拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。
拝啓、神様。かなりまずい状況です。
「で、王様?なんで俺達は呼ばれたんでしょう?」
王様の待つ王の間に到着した俺は神崎と合流し、王様にこう尋ねた。
「ん?橘君から聞かなかったかい?話がしたいと伝えたのだけどね」
「いえ、そう俺も聞きました。でも貴方が俺達を呼んだのはそれが理由ではないでしょう?」
すると、王様は少し間を開けて
「……鋭いね。そうさ、僕はただ話がしたかったのではない。今回君達を呼んだのは君達だけに依頼したい事があったからだ。魔族の中でも強力な魔族を倒してしまった君達にね」
「「依頼?」」
俺と神崎の声が重なる。
「ああ、そうだ。内容は……君達に各種族の長達を倒して回ってほしい」
……やっぱりか。クラスの中でも群を抜いた力を持った俺達を戦争で有効活用させてもらいたい……要するに王様はこう言っているのだ。
神崎が口を開く。
「そんなの、断る理由が無いじゃないですか!もちろん……」
「まて、神崎。その依頼は俺は受けない事にする」
「なんでだ?秤。この世界の人類は他の種族からの攻撃で滅びそうなんじゃないのか?」
この世界について間違った情報を吹き込まれている神崎はもちろん疑問を抱く。
「まあ、今から説明する。……王様。俺はこの世界の情勢について疑問を持っています。本当に人類……いや、常人族が一方的に滅ぼされようといているのか、ね」
「へぇ……。なぜ、そう思うんだい?」
王様の眼光が鋭く光る。
「まず異人族との協力関係、この国の精鋭隊……それに❬法王❭などの存在についてです。」
そこから俺は語った。この国、いやこの種族についての疑問点と、❬全智の魔導書❭から判明したその答え。そこから導かれたある一つの推測を建前として。
「異人族や❬法王❭は魔法を使用可能なはずです。しかも❬法王❭は他種族よりも魔法適正が高いと聞いています。それに、精鋭隊の隊長であるグラハムさん。あの人は普通じゃない。おそらく……神器保有者でしょう?これだけの切り札が手札にあるのに一方的に攻撃を受けているという説明は無理があると思ったんですよ」
王様がため息をつく。
「はぁ……大人しく依頼を受けていれば良かったものを……そうか君は推測だけでその事実にたどり着いてしまったのか。……少し事情が変わった。君達は僕の中で頼りになる味方から恐れるべき外敵となってしまった。もう、この部屋から出す訳にはいかない」
「……神器保有者でもない貴方がどうやって?」
「もちろん僕じゃない。……グラハム!この国を滅ぼさんとする反逆者達を捕らえよ!」
とっさに逃げようとしたが、俺達が入ってきたこの部屋に一つしかない……俺達の背後の扉が勢いよく開く。
「仰せの通りに。王よ」
「……グラハムさん!」
神崎が叫ぶ。神崎は剣術をグラハムから教わったと聞いた。恩があるのだろう。
「すまないな。カンザキ。王の命令だ」
グラハムの手元に血のように赤い剣が出現する。グラハムさんの神器だ。
「こうなったら神崎。グラハムさんを倒すしかない」
「……ああ」
そう返してきた神崎の声は❬魔君主❭と戦う時に返してきた声よりも暗く感じた。
「うおぉぉ!」
(今回は能力制限ナシだ。遠慮なく能力を使わせてもらう!)
メガネを外し因果逆転の魔眼を発動。その後に12枚のカードの中から1枚を選択。神々の加護を使うため詠唱を始める。
「『世界を管理する天の12柱の神々よ。
今、我が声に応えこの現世に
汝らの血と因子が流れる天の使いたる我が身に、
矮小なるこの魂に、
その偉大なる力の断片よ、顕現せよ。
此度、顕現するは戦の神、ソラ・ベルム。
聖戦と武を司る1柱なり』!」
詠唱が終わると俺の身体は神様の力を宿していた。双剣を取り出し、戦闘準備を終わらせる。
(よし、全力の俺に加えて神崎だ。相手が神器保有者とはいえ負ける筈がない)
と、思っていた矢先だった。
因果逆転の魔眼で“俺達がグラハムさんに倒される„結果が見えたのは。
「ハァッ!」
グラハムが剣を横凪ぎに振るう。相手の剣のリーチでは絶対に届きようのない俺達との距離は、相手の剣が巨大化することによって埋められた。
とっさの出来事に神崎は反応できず、防御はできたものの、吹き飛ばされ部屋の壁に背中を叩きつけた。そして、動かなくなる。しかし肩が動いているところを見るとまだ死んではいないのだろう。
結果を前もって知っていた俺はなんとか耐えれたが正直、神器保有者、しかも歴戦の戦士に勝てるかは分からなかった。
「……カンザキもまだまだだな。さて、残ったのは君だけだ、ハカリ。降参する気は……あるはずないか」
「当たり前だッ!」
神々の加護によって強化された身体で相手との間合いを詰める。ここからは因果逆転の魔眼は使えない。色々とデメリットが多い能力なのだ。
グラハムと俺とで激しい剣戟が繰り広げられる。何度も、二つの銀の閃光と紅の鋭い一閃が交錯する。しかし、その鮮やかな紅の閃光はこの度に形状が変化する。
閃光だけじゃなく、実際にグラハムの剣の姿形が変化しているのだ。
(ダメだ!剣のリーチも攻撃の感覚も全てが瞬時に切り替わる!まるで読めない!反撃するどころか攻撃すらできない!)
さっきから俺は防戦一方だった。早く反撃しなければと焦った瞬間に隙ができる。もちろん多くの死線、戦場を生き抜いてきた歴戦の戦士がその隙を見逃す筈がなく。隙ができた瞬間に俺の体にとてつもない衝撃が加わる。体が浮く。体が壁に叩きつけられ肺の空気が全て吐き出される感覚。その後、意識が薄れていく。それはまるで、さっきの神崎の動きのリプレイのようだった。
そして気付く。さっき因果逆転の魔眼で脳裏に浮かんだ結果は
今、この瞬間を映していたことに。
だんだん意識が薄れていく。
(クソ……。ここで負ける、訳には……)
そこで俺は意識を手放した。
王様の待つ王の間に到着した俺は神崎と合流し、王様にこう尋ねた。
「ん?橘君から聞かなかったかい?話がしたいと伝えたのだけどね」
「いえ、そう俺も聞きました。でも貴方が俺達を呼んだのはそれが理由ではないでしょう?」
すると、王様は少し間を開けて
「……鋭いね。そうさ、僕はただ話がしたかったのではない。今回君達を呼んだのは君達だけに依頼したい事があったからだ。魔族の中でも強力な魔族を倒してしまった君達にね」
「「依頼?」」
俺と神崎の声が重なる。
「ああ、そうだ。内容は……君達に各種族の長達を倒して回ってほしい」
……やっぱりか。クラスの中でも群を抜いた力を持った俺達を戦争で有効活用させてもらいたい……要するに王様はこう言っているのだ。
神崎が口を開く。
「そんなの、断る理由が無いじゃないですか!もちろん……」
「まて、神崎。その依頼は俺は受けない事にする」
「なんでだ?秤。この世界の人類は他の種族からの攻撃で滅びそうなんじゃないのか?」
この世界について間違った情報を吹き込まれている神崎はもちろん疑問を抱く。
「まあ、今から説明する。……王様。俺はこの世界の情勢について疑問を持っています。本当に人類……いや、常人族が一方的に滅ぼされようといているのか、ね」
「へぇ……。なぜ、そう思うんだい?」
王様の眼光が鋭く光る。
「まず異人族との協力関係、この国の精鋭隊……それに❬法王❭などの存在についてです。」
そこから俺は語った。この国、いやこの種族についての疑問点と、❬全智の魔導書❭から判明したその答え。そこから導かれたある一つの推測を建前として。
「異人族や❬法王❭は魔法を使用可能なはずです。しかも❬法王❭は他種族よりも魔法適正が高いと聞いています。それに、精鋭隊の隊長であるグラハムさん。あの人は普通じゃない。おそらく……神器保有者でしょう?これだけの切り札が手札にあるのに一方的に攻撃を受けているという説明は無理があると思ったんですよ」
王様がため息をつく。
「はぁ……大人しく依頼を受けていれば良かったものを……そうか君は推測だけでその事実にたどり着いてしまったのか。……少し事情が変わった。君達は僕の中で頼りになる味方から恐れるべき外敵となってしまった。もう、この部屋から出す訳にはいかない」
「……神器保有者でもない貴方がどうやって?」
「もちろん僕じゃない。……グラハム!この国を滅ぼさんとする反逆者達を捕らえよ!」
とっさに逃げようとしたが、俺達が入ってきたこの部屋に一つしかない……俺達の背後の扉が勢いよく開く。
「仰せの通りに。王よ」
「……グラハムさん!」
神崎が叫ぶ。神崎は剣術をグラハムから教わったと聞いた。恩があるのだろう。
「すまないな。カンザキ。王の命令だ」
グラハムの手元に血のように赤い剣が出現する。グラハムさんの神器だ。
「こうなったら神崎。グラハムさんを倒すしかない」
「……ああ」
そう返してきた神崎の声は❬魔君主❭と戦う時に返してきた声よりも暗く感じた。
「うおぉぉ!」
(今回は能力制限ナシだ。遠慮なく能力を使わせてもらう!)
メガネを外し因果逆転の魔眼を発動。その後に12枚のカードの中から1枚を選択。神々の加護を使うため詠唱を始める。
「『世界を管理する天の12柱の神々よ。
今、我が声に応えこの現世に
汝らの血と因子が流れる天の使いたる我が身に、
矮小なるこの魂に、
その偉大なる力の断片よ、顕現せよ。
此度、顕現するは戦の神、ソラ・ベルム。
聖戦と武を司る1柱なり』!」
詠唱が終わると俺の身体は神様の力を宿していた。双剣を取り出し、戦闘準備を終わらせる。
(よし、全力の俺に加えて神崎だ。相手が神器保有者とはいえ負ける筈がない)
と、思っていた矢先だった。
因果逆転の魔眼で“俺達がグラハムさんに倒される„結果が見えたのは。
「ハァッ!」
グラハムが剣を横凪ぎに振るう。相手の剣のリーチでは絶対に届きようのない俺達との距離は、相手の剣が巨大化することによって埋められた。
とっさの出来事に神崎は反応できず、防御はできたものの、吹き飛ばされ部屋の壁に背中を叩きつけた。そして、動かなくなる。しかし肩が動いているところを見るとまだ死んではいないのだろう。
結果を前もって知っていた俺はなんとか耐えれたが正直、神器保有者、しかも歴戦の戦士に勝てるかは分からなかった。
「……カンザキもまだまだだな。さて、残ったのは君だけだ、ハカリ。降参する気は……あるはずないか」
「当たり前だッ!」
神々の加護によって強化された身体で相手との間合いを詰める。ここからは因果逆転の魔眼は使えない。色々とデメリットが多い能力なのだ。
グラハムと俺とで激しい剣戟が繰り広げられる。何度も、二つの銀の閃光と紅の鋭い一閃が交錯する。しかし、その鮮やかな紅の閃光はこの度に形状が変化する。
閃光だけじゃなく、実際にグラハムの剣の姿形が変化しているのだ。
(ダメだ!剣のリーチも攻撃の感覚も全てが瞬時に切り替わる!まるで読めない!反撃するどころか攻撃すらできない!)
さっきから俺は防戦一方だった。早く反撃しなければと焦った瞬間に隙ができる。もちろん多くの死線、戦場を生き抜いてきた歴戦の戦士がその隙を見逃す筈がなく。隙ができた瞬間に俺の体にとてつもない衝撃が加わる。体が浮く。体が壁に叩きつけられ肺の空気が全て吐き出される感覚。その後、意識が薄れていく。それはまるで、さっきの神崎の動きのリプレイのようだった。
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