妙齢の妖艶な雰囲気の美女だった。黒ずくめのローブに、鍔の広いとんがり帽子。パイプまで持っている。俺の想像していた異世界の魔法使いのイメージそのもの。
(おお……!まさか鉄道で異世界のイメージを破壊された次の日にこんなザ・異世界みたいな人と会えるなんて……!)
「坊や?大丈夫?私を見た途端に固まって……魔女特製のお薬いる?」
魔女が俺の目の前で手のひらを左右に振っている。
「い、いえ!なんでもありません!」
あまりの喜びと衝撃に挙動不審になる。
これでも元々いた世界ではオタクだったので異世界転移とか異世界転生には憧れを少なからず抱いていたのだ。だから、つい、こう異世界感がある物を目にすると素直に喜んでしまうのだ。
……まあ、まさか転移先の異世界を救うなんて重い使命を背負うなんて思ってもなかったが。
「……?そう?あ!もしかして私の色香に惑わされちゃったとか?」
薄い笑みを浮かばせながら聞いて来る。
「あ、いえ。そういう訳ではないので」
なぜかここだけは自分でも驚くくらい冷静に答えられた。
「あ、そう……。少し期待したのだけれど……」
魔女が少しムッとした表情を浮かばせる。
「そうだ!俺、ここでラグリス村まで行けるって聞いて来たんですけど……」
「あら。坊やは転移目当てのお客様だったのね。分かったわ。ついてらっしゃいな?」
魔女が歩き出したので大人しくついていく。
魔女についていき、いくつかの部屋を通った後……俺は長い直線の通路を通っていた。
「あの……すいません。どこまでついていけばいいんですか?」
と、俺は尋ねた。さっきから割と長い距離を移動しているのに、一向に転移魔法を使ってくれる気配がない。
「そうね……あともう少しよ」
俺の問いに対して魔女はそう、答えた。静かに、とても冷たく、落ち着いた声音で。先ほどの態度からは考えられない声だった……俺には、その言葉の裏にある物が何なのか察する事ができなかった。
その魔女の言葉はやけに不自然に通路で響いていた。
その数分後。俺は長い通路の果てにあった扉の前に立たされていた。
「……この奥で転移魔法を使うんですか?」
俺が尋ねると、
「転移魔法?ああ、気付いていないのね。貴方、もう転移してるわよ?」
魔女は俺をからかうような表情でそう言った。
「え?」
予想外の答えに唖然とする。
「ほら、今通って来た一本道あるでしょう?この道は私の魔法……❬魔女の秘密❭によって作られた、言わば空間の抜け道。もしかして坊や一瞬で移動する魔法をイメージしてた?残念、そっち使っちゃうと王国の宮廷魔導師達に見つかっちゃうのよねぇ。ごめんなさいね、地味で……」
申し訳無さそうに魔女が言う。
……正直、瞬間移動みたいなのをイメージしてたのは確かだ。実際、❬魔君主❭と戦った時に使われていたのはそんな感じの魔法だったし……。
「い、いや、別に大丈夫ですよ!それよりも……途中、機嫌悪かったですよね?俺、何か失礼な事しましたか?」
申し訳無さそうにしている魔女に対してフォローをしておく。ついでに、さっきの冷たい声音についても聞いておく。
「そう?なら良かったのだけれど……。ところで坊や?別に私、機嫌なんて悪くしてないわよ?」
「え?でもさっき、すごい冷たく質問の返答をされたような……?」
「ああ……それはね?ただ魔法を使うのに集中していただけなのよ。空間の抜け道を維持するのってものすごく集中しなきゃならないの」
……そういう事だったのか。心の中で安堵する。
「じゃあ、この扉の先は……」
「貴方の目的地、ラグリス村よ。ところで、なんでこんな辺境の村に来たいと思ったの?」
「……ここに、どうしても会わなくちゃいけない人がいるんです。俺が背負った使命を達成するための鍵を握っている人が……」
俺の言葉には意識しないうちに熱と強い意志が宿っていた。
「ふーん。坊やが身の丈に合わない責任を背負っているのは分かったわ。でもね……自分の存在意義と背負った使命を一緒にする事はよしなさい、坊や。……これは年長者からのありがたい言葉よ。ゆめゆめ忘れないようにしなさいね?」
「……はい」
魔女が言ってくれた言葉は、俺の張りつめていた心をほぐしてくれた。肩の荷が多少無くなった気分。確かにありがたく……そして何より優しさがこもっていた。
「というか、年長者って。俺達そんな年変わりませんよね?」
魔女はまだ、二十代前半に見える容姿をしているが……。
「あら、そう見える?ふふっ。坊やも上手ねぇ」
魔女がニマニマと怪しい笑みを浮かべている。
「え?違うんですか?」
俺は軽く困惑する。
「坊や、レディに年を聞くのはマナー違反よ?」
「す、すいません……」
魔女が出した威圧感に負け、謝ってしまう。……グラハムさんの戦闘時の威圧よりも怖かったかもしれない。
「まあ、いいわ。じゃあ、いってらっしゃい坊や!」
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