拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。

雹白

拝啓、神様。能力よりも剣技がチートなんですが?

………俺が神様との特訓を始めてから1ヶ月。
今日は異種族との戦闘があるらしい。戦場へは異人族の魔法使い達が転移魔法を展開して送り出してくれるらしい。
 1ヶ月間クラスメイトと会話すらしてない俺は久々にクラスメイトと顔を合わせていた。
「よっしゃ!今日は俺が1ヶ月鍛えてきた剣術を披露してやるぜ!」
「おいおい、本当かよー?まあ、援護射撃はしてやるよ」
……クラスメイト達は自分達の強さを速く確かめたいらしく皆どこか落ち着いていない感じだ。
「…おい!秤!」
誰かに呼ばれた。誰だろうか。俺に話しかけてきてくれるのなんか橘くらいなのだが……俺が振り返ると…
「よ、よう。なんか久しぶりだな」
どこか気まずそうな表情を浮かべた神崎がたっていた。
「あ、ああ…」
二人の間を妙な沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは俺だった。
「……転移前は悪かった。殴って…」
「いや、あれは俺が原因だから。本当にあの時はどうかしてた……」
再び訪れる沈黙。今回の沈黙を破ったのは神崎だった。
「ま、まあ!今日の戦闘互いに頑張ろうぜ!」
……忘れていたけど神崎は普通にいい奴なのだ。そうでなかったら皆から信頼などされない。そう考えるとあの日の神崎は本当におかしかったのだ。あの日に何かあったのだろうか。
 そこで王様が言う。
「よし!皆。今日は君達の1ヶ月の努力が日の目を見る日だ!今日の戦闘で存分に力を振るってほしい!」
その王様を見て、俺はふと疑問を抱いた。
(本当にこの世界では昔異種族同士が協力しあって暮らしていたのか?その割には王様は戦争に肯定的じゃないか?)
俺が常人族の思想に疑問を持っていると戦場へ向かう転移魔法が展開された。
「じゃあ、皆行ってらっしゃい」
と王様が言った瞬間俺の視界は白く染まった。
 そして気づくととてつもなく広い荒野に俺達は居た。たしか王様は転移先は魔族領だって言っていたような……
「お、おい!来たぞ!………魔族だ!」
 魔族………❬魔王❭を頂点とした人ならざる姿を持った者達。近接戦闘はそこまで強くないがその分魔法戦闘が強く、彼らが放つ魔法は威力が桁違いに高い。
(さて、俺達がどこまで戦えるか確かめていこうか………)
 遥か彼方が光ったのが見えた。魔族達が魔法を使った証だ。その光をもって俺達の初戦闘は始まった。
「「うおぉぉぉぉ!!」」
 近接戦闘メインの生徒が何人かが何も考えずに突っ込んでいく。しかしもちろんそいつらはあっけなく魔族の魔法によって吹っ飛ばされる。
 しかし、吹っ飛ばされた生徒達の影から一つの人影が飛び出す。神崎だ。❬星帝剣エクスブレイク❭を携え疾風の如く戦場を駆け抜けていく。そしてついに神崎と魔族の軍勢が衝突する。魔族達が魔法を放つ。しかし神崎はそれを上手く防御しながら、その上でまるで肌を流れゆく風のように魔族に斬撃を喰らわせてゆく。
(凄いな……もう人の領域越えてるんじゃないか?………俺もそろそろ行くか)
 俺はこの戦いにおいて神様からいくつかの課題を課せられた。一つ目は❬能力❭を使わない事。二つ目は魔法を使わない事。とりあえず俺は自分の剣技だけで戦わないといけない。
「さて、実力確認だ」
俺はクラスメイトの集団から抜け出す。
「お、おい!?秤!?お前1ヶ月間特訓してないんだから戦えるはずないだろ!」
さっき魔法を食らった生徒の一人が言う。しかしそれでも俺は疾走する。そしてすぐに魔族の集団に突っ込む。もちろん魔族が魔法を放ってくる。全方向から高威力の魔法が近づいてくる。
(………やっぱり、遅いな。これなら!)
俺は向かってきた魔法を一つ残らず双剣で断ち切った。
「…………!」
魔族達も呆気にとられている。
「ほら、隙だらけだ」
一瞬で周りの魔族に斬撃を浴びせていく。体のバネをフル活用してこの1ヶ月間、神様から教わってきた動きを再現する。相手をよく見て、その上相手が防御できない場所に防御できないタイミングで斬撃を叩き込む。この動きを繰り返している内に魔族はどんどん倒れていく。結局、魔族の大半は俺と神崎が倒してしまったらしい。
「は、秤?なんでこんな最前線に?」
「えーと……。ま、まあ気にするな」
「お、おう…?」
神崎は困惑していたがそれ以上は聞いてこなかった。
 そして、俺達は魔族の集団の殿にいた一団の元にたどり着いた。そこには、限りなく常人族に近い風貌をした魔族の青年とその取り巻きがいた。
 俺はこの戦いが始まる前に神様や王様から各種族の高位存在について聞かされていた。各種族にはごく少数異常な能力を持つ高位存在がいると。常人族にとっての❬法王❭や俺達勇者のような存在だ。これが魔族になると知能が高くなり、風貌も人ならざる姿から人間に近くなるらしい。もちろんその他の能力も普通の魔族よりも高くなる。つまりこいつは魔族の中でもトップクラスの強さを持つ魔族だということだ。
「………キサマら本当に常人族か?その割にはやるようだな。ここまで来た事は誉めてやろう……この❬魔君主❭ガゼルの元までたどり着いた事は、な………!」
相手から殺気が放たれる。他のクラスメイトだったらここで気を失っていただろう。
するとガゼルと名乗った魔族は自分の取り巻きを下がらせ薄く笑みを浮かべ言葉を紡いだ。
「……ほう?今の圧に耐えるか。キサマらただの常人族ではないな?いいだろう。遊んでやる。せいぜい我の前で滑稽に踊れ」
「気を引き締めていこう。神崎」
「……ああ。もちろんだ!」
その瞬間。勇者、神々の使いと魔族の君主との戦闘が始まった。




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