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ヘタレ勇者と魔王の娘

しろぱんだ

第5話 豚人族VS人間


ドゴンッ!!ドゴンッ!!ドゴンッ!!

  大きな何かが打ち付けられてる様な音がら森の中へと響く。

「馬鹿力過ぎだろ…それ!!」

「アンタがアタイの仲間をォォォォォォォォォォ!!」

バゴンッ!!!

  木に隠れてやり過ごそうとするも、隠れた先の木が根元から抜け倒れてしまう。

地面にも、何度か棍棒を打ち付けた様な跡が見られ。
このオークが如何に錯乱しているのかが手に取るように分かる。

「よくもォ…よくもォォォォォォォォォォ!!!!」

「お前達が先に人間を襲ったんだろ?!」

「人間が魔物に逆らうなァ!!」

「くっ──!!」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」

「『幻術魔法』解除ッ!!」

    素早く唱えると、木が揺らぎハジメがそこに現れる。

そして、ハジメだと思い振り翳していた棍棒の先は先程オーク自信が壊した木の残骸。

そこへオークは勢い良く振り下ろしてしまう。
止まれなかった。気付いた時には直前なので成すがまま、オークの腕は木の残骸に突き刺さる。

「ぶがァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

  しかし、無事な方の腕で左腕を掴み木から引き抜くオーク。

メキメキメキィ──ブシュッ!!

「ぶっひっ…ふぅ!!」

「なら…ッ!!」

  ハジメは地面を蹴る様に駆け出すと、拳を突き出しオークの腹を狙う。

「ぶごっぶ!?」

「重いッ!!」

  腹に滅り込む拳。
だがしかし、オークの腹には剛毛と分厚い脂肪がある為か、正拳突きや打撃は効果が薄い。

実際に殴ると、拳は途中で止まり弾かれそうになる。

「ぷぎっ…!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

──ドガッ!!

「ぶっ?!」

  一瞬、ハジメの意識が飛んだ。
踏ん張りながら力を込めていたハズなのに、足は地面から離れ、身体事宙に舞う。

「がっ──はッ!!!」

  地面に落ちた衝撃で、腹の中の酸素が一気に口から吐き出される。
気を抜いたら、また意識が飛びそうなくらい頭が揺らぐ。

  何が起きたのか分からずに目を開くと、先程まで自分が立っていた位置に大きな影が落とされているのが分かった。

「貴様ァ、オレ様の女に何晒しとんじゃ?」

  その声や見た目には見覚えがあった。
つい先刻、少女シファーを襲っていたオーク。彼がそこには居たのだ。

それだけでは無い。
今し方自分を殴ったと思われるオークの右腕。
その腕は確かに先刻、自分が肩の骨を砕いたハズ。なのに何故あの威力で殴れる?

そもそも、どうして動かせるんだ?

頭が回らない。
考えたいが脳に酸素が行っていない。

「トンミよ。これを塗って置くが良いガッハッハッ」

「アンタ、コレってあの薬じゃ?」

  あの薬?
見るとオークの手の中に筒状の箱が手渡されていた。
中には塗り薬らしきモノが詰められていたのか。トンミと呼ばれたオークがヌメリとした液を腕に着けると、ジュワリと音を立てて傷口が薄くなってゆく。

「『魔王の血』を薬で調合?だかってやった物らしいが。
これは中々に効くぞ?」

「アラ、本当に効くわ!!  それどころか、何だか強くなった見たいにも感じるゥ!?」

  …魔王の血?
『魔王の血』だって?!
あの1口でも飲めば溢れんばかりの力を得てしまうと云われているあの?!

そもそも、コイツが狙っていたのもシファーの流れる『魔王の血』。
その源元を混ぜた薬なんてヤバいに決まってる。

「くっ…あぁ…!?」

  立ち上がろうと力を入れるが、脇腹の骨が折れたのか。激しい痛みが走り抜け、力が思う様に入らない。

一撃で『物理耐性Lv:3』を貫通してるのか?

「棍棒でダメージが入らなかったのは、スキルのせいだったんだっけかァ?
残念だが『豚人族リトルオーク』の棍棒と『猪獣人オーク』の力じゃあ、小石を投げられるのと、岩を投げられるくらい違ぇぜ?ガッハッハッ!!」

「けっ、うるせぇな。豚タンの調子なんて誰がっ…聞いたんだよ?」

「オウオウ、強がるなよ人間。どうせ貴様等下等生物は『新生魔王軍』には適わねぇんだからなァ?ガッハッハッハッハッ!!」

「──どうかな?」

「あん?」


───ヒュンッ─────ズバッ──!!


  空を切り裂く音。
その刹那、高笑いをしていたオークの首元から血が吹き出し。それに数秒遅れてオークは首元を押さえ付け騒ぎ立てる。

「がァ─?!  あァァァァァァァァァ?!」

「アンタ!?」

  トンミが急いで駆け寄ると、オークの首元に薬を投げ付ける。

「スマンな? 戦場で馬鹿笑いをしていたので切り付けてしまったよ」

  ハジメの前に現れたのは、白髪の髪を後ろに纏め。
貫禄のある髭を生やした大柄な男性。スタト村で衛兵長を務めている彼の姿がそこには有った。

「ッ…?!  やはり…君だったかハジメ・ナイトソード君」

「お久しぶりッスジャックさん。
今は衛兵長でしたっけ?」

「懐かしき顔を見れたのは良いが。ソレ・・は治っていない様だね?」

  いつの間にやら『いつも』の言葉遣いに戻っていた俺の言葉を、衛兵長は指摘し困った顔をしていた。

「その様子だと、手酷くやられた様だが?」

「アイツ等、『魔王の血』で作った薬で回復とパワーアップをして来たんです。
気を付けて下さい」

「成程…なら」

  衛兵長は腕を前に翳すと大きく『取り囲めぇ!!』と命令を降す。

その言葉を聞き付け、茂みに隠れていたであろう数人の兵隊がオーク2匹を取り囲む形で包囲した。

「今の話は聴こえていたな?
テレ!!『通信魔法』は発動したまま私と彼の間に立て!!
他の者は様子を見ながらオークに攻撃!!」

  テレと呼ばれた若い兵士は、普通の兵士とは少し違う技術隊の服装をしていた。
慌てて2人の間に立つと、地面に手早く魔法を描き始め。
兵士や衛兵長の動きを見つつ行動する。

言わばサポーターの動き方だ。

  戦闘向けの兵士と、それをサポートする魔術師や技術士が存在する。

兵士にも色々と種類があるが、技術士にも様々な種類がある。
メカニズムに強く攻守可能な者。通信機に魔法を用いて戦況を逐一伝えてくれる者。

  彼は後者なのであろう。
魔法陣を描き上げたと同時に、背中に背負っていた通信機を置き。それを媒体にして魔法を発動させた。

簡易的な魔法だと素早く描ける反面、何かを媒体にしたりするのだが、技術士はそれも自分が造り出した物で補う。

「…!!  コチラ、テレ!!」

『良かった通じたか!!  こちらフォン。森で少女が二人迷い込んでいるのを発見!!』

「なんだって?! どっちに向かったか分かるか?」

『あぁ、オークの騒ぎ立てる方に向かったらしい。
コチラは負傷者が多過ぎて身動きが取れん』

「分かった。ならこっちで確保する。そちらは警戒しつつ下山し、他の部隊と交代してくれ」

『了解。通信を終える』

  女の子二人?

今の通信を聴いて、ハジメは嫌な予感が頭を過ぎった。


「居た!! ハジメ!!」

  早くも予感が的中したのか、茂みから飛び出した影二つがハジメの目の前に現れる。

「な…何で来たんッスか?!」

「知り合いかい?」

  目の前に現れた少女。
それはシファーとジェリーであった。

驚いたテレがハジメに問うと、ハジメは微かに首を立てに振った。

「それが、ギルドに来た人がアンタが森に入って行くのを見たって言ってたから…」

「止めようと考えたのだけど、オークの雄叫びが聞こえて来たから戦ってるんじゃないかって…」

「だからって来る事」

  ハジメが声を荒らげ様とした刹那、シファーは駆け寄りハジメの目の前に腕を差し出す。

「口開けて…私の血で少しは回復出来るハズだから」

「えぇ?!  血を飲むのもアレッスけど、『魔王の血』なんて飲んだら何が起こるか分からないッスよ!?」

「大丈夫!私は半分人間の血が入ってるから、人間には害が無いハズ」

「どんな理屈ッスか?!」

  ギャーギャーと言い合って居ると、ジェリーとテラは目を点にして二人を見ていた。

視線に気付いた二人は、口元を抑えて顔を見合わせる。

「魔王の…血?」

「え、シファーちゃん…?」

  しまったと口を塞ぐが時既に遅し。





「ぬぐァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

  怒号と共に復活したオーク。
手元に転がっていた棍棒を握り締め立ち上がると、兵士を見ながらニヤニヤと不敵に笑う。

その姿に気圧されてか、兵士達の反応がオークの次の行動に数秒遅れてしまう。

───ブォンッ!!

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「グハッ?!」

周りに居た兵を棍棒で薙ぎ払い、力の具合を確かめている様だ。

「『切り刻む斬撃スライサー』!!」

ズバッ──!!!

  迫り来る棍棒に対して自らの剣で斬り止める。その勢いでオークの棍棒は斜め上に大きく逸れてしまう。

「ぐぬ?!」

「なら、アタイの棍棒を喰らいなァ?!」

「ぬ──!?」

  一瞬の隙を突いて、後ろから襲い掛かるオークのメスのトンミ。

「衛兵長殿!!」

ドガッ!!!

  棍棒が衛兵長に直撃する前に、トンミの体が横へと寄ろける。その理由は頭を襲った衝撃。

その衝撃を与えた張本人は、未だにトンミの頭上に存在していた。

「今ッスよ!!  ジャックさんッ!!!」

  ハジメは空中で身体を捻りながら衛兵長へと声を投げ掛ける。

その時、既に衛兵長は剣を構え身を小さく屈めていた。
一瞬のチャンスを彼は把握して次に備えて居たのだ。

「うぉりゃっ!!」

「ふんっ!!」

ズガンッ!!とトンミの顔面に蹴りが入れられた。その反動で後ろへ仰け反った胴体へと、衛兵長が一閃が如く激しい剣技を深く決めた。

「(何だ…これ? あの子の血を飲んだら体が軽い?
それだけじゃない。跳躍や蹴りの威力が上がってる。
これが『魔王の血』の力なのか?!)」

「ハジメ君!!」

  声にハッと気付いた瞬間。その時、ハジメの視界の端に先程弾かれた棍棒が接近していた。


  避けられ無い!!


ズガンッ!!

  棍棒は無情にも勢い良く振り下ろされ、ハジメは地面へと叩き付けられてしまう。

「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「ハジメ…? 嫌ぁぁぁぁぁぁ!!!」

  シファーとジェリーの叫び声が木霊する。
しかし、オークはそんな事を梅雨知らず。地面へと叩き付けたハジメに追い討ちとばかりか、大きな足で踏み付け、更にはジリジリと踏み躙る。

「ブッヒッヒッヒッ!!  ブヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

「よせ!!  ゴブッ──?!」

  剣を構え飛び込もうとした衛兵長が吐血をする。
直ぐに口元に手を宛てがうが、血の勢いは止まらずドバドバと出血が止まらない。


「此処に来て…ダメージがっ?!」

「衛兵長殿!?」

「ブヒッ!」

 ──ドガガガガガガガッ!!!

「ぐ…ぬぁ…っ?!」

「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

  大きな巨体を活かした突進。
地面に鼻や牙を押し付ける勢いでの突進は、地面を抉りながらターゲットを捉える。

  踏み付けられていたハジメが地面に半分埋もれ、衝突した衛兵長と兵士達は宙へと舞った後に地面に叩き付けられてしまう。

「力が…力がみなぎるゥゥゥゥゥゥ!!!」




  オークから微かに昇り始める何か。
それは黒くドロりと重たく溢れ出る。徐々に濃くなってゆくソレに、残された3人は圧倒され。言い様のない圧迫感が腹部を襲う。

「こちら…テレ…部隊は……沈黙」

『なん…だって? ジャック殿は?!』

「オークの異形個体により部隊は全滅…。
『魔王の血』を取り入れたオークは肉体が強化されていて、攻撃の威力や防御力が上がっている模様」

『おい、テレお前は撤退しろ。情報だけでも持って帰って来るんだ』

「こちらに2名の民間人が居る。その子達を逃がしてからだ。」

  通信を無理矢理切り、テレは魔法陣を踏んで消す。

「あの…」

「二人は下山するんだ。オークが目を付ける前に逃げなければ危ない」

  彼の形相にジェリーは驚く。
まるで何かを覚悟した表情、しかしソレは戦う覚悟では無く死ぬ覚悟。

敗走すらも諦めた表情に、ジェリーはスパンッと1発ビンタを入れる。

「ぃ───たっ!?」

「貴方ね!!  あの隊長さん達を見て、何で絶望出来るのよ?!」

「ちょっと、ジェリーさん?!」

  咄嗟に止めに入ったシファーを振り払い、ジェリーはテレの胸ぐらを掴み叫ぶ。

「貴方が死んだら皆が立ち上がるわけ!?
死んだ人が生き返るわけ!?
そんな事無いじゃない!!なら此処で貴方が死ぬのはダメ!!
生きて貴方も下山して、そして状況を伝えるのよ!!
それが兵士としての貴方の役目でしょ?!」

「っ…あぁ、そうだね」


「ブヒッ、逃がすかァ──人間ッ!!」

  3人が話している所を見付け、オークは不敵に笑みを浮かべ地面を何度も蹴る。

この仕草は猪等がよくやる、突進の前の準備と同じ。

力を蓄え、一点に集中したオークは砲弾の如く駆け出す。


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