追放された私を拾ったのは魔王だった為、仕方なく嫁になってあげた私はラグナロクにてスローライフを送りたいと思います

永遠ノ宮

第十三話 髪の毛

梅雨があけて少しずつ暑さが出てきたラグナロクは早い夏を迎えようとしています。
 私は王国追放後、髪の毛を切っていなかったので前髪が目に入って痛いことが増えてきた。
 私はテトにいい美容室はあるか聞いたが、髪の毛なら僕な任せなよ!と嫌な予感をかもしだす発言をするテト。
 私は逃げようとしたがテトに軽々と抱き上げられてしまい、前髪を本当にテトが切ることに……。


「アリア!動いてはだめだからね?!僕、今すごく身体が緊張で震えているから動いたら変な切り方になってしまいそうだから頑張って!」

「ねぇ、テト待って?!私が動く前にあなたが震えてたらだめじゃないの?!」

「大丈夫だ!僕は愛するアリアのためなら前髪だってきれる!」

「愛する人のためじゃなくても前髪くらい切れるわよ!」


 そんなやり取りをしていると話を聞きつけた使用人の方達により、私は頑丈に固定され、立つことすらできなくなり……、


 チョキン……!


 テトは手を震えさせながら私の前髪にハサミを入れた。


「アリア、幼くなったーー!」

「あら!アリア様、幼くなられましたね!大人っぽさがなくなり、子供らしさがまたなんとも!」

「え!ちょっとまって!幼くなったの?!いくつくらいまで幼くなっちゃったの?!」

「十四歳ほどまで幼く……、オホホ」


 今、明らかに笑い声が聞こえたよ?私は耳だけはいいからちゃんと聞いますよ?
 十四歳まで幼くなったなんて私もう外歩けない……。


「テト、鏡貸して……」

「あ、これだね。はい!」 

「絶望は覚悟しなきゃいけな……。ーーあれ?これ本当にテトが切ったの?」

「そうだよ?可愛いでしょ?」


 とてもテトが切ったとは思えない程に綺麗に切れていて、長さがバラバラだった髪の毛が、アシンメトリーで綺麗に軽く切られていて、可愛いと自分でも思ってしまうほどだった。


「テトって散髪のセンスあったのね!多分、たまたまでしょうけど」

「いいことを言ったあとに気分を突き落とすことを言っちゃだめだ!」

「お似合いですよ!アリア様!」

「でも、本当にこの前髪は可愛いわ!ありがとう!テト!」
 
「最近の君は、感謝と心の底からの満面の笑みが本当に増えたね!可愛い笑顔がよく見えるこの前髪は最高に似合っている!」


 そう言ってくれるのはとても嬉しいのだけど……、使用人さん方が恥ずかしくなっているからそれ以上はテトやめてーー!!と私は心の中で叫んだ。
 と、ここで私はいいことを思いついたのです。
 テトの髪の毛を私が切ってあげよう!こういうことです。


「テト、あなた髪の毛を後ろで結んでいるけど長いでしょ?私が切ってあげる」

「それは嬉しいな!僕なら失敗してもいいからね?すぐに髪の毛伸びるから!」

「じゃあ切るよー!」


 私はテトの髪の毛にはさみをいれていく。
 一本一本が綺麗に透き通っている水色の髪の毛はとても細く、風に吹かれるとどこまでも飛んでいきそうだった。 
 テトが私に二日前に言ってくれた言葉があった。


「アリアの髪は真っ白で何もない色がないようなのに、近くでみると赤にも見えたり青にも見えたり。神秘そのものだね!とっても綺麗だ!」


 そんな言葉を言われたら、嫁であったとしても嬉しさで胸がどうにかなりそうだった。
 テトが言ってくれたその言葉の返しをいましてみる。


「テトの髪の毛は透き通る海のように綺麗ね。遠くから見れ水色、でも近づけば白にも見えたり、濃い水色にも見えたりと色が変わる。テトの髪の毛は神秘のそのものって感じだね!とても綺麗よ!」


 なんて言葉を少し恥ずかしくても言ってみる。
 テトはその後何も話さなくなった。
 着々と髪の毛を切っていき、さっぱりとウルフヘアーに切り終える。


「テト!終わったわよ?私の手にかかればこんなものよ!」

「あぁ、僕じゃないみたいだ……。これがアリアの中の理想の僕だったんだね!うん!気に入った!」

「そうよ?短いテトは絶対にかっこいいってわかっていたからこの髪型よ」

「ありがとう。じゃあ僕からブレゼントを贈ろう!後ろを向いて?」

「こう?これでいいの?」


 私は言われるまま背中をテトに向けると、テトは私の髪の毛を持ち、後ろの髪の下半分を手で撫でている。
 私は何をされているのかわかっていないけど、テトが何かをしようとしているのはわかった。
 テトが私の髪の毛を撫で終えるとドライヤーという未来の道具が登場し、そのドライヤーで私の髪の毛に熱を当てると、鏡に写る私は鏡の反射でみた自分の髪の毛をみて涙が溢れた。
 テトの髪の毛と同じ、透き通る水色が私の髪の毛の下半分を染めている。
 そして、テトの襟足は私の髪の毛と同じ色をした光る白で染まっている。


「アリアへのプレゼント。僕と同じ髪の毛の色だ」

「テト……。あなたはどこまで私を喜ばせれば気が済むの?私はあなたからばかり幸せをもらっているわ」

「いや、僕は常に幸せを君からもらっているんだよ?君が横にいる幸せを。そして今日は君の髪の毛の色を貰った!おあいこさんだね!」


 テト、私もあなたから常に幸せをもらっているわ。いつも横にいてくれてありがとう。でもこの言葉はまだ伝えないわよ?
 まだ伝えない、私はあなたと出会った日、あの一年後またあの場所で伝えたいから。

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