拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。

雹白

拝啓、クラスメイト。俺、神様の使いになります。

……教室が光に包まれた後。俺は足元に雲が広がる空間だった。
「ここは…?」
「ここは天界ですよ。秤彼方」
 そうだ。俺は10年前、一度ここに来ている。たしかその時ここに居たのは…
「神様か?」
「はい、久しぶり…と言っても私にとってはそこまで時間がたった気がしていませんけどね…なにせ数千年存在しているものですから」
 振り向くと女神様がいた。
 一流のガラス職人が手掛けた作品よりも美しく透き通るかのような瞳。教会の穢れなき銀の十字架を溶かしたかのように流れる銀の長髪。優しげな、見ているとどこか心が安らぐ品のある微笑。纏っているのは純白のドレス。
 彼女の容姿と彼女が纏う神々しさは、足元の真っ白な穢れ一つない天然のカーペットと真っ青な晴天の背景にこれ以上ないくらい合っていて…
この世の物とは思えない美しさを誇っていた。
「本当に久しぶりですね。女神イル・リアス様。何ですか、俺が異世界転移の瞬間話す機会を設けてほしいと俺が願ったから天界に俺を召喚したんですか?それとも異世界転移する俺に更なるチート能力を授けるため?」
「ふふ。あなたは相変わらず神に対して堂々としてますね。ちなみにあなたの今の問いは前者は間違い、後者は正解といった所ですかね」
 どういう事だ?じゃあなんで俺は天界で神様と話す必要があるんだ?
「秤彼方。あなたをここに呼んだのは他でもありません。あなたがこれから転移する世界をあなたの手で救ってほしいのです」
 そこから神様は語った。異世界に迫る危機について。
 まず、俺たちが転移するのはイル・リアス様が管理する3つの世界の中の一つだという事。
 その世界には魔族、聖霊族、聖魔族、天使団、堕天使団、常人族、異人族が存在し、少し前までは互いに手を取り合い平和に暮らしていた事。一種族じゃ解決できない困難も他種族と共に解決してきたという。
 しかし、その関係が最近になって崩れ種族同士の争いが起きているらしい。イル・リアス様と他の神々はその争いの原因がとある新しい勢力だと突き止めた。だが、神々は現世に干渉はできないし、どうやら犯人を突き止めたとはいえその勢力の中身に対しては何も分かっていないとの事。
 そこでイル・リアス様は唯一、例外として神々に干渉した人間………俺にその勢力を探しだして壊滅してほしいらしい。
「お願いします。秤彼方。私達にはあなたしかいないのです。それに、もし仮にこのまま争いが続いてしまったらこの世界が滅びて他の2つの世界にも悪い影響が及んでしまいます」
「で、でもそれならなんでクラスメイトを一緒に転移させる必要があったんですか?俺のせいでクラスメイトを危険に晒したのなら俺は彼らに合わせる顔が無い。それに、最悪の場合死人が出るかもしれない。能力を持っている俺はともかくクラスメイトは一般の、しかも高校生だ!そんな危険な争いが起きている世界に転移させる必要があったのですか!?」
「それは…あなた一人で争いを終結させるのは時間が掛かりすぎるからです。きっとあなたが争いを終結させる前に世界は滅んでしまうでしょう。だから、彼らを選びました。あなたの力になってくれるであろう素質のある優れた子達を」
「だけど彼らが争いに適応できるはずがないだろう!」
「ええ、私達だって彼らに命を落としてもらっては困ります。だからあの子達にも能力を授けます、あなたには新しい能力を…ね」
 新しい力だって!?俺にはもう能力があるはずだ。なぜさらに増やす必要があるんだ?
「なぜ俺に新しい力を授けるのですか?俺にはもうすでに❬物事の結果を事前に知る❭力がありますよ?」
「でも、あなたも自分で分かっているのでしょう?その力はあなたの本当の能力の末端でしかない事は」
 確かにそれは感じていたことだ。あの人・・・が遺してくれた力の本質はもっと違う物なのではないか、と。
「あなたにその力を遺していった・・・・・・方は私達にこう言って…」
 そこで俺が神様の言葉を遮る。
「もういい!あの人・・・の話をするな!」
 神様は俺の言葉を聞いて
「すいません。あなたの前で言うべき事ではありませんでしたね」
と謝罪してきた。なんだか俺も申し訳なくなってくる。
「いや、こっちも悪かったです。声をあらげて。それで、神様が俺に授けてくれる力ってなんなんなんです?」
 俺が神様に質問すると神様は胸をはって堂々とおしえてくれた。この神様、こういう所は子供っぽいんだよなぁ。
「よくぞ聞いてくれました!まずあなたの能力の本質………」

「❬因果逆転の魔眼❭を限られた時間解放できる力です!」

「おおー、すごいですねー」
 よくわからないが反応しておく。
「そうでしょう、すこいでしょう!次にこの❬神々の加護❭をあげちゃいます!これはすごいですよ!私達、12柱の神々の力を断片的にですが発動できます。12枚の神々の刻印が押されたカードを渡すのでそれを媒介にして発動してください」
「おお!」
 これは素直にすごいと思う。これこそチート能力じゃないか。
「さらに、この神器❬全智の魔導書❭と❬聖銀の双剣❭を授けます。❬全智の魔導書❭はその名の通り様々な情報を閲覧できます。❬聖銀の双剣❭は他でもない私…このイル・リアスが造り出した双剣です。性能は保証しますよ!」
「おお、カッコいい!」
 やっぱり神様分かってるなぁ。センス抜群だよ!特に❬聖銀の双剣❭なんか俺のストライクゾーンのど真ん中だよ!
「以上が私達から授ける❬力❭です。うまく活用してくださいね!」

 俺達のテンションがある程度落ち着いた後…

「では、これからは補足です。どうかあなたが神々の使いだという事は誰にも気付かれないようにしてください。いつ、どこに奴らの仲間がいるのか分かりません。気をつけてくださいね」
「はい、わかりました」
「あと、あなた達が転移するのは常人族の国の一つ、聖イリスティア王国です。その国の住民は全員私を信仰しています。国王に私が事前にお告げを告げてあります。あなた達のことを快く受け入れてくれるでしょう」
 それはありがたい。転移者を召喚した国王が悪役だったりするのはよくあるから…
「では、あなたを他のクラスメイトと同じように転移先へ送ります。世界の命運はあなたにかかっています。では、あなたに多くの幸があらんことを!」
 その瞬間、俺の足元が徐々に光始める。
「あっ!言い忘れてました!私とならいつでも話す事ができますからねー!」
 その言葉を聞き終わった瞬間俺の体は光に包まれ天界を去った。

 彼方が、天界を去った後………

「…行ってしまいましたね…」
 やっぱり彼と話しているとなぜか気分が高ぶってしまいます。彼が普通に生活していた時もふとした時天界から彼を見てしまっていました。この気持ちはなんなのでしょうか。分かりません。
「あなたはきっと気付いていないのでしょうね。10年前にあなたは既に今日、異世界に転移することは決まっていました。だからあなたは神の使いとしての身体能力が与えられていたのですよ」
 橘さんを助ける時の彼はとてもかっこよかったです。私も橘さんのように彼に助け出してもらえたらなぁ…羨まし…ハッ!羨ましくなんてありません!
「それに…❬聖銀の双剣❭は『私達から』、と言いましたけどあの双剣は私からの送り物なんですよ」
 ふふ。あの双剣を見たときの彼の表情は忘れられません。あんなに嬉しそうな顔!
「私も彼と色んな所を駆け抜けてみたいなぁ…」
 その時私は良い方法を思いつきました!ふふっ。彼の驚いた顔を早く見たいです!

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