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ヘタレ勇者と魔王の娘

しろぱんだ

第3話 異変


  延びてしまっていたシファーを起こし。俺等は取り敢えずキッチンの近くにあるテーブルを囲む様にして座る。

「その…ごめんね?」

「だ、大丈夫ですヨ…」

  申し訳なさそうに謝罪をするジェリーに対し、完璧に怯え切っているシファー。

「そのッスね!!  か、彼女がシファーといってですね!!
森で魔物に襲われている所を偶然見掛けて」

「助けたと?」

「いや、まぁ。魔物が逃げたと言いますか…」

「倒したのよ、彼が。オークをね」

  何とか誤魔化そうと言葉を選んで濁していると、横から手痛い発言が飛んで来た。

「魔物を?しかもオーク?  コイツ、レベルは相当低いわよ?
5だかで止まったままだし」

「5?」

  一瞬、部屋の中が静まり返った。
背筋が凍りそうな程冷たくなってゆく。

ヤバい。今まで『同年代掲示板』に嘘の記載をしていたのがバレる?!

「…ちょっとローラさんの所行ってくるわ」

「ちょっまっ?!」

  席を立つジェリーを引き留めようと腕を掴むが振りほどかれてしまう。

「ローラ?」

「この村の集会場に居る『観測者』ッス!!」

  俺は走り去るジェリーを追い掛けようとドアを開ける。

「待って! アタシも行く!!」




   村の中央に位置する大き目の木造の建物。
此処は『依頼仕事場ギルド』と呼ばれる場所。
ギルドは様々な地域に多く存在し、それぞれの情報を独自のネットワークで共有したりしている。

  冒険者は依頼を受けたり、レベルを確認したい人はギルドカードを更新する事で把握出来るのだ。

「えぇっとね? ジェリーちゃん?」

「アイツ、この間のレベル提示の時に嘘吐きませんでしたか?!」

「嘘じゃないわよ? だから落ち着いて?」

「レベル5のクセに、あの森の魔物を倒したんですよ!!
魔物が暴れてるのも珍しいですが、オークなんて最低『Lv:10』じゃないと勝てないでしょ!?
しかも単騎で勝てるのはもっと上のハズ!!」

  遅かったか、ジェリーは血走った目で受け付けに居たローラさんを捕まえて質問攻めにしていた。

その光景を見ていたら、服の袖をクイクイと引っ張られた。どうやらシファーが何か気になったらしく、俺が屈むと小さく耳打ちをしてきた。

「ねぇ? 彼女の言ってるレベル提示って何?」

「あぁ、同年代の奴らでレベルを競ってるグループが居るんッスよ。
俺もそれに巻き込まれてるんッス…」

「大変ね…」

  同情したのか、シファーはハジメの背中をポンポンと叩く。
小さな可愛らしい手の優しい感触に、ハジメは少し涙が出そうになる。

っと、それどころじゃないな。

「あら、はーちゃん? 貴方の幼馴染が大変なの助けて~」

「ローラさん?!」

  いつの間にかジェリーの視界から消え、受け付けから俺の所へ寄っていた。この人、『観測者』っていうのに動きがソレじゃないぞ…。

「そうだはーちゃん。ワタシね、シチュー作る予定なの!  今日持って行くわね?」

「あ、ありがとう…ッス」

「ねぇ…ちょっと…」

  余りの距離の近さにシファーは目を点にしてする。

「あら可愛い!!  何この子?!」

  標的が切り替わった。

「ひっ…!!」

「あらあらあら!!  綺麗なふわふわな髪の毛!!」

「離して!!  え?…力強いぃぃぃ!?」

  『観測者』というのは、ある意味では力が必要な職業なのである。
ギルドでの管理は全て彼女達が行っている。つまり、ギルド内での揉め事は『観測者』が処理するのが鉄則。
その為にある程度レベルが高い『冒険者』が『観測者』の職に就く事が多いのだ。

勿論、彼女ローラ・スィートツも例外では無い。

「そうッス、ついでなのでローラさん。少し頼み事をお願いしても良いッスか?」

「えぇ良いわよ?」

  シファーを抱き締めたまま振り返り、ローラは内容も聞かずに承諾する。

いや、それはそれでダメなんだよなぁ…。

  内容は別にそこまでじゃないにしろ、しっかりと手続きはしたいからな。

「取り敢えず、書類に記載して置きますッス」

「その前にレベルの説明よ!!」

「まだ言ってるんッスか?
俺のレベルは5ッスよ。それは変わらないッス」

「絶対嘘だね!!  アンタ、昔にもいち…ど…」

「昔?」

  ハジメはジェリーの言葉に首を傾げる。

  途中から声が小さくなり、聞き取りづらくなってしまったが、確かに昔に1度と言ったと思う。

「あらあら、青春かしら?」

「2人ってそういう仲?」

  赤面して俯くが、ジェリーは耳まで真っ赤だったので2人にはまる分かりだった。

しかし、ハジメだけはそれを否定するかの如く首を横に振る。


「それは無いッスね。コイツ、前に俺をカエルにして弄んでたし」

「ちがっ…あれは…!!」



「大変だ!!観測者さん!!
村の周辺に、多数のモンスターが現れたぞッ!!」

  ハジメが首を締められていると、傷だらけの男性が1人、ギルドへと駆け込むや否や大きい声を荒らげる。

「何ですって?!」

「ローラさん!」 

「えぇ、ジェリーちゃんはシファーちゃんを連れて避難場所へ!!
はーちゃんはこの男性を運ぶのを手伝って!!」

「「は、はい!!」」

  俺はシファーの肩に手を置き、顔を覗き込むシファーに大丈夫ッスと一言だけ伝える。

シファーは最初こそ躊躇したが、俯き首を縦に振った。

  それを見てジェリーはシファーと共にギルドを出る。駆け足で出て行った二人は、直ぐに姿が小さくなり、村の中を移動する民衆の中へと消えてしまう。


  ハジメはローラと二人で男を椅子に運び座らせた。傷の具合を見て、長く動かせないと分かったのか。
ローラは直ぐに治癒魔法を男性に向け唱えると、黄緑色の光が優しく彼を包み込む。

「うっ、流石は『聖職者』様だ。もう大分楽になったよ」

「傷口を塞いだだけです!!動いてはいけません!!」

「いや、それより早く戦える者を手配してくれ。敵はオーク群れだ。軽く15頭は居たから、前衛に高レベルな人物を配属した方が良い」

「…分かりました。それでは貴方は此処で休んでいて下さい」

「へへ、分かってるよ」

   男性はそう言うと、体力を使い果たしたのか。崩れる様に寝落ちてしまう。

テーブルに体を委ねさせ、深い眠りに着いた彼を見て二人はギルドを後にする。





「大変だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!  キラービーだ!!キラービーが出たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「バカッ! 出たのはゴブリン集団だ!!  早くしろ!!
女子供は直ぐに避難だ!!」

「助けて!!  この子だけでも先に?!」

「ママぁ? ママぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「おい、ガキがうるせぇぞ!!」

「うっさいのはアンタよ!!!」


  二人がギルドのある中央から、商業場所が密集している東口に来ると、そこは酷い惨状と化していた。

人が我先と避難する為に統率が取れずに、避難が遅れているのだ。

「どういう事ッスか?!
出たのはオークの群れッスよね!?」

「分からないわ。 この状況からして、外の様子を把握している人が少ないみたい…!!
はーちゃん?!」

「俺、ちょっと見てくるッス!! ローラさんはこのまま『観測者』としての仕事を頼みますッス!!」

  静止を聞かずにハジメは村の入口へと駆ける。止めようと伸ばした手が間に合わず、民衆の波に逆行して走り去ったハジメをローラは苦い顔で見送った。

確かに、現状が把握出来ていない状態とこの民衆の騒動を同時にやり過ごすのは無理だ。

ならば分担した方が効率は良い。

  ローラは決心すると、胸の前で十字を切り祈る様に立ち尽くす。
その時、眩い光がローラを包み込む。それを目撃した者は走っていた足を止め、ローラへと視線を向け惚ける。

  これは彼女のスキル『聖なる祈り』と『広域』が起こした現象。
『聖なる祈り』は発動中、特定の者の邪気や心を鎮める事が出来るのである。

その特定を『広域』により広める事が可能となり。結果、この騒動を静める事が出来たのだ。

『広域』はその名の通り、広い範囲に効果を振り分けられる事である。
例えば1人を回復させる呪文でも、スキルの『広域』を同時に発動する事で全体を回復したり等も可能とする。

  しかし、当然その分多目に魔力を消費したり。広域化させている内は精神力も激しく消耗してしまう。

  実は彼女ローラ・スィートツの様に『観測者』となり、ギルドの受付けになるには必要なスキルなのだ。
理由は、こういった時の騒動を沈黙させたり。ギルド内や町・街・村・国の平和維持に使える能力だからである。

  村人達は徐々にローラに魅せられ、心を落ち着かせ静まり返り魅せられる。神々しく輝く彼女の姿を。




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