拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。

POSTMAN

拝啓、神器使いさん。今度こそ、勝利を。

「グラハムさん……」
 牢獄から脱出し、とうとう明るい場所に出た俺達はグラハムさんと対峙していた。
「やっぱりか。君たちならあの牢獄からも出て……また、こうして再戦するとそう思っていたよ」
「こっちはもう戦いたくないですけどね」
「ハハ!そりゃそうか、君たちは呆気なく俺に負かされたんだっけ?」
 挑発を交えてグラハムさんが答える。その挑発を返そうと、口を開こうとしたその時。
俺より早く反論したのは神崎だった。先ほど見た不敵な笑みを浮かべて。
「グラハムさん。何か誤解してません?確かに俺達はあなたと戦いたくないけど……それは俺達があなたに簡単に勝って、あなたの面子を潰したくないっていう気遣いですよ?」
 おおう……挑発を返しやがった。しかも、かなり辛辣だなぁ。
 さすがにグラハムさんもカチンと来たようでさっき俺達を挑発した時に浮かべていた笑みがひきつっている。
「言うようになったじゃないか?カンザキ。しかし、なぁ?あれから訓練する時間なんて無かったんじゃないのか?」
 これは俺が反論する。
「大丈夫ですよ。グラハムさん。あなたに勝つのに訓練なんていらない。ここ・・を少し働かせるだけで十分だ!それに……あなたの仕えている『自らを破滅へ導いている』愚かな王に罰を与えないといけないからな」
 人差し指で自分のこめかみを軽くつつきながら挑発する。
 グラハムさんの顔から完全に表情が消え失せる。
「……ハカリ。貴様は今、我が王を侮辱した。それは……俺の逆鱗に触れる行為だ!」
 グラハムさんがとてつもない殺気と怒りを放ち、共にその憤怒を象徴するかのような紅の神器を出現させる。
 こちらも神器を出現させ、戦闘準備を整える。
「神崎!構えろ!……もう、初見で吹き飛ばされるなよ?」
「ああ!もちろんだ!」
 神崎が返した言葉にはもう、前回グラハムさんと戦った時のような暗さは無かった。
「うおぉぉ!」
 グラハムさんが巨大化した神器を横凪ぎに振るう。しかし、それは既に食らった攻撃だ。簡単に見切り受け流す。
「さすがにもう効かないか。じゃあ、これはどうだ!」
 横凪ぎに振った神器を元の大きさに戻し、思いっきり縦に振り下ろす。
「喰らいな!《死を告げる鮮血デッド・ヴァーミリオン》!!」
(また、剣が巨大化するのか?)
「神崎!これは受け流すより避けた方が良い!」
「ああ!」
それぞれ避けようとしたが……

 真っ直ぐに振り下ろされた紅の剣は巨大化するどころか、その原型を歪ませ留めなくなり、分散した。

 そして分散した剣は一つ一つが液体のように変化し、こちらに飛翔する。
「「なぁっ……!?」」
神器を巨大化させて攻撃してくるのだと思い込んでいた俺達は呆気に取られる。
 ゆっくりとこちらに降り注いでくる神器はまるで紅の雨のようだった。
「まずい!神崎、避けろ!」
「いや、避けるっていっても……無理じゃねえ!?」
 そして、紅の雨は一つ一つが液体から個体へと姿を変え、恐ろしく鋭い俺達の体なんて容易に貫けるであろう矢の、狂気の雨へと変貌した。
「仕方ない……!秤!だいぶ早くなるが、あれ・・使うぞ!」
「ああ!頼む!」
 神崎が詠唱を始める。

「『星の帝よ。星を統べる者よ。

 汝の治める領域を、絶対不可侵の聖域を

 今、我の下に、この現世うつしよに展開せよ!

 星帝の聖域を侵略せんとする愚者どもを打ち払え!《星帝聖域エクスフィールド》!!!』」

 そして詠唱を終えた神崎の周囲に結界……と言っても、❬魔君主❭が使ったような巨大な物ではないが……展開される。
 星を模した光の球がいくつも宙に浮かび、光球と光球の間を細い光線が結ぶ。それが神崎を中心にドーム状に広がり、神崎の❬星帝剣エクスブレイク❭の能力の一つ、《星帝聖域エクスフィールド》が完成する。
 その直後、紅の雨が殺到する。本来なら俺達の身体……魂すらも貫き、穿つであろう紅の凶器の雨は神崎の結界に触れた瞬間に

結界そのものに吸収され、姿を消していった。

「なんだと!?俺の《死を告げる鮮血デッド・ヴァーミリオン》が敗れ、その上俺の神器が消滅しただと!?」
 勝利を確信していたのだろう。グラハムさんが狼狽える。
「さあ、グラハムさん!狼狽えてる暇は無いぜ!反撃だ!『星帝よ。愚者どもの聖域侵略に反旗を翻せ』!!!」
 神崎が《星帝聖域エクスフィールド》のもう一つの能力を解放させる。
 神崎の結界を作りあげている無数の光球から全方向に先ほど姿を消した紅の雨……グラハムさんの神器が飛び出してゆく。

……神崎の神器❬星帝剣エクスブレイク❭の能力の一つ。《星帝聖域エクスフィールド》。それは、“聖域内の仲間の身体能力、魔力上昇„、“聖域内の仲間の魔力、または負傷を回復„、“❬星帝剣エクスブレイク❭の他の能力強化„、“相手の物理、もしくは魔法攻撃を完全吸収„、そして“相手の攻撃を完全反射„というものだ。今回の殲滅攻撃のような威力が高い攻撃であればあるほどその能力は輝く。しかし、吸収する攻撃の威力が高いほど消費する魔力も多くなるらしく、現時点では強敵相手に連続して使用はできないらしい。

 紅の弾幕は、もちろんグラハムさんの元へも飛翔していく。
「ぐあぁ!」
グラハムさんも被弾したらしく声を上げた。
 もし仮にあの威力の攻撃をまともに受けたのなら流石にグラハムさんでも立てないだろう。
 しかし、俺達は知っている。神器使いが神々に選ばれた者なのだと。神器を振るうに値する者なのだと。
 つまり……グラハムさんがこれで倒せるはずがない。
 紅蓮の弾幕が全て消えた後。もちろんグラハムさんはそこに立っていた。グラハムさんは所々を負傷していて出血もしていた。やはり先ほどの神崎の反射攻撃を完全には見切られなかったようだ。
「……危なかった……。あと一瞬、《死を告げる鮮血デッド・ヴァーミリオン》を元の形に戻すのが遅れてたら死んでただろうな」
「やっぱり……倒れねえのかよ。結構会心の一撃だと思ったんだがなぁ」
「……あまり、舐めるなよカンザキ?これでもいくつも死線をくぐりぬけてきたんだ。これぐらいで倒れるはずないだろう?」
「ハッ!マジかよ!……すまん。秤。魔力を使いすぎた。もう神器を顕現させてるだけで精一杯だ。戦力になれそうにない……ッ!」
「分かった。でも、お前はよくやってくれた。グラハムさんに少しとはいえ傷を負わせたんだ。……後は任せろ。俺が決着をつけてくる」 
 俺はグラハムさんの方へゆっくりと歩みだした。神崎の消えかかっている結界から出てゆっくりと一歩ずつ。
「なんだ。カンザキはリタイアか。全く誰が鍛えてやったと思ってるんだ?まあいい。それよりもハカリ?随分と進んでくるのが遅いじゃあないか?どうした?怖じ気づいたか?」
 負傷を負ったとはいえほんの少しだ。グラハムさんはまだ俺を挑発する気力があるらしい。
「いいえ。怖じ気づく訳がないでしょう?……あなたなんか・・・に。ただビジョンを描いているだけですよ。俺があなたに圧勝するまでをね」
「ほう?言ってくれるじゃないか。でもなハカリ?理想だけじゃなくて現実にも目を向けた方が良い。今、君の立たされている状況が分かるか?仲間はリタイアし、戦力にならない、戦えるのは自分だけ。これは、前に君が俺に負けた時の状況と同じなんだぞ?それでどうやって勝つって?」
……完全に舐められている。恐らく俺は神崎より弱いと思われているんだろう。だけど、それは大きな間違いだと今から証明してやる。
「ええ。確かにそうかもしれない。……だからこそ最初に言ったんですよ。あなたは『ここ・・』を使えば簡単に勝てる相手、だってね」
 人差し指で自分のこめかみを軽くつつく。
「舐めるなよ。俺はいくつも死線をくぐりぬけてきた精鋭だ。お前と俺との実力差が戦術だけで埋まると思うか?」
 俺はその発言につい笑ってしまう。
「おい。何が可笑しい?」
俺は神崎に向けたような不敵な笑みを浮かべた。
「いや、単純な実力なら……」
 ゆっくりと踏み出した足に力を込め、思いっきり床を蹴る。その瞬間、俺の体は霞み、相手の魂もろとも刈り取り断つであろう死神の鎌と化した。もちろん油断している上に俺の実力を見誤っているグラハムさんは反応できない。
「もうすでに同じレベルですよッ!!」
 そう叫び、近づいた時に発生したスピードと力を双剣に乗せ、自分の体ごと回転させながら相手に斬撃を喰らわせる。
 高威力の斬撃をまともに受けたグラハムさんは体から血を溢れさせ後ずさる。
「ほら。言ったでしょう?あなたに圧勝するまでビジョンを描いているって」
「な、なんだと……!?そんな、前戦った時とスピードが全く違う……だと……!」
「そりゃ、そうでしょう。だって俺。神崎の能力の影響でかなり強化されてますもん」
「そんなハズがない!お前はカンザキの結界から出ているじゃないか!?」
「いえいえ。神崎の《星帝聖域エクスフィールド》の能力じゃなくて。神崎本人が持っている能力……❬星帝の号令❭ですよ」
 そう、神崎に牢獄から脱出する際持っている能力を聞いた時だ。神崎は確かに

“『能力』?えっと……確か❬星帝剣エクスブレイク❭の効果付与と、仲間に色んな効果を常時付与するやつと……斬撃の威力と鋭さを大幅に向上するやつかな„

と、言っていた。この中の『仲間に色んな効果を常時付与するやつ』こそが❬星帝の号令❭だったのだ。
 俺がゆっくりグラハムさんにゆっくりと近づいていったのはビジョンを描くのもそうだが、俺の奇襲を成功しやすくするためなのと、俺の挙動一つ一つに集中してもらうためだった。神崎の結界から俺が出た瞬間、グラハムさんは思っただろう。

『これで相手と自分は公平フェアな条件下で戦える』

……と。
 今回はそのいくつも死線をくぐりぬけてきた精鋭の洞察力の良さが返って仇となったのだ。
「なるほどな。この勝負は最初からお前たちが有利だったのか……」
「ええ。そうです。さあ、グラハムさん。もうあなたに勝ち目はない。どうします?」
 この時、俺は勝利を確信していた。
「勝ち目がない?ハハハ!笑わせるなハカリ。相手の奥の手も見極められずに何を言う?」
「なっ……!?さっきの赤い雨が切り札じゃないのか!?」
 そして気付く。グラハムさんの出血が収まっていることに。なんと、グラハムさんは自分の神器の形状を変え、自分の傷口ぴったりの形にし止血をしていた。
 俺がまずいと思い、後退した時には遅かった。
「さあ……我が神器❬将皇アロンダイト❭の最奥の技!とくと見よ!!!」
 グラハムさんが神器を床に突き刺す。

……その瞬間俺は背後からの鋭い痛みに襲われたのであった。




 









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