#Web小説サイトの歩き方

水乃流

「LINEノベル」プレオープン、みたいな

 新しい小説投稿サイトが立ち上がります。「LINEノベル」(https://novel.line.me/)という名称からもわかるように、LINEが主催するサービスです。『出版社の枠組みを越えた小説プラットフォーム』と銘打っており、以下の出版社が参加しています。

株式会社KADOKAWA/株式会社講談社/株式会社新潮社/株式会社集英社/株式会社実業之日本社/スターツ出版株式会社/株式会社宝島社/株式会社東京創元社/株式会社文藝春秋

 「カクヨム」を運営しているKADOKAWAの名前があることが少し驚きです。また、比較的堅いイメージの出版社が多いような印象がありますね。個人的には、創元が入っていることに少し期待したり。他の小説投稿サイトでは日の目を見ないSFジャンルがスポットライトを浴びる日が来るのかもとか妄想してしまいます。

 さて、やや乱立気味になってきた気もする小説投稿サイトですが、「LINEノベル」の特徴は、書籍化のシステムにあります。「なろう」などでは通常、サイトの作品が書籍化される際にサイト運営は仲介(出版社と作者を繋ぐ)役を果たすだけです。しかし、「LINEノベル」の場合、参加している出版社が作者にオファーを送ると、その情報が他の出版社にも共有されます。つまり、他社動向がまるわかり、ということです。そして、残りの出版社は、当該作者に自社からもオファーを出すかどうかを選択できるそうです。複数オファーがあれば、作者はその中から条件の良い出版社を選択できることになります。現時点での参加企業の色を考えれば、オファーが被るケースは稀有なことになりそうですが。

・ユーザー登録
 正式公開グランドオープンはまだですが、ユーザー登録や投稿はできるようです。ユーザー登録は、LINEアカウントあるいはメールアカウントで行います。私はLINEを使っていないのでメールアカウントで登録しました。登録画面からメールアドレスを入力すると、そのメールアドレスに登録用URLが送られてきます。着信から一時間に登録を行わないと無効になります。
 登録画面では、ユーザーのニックネームとパスワードを設定します。さすがセキュリティで散々叩かれてきたLINEだけあって、結構高度なパスワードが求められます。

 「LINEノベル」の画面には、一番上に固定のメニューが表示されており、左端にはトップページへのリンクが張られたロゴマーク、右にはユーザーのアイコン(画像を登録できる)と「∨」アイコンが表示されています。「∨」にカーソルを合わせると「∧」に変化してメニューが表示されます。「∧」アイコンをクリックするとメニューが固定されですが、クリックしないでもメニューを選択することができます。その辺の合否判定がシビアというか同じように操作してもメニューが選択できるときとそうでないときがあるので、要改善ポイントかな。




・作品管理画面
 メニューは「作品管理」「会員情報設定」「ログアウト」の三つ。作品管理画面では、執筆中の作品が表示されます。投稿した作品は「全ての作品」「公開待ちの作品」「未公開の作品」をタブで切り替えて表示するようになっています。「公開待ち《・・》の作品」となっているのは正式にオープンしていないからで、オープン後はおそらく「公開中の作品」になるのでしょう。タブメニューには数字で作品数が表示されます。右のペインには、上から「新しい作品を投稿する」「ユーザーのニックネームとユーザーアイコン」「フォロー/フォロワー」「お知らせ」が並んでいます。「新しい作品を投稿する」をクリックすると、作品投稿画面が表示されます。

・投稿画面
 投稿画面では、まず「連載中」か「完結」のいずれかを選び、タイトルを入力します。この辺りは「カクヨム」に似た印象ですね。続いて、「作品の種別」を選ぶのですが「ライトノベル」か「ライト文芸・文芸」のいずれかを選択するようになっています。うーん、この項目必要なのか? 次に「ジャンル」の選択です。異世界ファンタジー/現代ファンタジー/バトル・アクション/SF/ラブコメ・学園/青春・恋愛/現代ドラマ/ホラー・オカルト/ミステリー/歴史・時代・軍事/ノンフィクション・エッセイ/詩・童話・俳句/その他の十三項目からひとつを選びます。

 次に「表紙画像」を選択するのですが、「ジャンル」で設定したジャンルごとに表示される画像は異なります。そのジャンルごとに表紙が用意されている、と考えることができます。また、オリジナルの画像を表紙としてアップロードすることも可能です。その際、アップロード形式はJPEGかPNG、ファイルサイズは1MBまでとなっています。ただ、私が試した限りでは、アップロードしても「形式が違う」と弾かれてしまいました。「マグネット!」で使っている画像なので、問題ないはずなんですが……。

 表紙画像の次は、キャッチコピーと紹介文を入力します。そして「セルフレイティング」でレイティングを「暴力描写有り」「残酷描写有り」「性的描写有り」から選択します(複数選択可)。その次の「コンテスト」では、参加したいコンテストを一覧から選んでクリックします。クリックすると、コンテストの内容や注意事項が表示され「同意する」を選択するとコンテストに応募したことになるようです。

 最後に作品に付けるタグを設定します。タグは最大8個まで設定できます。用意されているタグは、魔法/転生/戦記/男主人公/女主人公/魔王/剣と魔法/冒険/恋愛/異世界転移/グルメ/バトル/日常/学園/ダークファンタジー。それ以外にも、最大二十文字までのタグをユーザーが設定することができます。全ての設定が完了したら、一番上にある[保存]ボタンをクリックします。作品管理画面に戻れば、入力した内容が反映され、作品名などが表示されているはずです。

・エピソード投稿画面

 執筆管理画面に表示されている「エピソードを執筆」をクリックすると、エピソード投稿画面が表示されます。「エピソード一覧」→「エピソードを執筆」でも同じ画面が表示されます。
 エピソード投稿画面は、一番上の左端に画面を閉じる「×」アイコン、中央に「(エピソードタイトル)を編集」、左に編集中のエピソードを削除する「削除」ボタン、保存する「保存」ボタン、エピソードを公開する「公開」ボタンが並んで居ます。オープン前なので「公開」機能はイネーブルになっており、代わりに「下書きの共有」機能があります(共有については後述)。
 トップメニューの下に、修飾・整形ボタンが並んで居ます。左から、「ふりがな」「傍点」「太字」、「字下げ」「編集画面設定」「丸括弧変換」となっています。「ふりがな」「傍点」は、そのままですね。タグは「カクヨム」と同じです。他サイトにない機能として太字があり、タグは「_b_」。このタグに囲まれた文字列が太字で表示されます。太字といっても、ワープロソフトなどのように太字のフォントファミリーが使われるわけではないので、(おそらくシステムに依存)あまり期待した効果はでませんが、表現の幅が広がることは確かでしょう。
 「字下げ」は、選択した段落の先頭に空白一文字分を加える機能で、「なろう」や「カクヨム」にも実装されている機能ですね。注目したいのは、「編集画面設定」機能でしょう。読者が読む閲覧画面の設定変更は、他のサイトでもできますが、編集画面をカスタマイズできるのは今のところ「LINEノベル」だけですね。このボタンをクリックすると、編集画面の文字サイズ、背景色、フォントを選択できます。最後の「丸括弧変換」は、“()”を“《》”に変換する機能で、「なろう」ユーザー向けでしょう。

 画面の下には、左側に入力した本文の文字数が表示され、右側に「プレビュー」ボタンが表示されています。「プレビュー」をクリックすると、閲覧時の状態で表示されるのですが、ちょっと変わっていて、横二十文字(?)のスクロールバー付きインフレーム表示です。スマートフォンアプリでの表示を意識したものでしょう。なお、「編集画面設定」での設定は反映されません。右下の「編集モード」アイコンをクリックすると、元の編集画面に戻ります。

 編集を終了すると、作品詳細画面が表示され、PVやエピソード数、レビュー数、いいねの数、コメント数が表示されます。

・共有機能と雑感など

 繰り返しになりますが、正式公開前なので小説を投稿しても公開はできませんが、コンテストの応募や下書きの共有ができます。エピソードの投稿画面で「公開」→「下書きの共有」をオン→「適用する」をクリックすると、表示されているURLで下書きの共有が可能になります。このURLにアクセスすれば、第三者が下書きを見ることができます。その画面で「プレビュー」をクリックすると、実際の閲覧状態を確認できます。ただし、画面表示のカスタマイズはできないようです。オープン後もこの機能残るのかな?

 どんな感じに見えるのか、試しに私の小説「異界調整官」の一話を晒してみます。

https://novel.line.me/episode-draft?token=51bc3bb0-703b-4467-9780-0adcda145389-AAAADNIIJa_ZAhIS1uXnPK_kW_9_b7Cu-0RqN13nD64Nkz461J6crlMdGeE4ScTcPaJekK4nVzHufrMIDJLZ

 最終的に公開するものなので、規約には引っかからないと思うけど(^_^;)

 それから、ヘルプはLINEと共有らしく、ヘルプから「LINEノベル」に戻るリンクが設定されていません。LINEロゴをクリックすると、LINEのトップページが表示されます。ヘルプは別のタブ/ウィンドウで表示したほうがいいでしょう。これは将来修正して欲しい点ですね。

 システムの全体的な印象は、「カクヨム」ですね。KADOKAWAが出版社として参加しているからなのか、将来、統合があるのか……まぁ、これは考えすぎで、KADOKAWAのプラットフォームに他の出版社は乗りにくいでしょう。
 LINEが運営ということで、「ノベルバ」と同じようにスマホアプリを中心に作られているようですが、夏にリリースされるアプリでも編集可能になるんでしょうかねぇ。「カクヨム」だとアプリから投稿も修正もできないので、少し心配です。

 こうやって比較をする身にとっては、新しい小説投稿サイトが増えるのはやっかいですが(セルバンテスとか紹介していないのもあるし)、競争があって互いに高め合うことはいいことだと思いますよ。

コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品