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ヘタレ勇者と魔王の娘

しろぱんだ

第19話 中央国 プロミネンス王国



  ダイセンを出発し3日間、馬車を利用し修行しながらもプロミネンス王国を目指し、ついに到着した。

  馬車から降り、腕を目いっぱい上に挙げて伸びをする。
草原から香る花や木の実の匂いが鼻を通して伝わり、体の中の空気が新鮮なモノになってゆくのを感じる。

「久々だなぁ、中央国」

「私、何だか気持ち悪い…」

  ハジメの後に馬車から降りたシファーだったが、口に手を当て、青ざめた顔でヨロヨロと地面を覚束無い足で歩く。

「結界のせいでしょう。魔力を抑えていると力が半減されると思います」

  そう言いつつ、懐から筒を取り出した衛兵長は蓋をキュポンッと開け、筒の中から腕輪を2つ取り出し2人に手渡す。

  金色に光る腕輪に、紅いルビィの様な宝石が散りばめられている。

「これは、この国の施設を利用する為に必要なブレスレットです。コレを身に着けて入れ ば結界の影響は受けません」

「あぁホント、一気に気が楽になってきた…」

「本来はパスポートと共に発行される呪印等で結界の力が制御されるのですが、今回は特別枠として、この国の重要人物として扱われます」

「特別枠?」

「『王の防衛』ですよ」

  ハジメの問に衛兵長は答える。

「認められた者だけがこの腕輪を装着する事が許されます。腕輪による効力は3つ、『王宮内への立ち入り』『この国の施設の提供』『情報管理』となります」

  施設の提供となると、宿泊施設等を無料で借りれるらしく。
ハジメはこの国に何度か来た事がある為、大きいホテルの宿泊費を考えた刹那、言われ様の無い圧を感じた。

「情報管理は、事件等が起こった場合。この腕輪を持つ者になら説明をしても良いとされているのです」

「成程、緊急の時に手早く動けるんですね?」

「流石です。まぁ、これで街の人はシファー殿の事を勘繰ったりはしないでしょう。
後はパスポートの事ですが──丁度来ましたね」

  衛兵長が見ていた視線を追う二人。
そこに小さな人影が此方に向かって歩いて来る…のだが。

  意外とある距離にハジメとシファーは驚愕する。数百メートルは離れている筈の人を目視し、あまつさえ待ち人だと認識出来る程の視力。


  そう言えば、俺とシファーさんがタイガさんと戦っていた時も、結構離れた岩の上から様子を見ていたんだっけ…。

「お待たせしました♡︎」

  考えている内に待っていた人物が到着したらしく顔を上げて見ると──そこには見知った顔があった。

「よ、ヨツギさん…」

「やぁやぁハジメちゃん♡︎」

  栗色の髪を後ろで1本に纏め。
ワイシャツにネクタイをし、上から白衣を着飾った女性。

ヨツギ・ナイトソードが彼女の名前だ。

「───彼女が例の?」

  横目でシファーを見て、聞こえるか聞こえないかの声でボソリと呟く。

「お待たせしましたシルフィード様♡︎
こちらが頼まれていたパスポートです♡︎」

「ありがとうございます。こちら、御礼のGゴールドと頼まれていた品です」

  パスポートと引き換えに衛兵長は小袋に包まれたゴールドを手渡す。

「ありがとうございます♡︎
 ハジメちゃんも、凄い事に巻き込まれてるわね?」

「え、あっ、そう…ですね」

  急な投げ掛けに、ハジメは言葉が出ずに煮詰まり挙動不審になる。

「ハジメ…?」 

  青ざめた表情を浮かべるハジメをシファーは首を傾げながら見詰める。
ニコニコと手を振るヨツギ。
 
「何さ、特訓して上げた時の事まだ根に持ってるの?」

「違うッスよ…単に苦手なだけ…」

「余計に悪いわ!!」

  スパンッ!!と頭を叩かれるハジメ。
その豪快さにシファーは口を開け、ポカンとして見惚けてしまう。

「そういえば、カイトくんと連絡は?」

「いてて、知らないッスよぉ…。あの人、大切な事は濁して言うか、黙ってやるかの2択なんッスから」

「あー…言えてるわ」

「流石、御二方は分かってらっしゃる」

「私、会った事無いからアレだけど。カイトって、めちゃくちゃ面倒そうな人ね…」

  特に衛兵長の頷きが大きかった。
それ程に掴めない男なのだろうか。カイトという人物は…とシファーは胸でツッコむ。

「そろそろシファーちゃん達の番ね」

  止まっていた馬車がゆっくりと動き始めたのを見てヨツギが言う。

行列がいつの間にやら減り、あと少しでハジメ達の番となるまで来ていたらしく。
馬車の横へ着いて行き、門番の元へと4人は歩く。




「はぁーい、入国手続きお疲れサン」

入口付近の受付の中から、見知った顔が現れ。ハジメは目を丸くした。

「タイガさん、少し早く出て行ったと思えば何してるんスか?」

  ハジメの問いにタイガは不服そうに頬杖を着きながら、判子を片手でポンポンと手玉の様に扱いハジメの差し出したパスポート3枚に判を押す。

「仕事や仕事。エラい奴が中央国の入国審査担当なりおってな。
ワイはソイツの手伝いに駆り出されとるんや」

「へぇ、じゃあお疲れ様ッス」

「ちょっ、ちょっと待ちぃな?!」

  カウンターから身を乗り出し、ハジメの首根っこを掴むタイガ。
首元を掴まれたせいか、前に進もうとしていたハジメは奇妙な声を上げて後ろへと戻される。

「な、何をッ?!」

「その腕輪、えぇヤツやん!!  な、なぁ。今夜一緒に茶飲みに行かへん?」

「行きませんよ!! そもそも、夜にお茶って…」

「アホかいな、茶言うとるのは建前や建前!!
えぇ女子の要る見せ紹介したるから、な?」

  頼み込むタイガを腕を振り払い一瞥すると、ハジメは深い溜息と共に首を横に振った。

あからさまな拒絶の意を知らされ、タイガは観念したのか。それ以上ハジメを引き止める事はせずに見送る。

「───気に入らんなぁ」

  バンダナの下から覗く細い目が見開き、黄色い瞳が鋭くハジメを捉え睨む。

「タイガ、彼とその前に居た女の子が?」

  不意に掛けられた声に、顔色1つ変えずにタイガは振り返り頷く。

「せや。そっちの首尾はどないや?ショーンさん 」

  タイガの対面に立つ男性。
白くくせっ毛がある髪を整え。しっかりと着飾った服。
しかし、その服装は執事服とスーツの中間の様で奇妙なスタイルとなっていた。

  全身を黒でキッチリと固めた服装。
一点の隙も無いくらいに完璧な姿勢。

執事と言われても違和感の無い彼は、此処の責任者であり。
タイガの教会側としての直属の上司でもある。  
 
「虫が数匹入り込んでいたが…しかし、その魔力の根源が見付からない」

「虫って…見付からない?」

「あぁ、商いも此方が手配した者だけ。魔力も微弱なモノばかりで害は無いと上は判断した」

  微弱な魔力を持つ小型の虫の魔物も多く存在する。
例えば蚊とかの様な小さい魔物。
これは通常の蚊より血を多く吸うのが特徴であり、他は何処にでも居る蚊と変わりはない。

地方によっては病原菌を持っているモノも存在するのだが、そちらは現在の医療で解毒可能だ。

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