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ヘタレ勇者と魔王の娘

しろぱんだ

第18.5話 王国への投石


  此処はチューハン王国の入口『双龍門』

  チューハン王国は深い崖に囲われ、入国するにはこの『双龍門』を潜らなけれならない。

  しかし、その為の入口は崖の上に存在する石造りの龍の頭部の口から流される滝によって阻止されている。

なので、滝下にある大きめな足場に乗り魔法陣により入国するのだが───


  例外は何処にでも存在する。
不法入国する者が、わざわざ表向から入国するだろうか?
──否。
どんな手段を使ってでも潜り込めれば良いのだ。

例えば崖を登る。
穴を掘る。空を飛ぶ。誰かに化ける。
魔法を使えばどうとでもなるのだが、魔力を感知される可能性が絶大。

  それならどうするか。

「よく、番人を買収出来たよね〜」

「ワチの話術の賜物じゃ」

「流石、歳食ってるだけ───あぶがながぎゅの?!」

  余計な一言で内蔵を掴まれる程の激痛に襲われた。

金髪のモサモサヘアーを盛大に地面に着けながら四つん這いになる男性。

その元凶の小さな女性。

2人は共通の黒いフード着きのコートを着飾り、チューハン王国の入口に居た。

「そろそろゲートを開くので魔力を抑えて下さいね」

  門番の大男が横の柱に手を翳すと、掌から魔力が注がれ魔法陣が浮かび上がり2人を光が包み込む。




  チューハン王国 平村

「結構賑わってるんだなぁ」

「此処は…まだの。少し行った先にもう1つ村があるハズじゃ。
先ずはそこへ向かうぞ」

  黒いコートだと目立つからと、2人はコートを脱ぎ一般人となり紛れ込む。

「良く見るのじゃ。あちらこちらに細い子供が穀物を売っておる」

  言われた通りに周りを見渡すと、確かに身体の細い子供が多く。
その子達は皆、薄汚れた格好をして穀物をボロボロのシートの上に広げて売っていた。

  しかし、驚くのはその子達の髪色。

「っ───!!」

  普通ならチューハン王国出身の人間は皆黒髪なのだが、その子供達は金髪や栗色。
瞳の色や肌の色も違う子も居た。

「先程の門番もじゃが、元は『他国』から売られた奴隷じゃよ。
しかも、人攫いの…な…」

  俯きながらも放たれた言葉に、彼は歯をギリッと噛み締め。
拳を強く握り締めていた。

  それに気付いた小柄な彼女は、小さな手でその拳を抑えると、首を横に振った。

「まだその時ではない。ワッチ達の仕事を果たすぞ…」





 チューハン王国  暗部室

  点々とある暗部の部屋の1つ。
薄暗く陽の光だけで照らされた埃っぽい部屋に、幾つかの人影が存在した。

その中で目立つのは黒く艷めく髪を、ショートに切り。
黒いチャイナ服に身を包んだ女性。

  部屋に備え付けられた大きなソファに陣取り、大きな扇をパタパタと鳴らしながら鋭い目を更に吊り上げて不敵に口角も上がる。

「やっと来ましたね。────私の駒が」
 
「ボス、どうしますか?」

  黒装束の暗部の仕事着を着込み、白い仮面を着けた1人が、女性へと歩み寄り問う。

「そう…ね。この国の正体を自ら見に行ってくれるのなら助かるわ。
何人かは尾行して、真実に辿り着いたら連れて来なさい」

「はっ!」
  返事を返すや否や、部員は少数の味方を引き連れて外へと向かう。






チューハン王国  ハンソン村


「酷どい…何なの? この村は?」

「此処は『ハンソン村』、奴隷だった人や罪人が隔離された村じゃ」

  村の様子は酷く、首に鎖を着けられた人が多いのはその為。
表の綺麗な街並みとは違い、こちらの建物は築数が分からない程ボロボロで、そこに住む人達の格好も薄汚れていた。

  更に驚く事に、奴隷として飼われていた人の中には指名手配犯の姿がチラホラ見受けられた。

「ヤシロコにバルト…どれもLv40は超えてる強者じゃないか」

  どういう訳か、元殺し屋が大人しく横たわり。
虚ろな目でずっと行き交う人を見ては、何かブツブツと呟いている。

  不気味なその光景に硬唾を飲み、隣を歩く相棒を見るが、あっちはあっちで別な事に興味があるらしく。
全くそちらを見ようともしない。

「5人…囲まれとるの」

「えっ?」 

「視線は真っ直ぐ。この村に入る少し前からじゃが、追手が何人か着いて来ておったのじゃ」

  言われるがまま、彼女の言葉通りに視線を前に移し歩く。何回か角を周りながら様子を伺うと、確かに数人の男性が着いて来ていた。

「あの首輪…奴隷じゃな」

「どうするの? 騒ぎにしたくないんでしょ?」

「まぁ、大丈夫じゃろ。次の角を左に曲がるぞ」

  建物が密集した所にある路地に入る。真っ直ぐ進むと、そこは行き止まりとなり。
ゴミ等が散乱した少し開けた場所に辿り着く。


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