未知日々 もう一つの思い出

goro

第一章 1







昔から言い伝えられた言葉がある。




未知日々。




いつから伝えられたのかわからない。
だが、その言葉を私は…








彼に出会うことにより知ることになる。












1 memory 


出会いと始まった日々。














日本にあるあまりに小さいため誰も訪れる者のいない孤島。


真座弥島。




そして、そんな島には百人といった少数の人々たちが住んでいた。














「ふわぁー」


海水の音が聞こえる。
真座弥島に住む少女、花奏はなかな まつりは眠たげな目を擦りベットから身を起こした。


少女の住む家は真座弥島の岸にポツリと建っている。二階建ての白い塔のような家。
そしてその家の二階に少女の部屋があった。


花奏は欠伸をしながら部屋の窓を開けた。
そこからは塩の匂いをまとった風が部屋に入ってくる。
花奏は体を伸ばし海を眺めた。


「…………ん?」


だが、その時。
花奏の眉を潜めた。


今まで生きてきた中で彼女は初めて目にした光景。
ここからそう離れていない岸の防波堤に止まる船。




そして、その船から地に降りる人影。


「ひ、ひひ人だ!!」


蔓延の笑みが花奏の表情を染めた。
足をバタバタとさせて急いで出る支度をし、二階から一階に降りた花奏は口に水色の大きな飴を含み、


「人だよ、お母さん」


玄関に置いてあった写真にそう言い、花奏 祭は外へと出ていった。




この後に起こる光景を見るとは知らず。


















「ほんとにいいのか、坊主?」


防波堤に止まる船の船長は溜め息を吐いた。
まだ時間は早朝、しかもたった一人をこんな孤島に連れなくてはならなかったのだ。


船長は頭をボリボリとかき、


「こんな孤島の学校に留学なんて坊主も変わりもんだよな。まぁ頑張れ」




そう言って地に降りた一人の男、少年に手を振り船は少年を残し孤島から離れていった。




船が見えなくなるな、少年はそう思いながら船から目を離し、


「さって…………」


初めて孤島に来て目にする山や道路にたいし、


「学校ってどこだろ」


今日中に着くか、と少年は溜め息を吐いた。
その時、


「あのー」
「ん?」


少女の声に少年は目を見開いた。
声が聞こえてきた方向に視線を向けるとそこには、


「ひ、人ですよね?」


全く意味のわからない事を尋ねる少女。
花奏 祭が立っていた。














「じゃあ留学生って君だったの?」
「ああ、まぁな」


少年は今、花奏 祭と名乗る少女と一緒に山道を歩いていた。


あの後、訳のわからない質問に悩んだ少年だったが宛もないので少女と話してみた。
すると、なんとも奇跡なのか少女は自分が行く学校の生徒らしい。
少年はこの時、神様に感謝した。


そして、少年は花奏に一緒に連れていってくれと頼み現在にいたる。


山道を歩きやや一時間。
どれだけ歩くんだろ、と少年は道の先に視線を向けると、


「ん?何だあれ?」


視線の先に何やら怪しげな像がポツンと立っていた。
何とも怪しげな像だな、と少年は腰に手をおき、じー、と像を見る。


「あ、それ別に怪しくないよ」
「……………」
「何かな、その目。信じてないでしょ」
「ああ、全く信じられない」


何を!!と頬を膨らませる花奏。
一方、少年は像を見てやはり違和感を感じていた。


(やっぱり変だよな。………何でこの像、コケとかついてねえんだ………それに)


少年は頭を抑え、花奏に聞いてみるか、と振り返ろうとした。
その直後。


「ッ!!」
「なっ!?」


ドンと少年は花奏に押し出され、林に倒された。


「なにっ!!」
「静かに……」


少年は直ぐ様起き上がり怒号を飛ばそうとしたが、花奏の一変した表情に口を閉じた。
そして、花奏の視線を追うとそこには、


「何だよ、あいつら」




黒に身を包み、顔を仮面で隠した複数の集団がザワザワと集まっていた。
そして、両足の下には小さな黒の鉄球が地につかずに浮いていた。
集団たちはその鉄球に乗り、辺りを見渡していた。


「おい、あいつら一体」
「黙って。………あれはサバルナ」


サバルナ?と眉を潜め、花奏に振り向く少年。
すると、そこには、




赤い鉄バンドを手首にまく花奏の姿があった。


「おい、おま」
「大丈夫。私が何とかするから君は逃げて」


花奏は口元を緩め、グッと拳を握った。
その直後。


ブゥンと音をたて赤いバンドから薄紅のオーラが現れ、花奏の手首に巻き付いた。


少年はその光景に目を見開かせ驚きを隠せずにいた。
だが、直ぐ様少年は頭を振り花奏を止めようとする。


「ちょっと、待」
「待てないよ!!」


刹那。
花奏は一瞬にして黒い集団の一人を殴り飛ばした。


集団の空気が一気に殺気に変わるのが肌で感じた。




花奏は不適に笑うとその場から離れていく。
集団もその後をもの凄い速さで追っていく。




少年は黒い集団を止めようと林から飛び出したが既にその場にはいなくなってしまった。


「くっそ!!」


少年は直ぐ様足を花奏と黒い集団たちが進んだ方向へと帰る。


















「ッア!?」


花奏は石壁に身体を打ち付け倒れた。
目の前には黒い集団とそのリーダーらしき男が立っている。


花奏はまさかこんな事になるとは思わなかった。
他の集団なら問題はなかった。
だが、この男。


黒い勾玉を手首にぶら下げた、ただならぬ威圧感を出すこの男だけは違う。
花奏は何とか逃げ出そうと足を動かそうとする。
だが、その時。


「おい……貴様」


リーダーらしき男が仮面ごしから話しかけてきた。


「貴様のその手にあるもの。あの学校の生徒か?」
「だったら……何よ!」


リーダーらしき男は小さく笑った。
直後。


「お前を人質にあの老いぼれを呼び出す」


ドドドド!!と言葉が放たれたと同時に男の勾玉から黒い光が四つ放たれ、その光は花奏の両肩両太股に直撃した。


「ッぁぁぁぁぁあッ!!」


バタッと前から地面に倒れる花奏。
そして、荒い息を吐く彼女に勾玉を向ける男は、


「さぁ、しばらく眠っていてもらおうか」




黒い光が躊躇なく花奏の頭部に放たれた。


(ッ!!)


花奏はその瞬間、己の死を悟った。
















「option」


















直後だった。
ドカッと黒い光は花奏から地面へと叩き落とされた。
花奏は何が起こったかわからなかった。
だが、


「おい」


その声には聞き覚えがあった。


花奏は視線をゆっくりと目の前に向けるとそこには、


「テメェ、今何しようとしやがった」




グッと拳を握り閉めた一人の少年が立っていた。


「な、何で………」


花奏は絞り出すように声を出す。
だが、少年は答えてはくれなかった。






勾玉を持った男が集団たちに命令をし、少年を囲む。
手にはナイフが握られている。


花奏は少年は逃げろと叫ぼうとした。
しかし、声が出ない。
それでも何とか伝えようと花奏は少年の足首を掴もうとした。
その時。


「心配しなくても大丈夫だ」


少年は何の躊躇なく答えた。
え?と驚く花奏。


一方、少年は集団たちに唇を動かす。




「テメェら、後悔しやがれ」


額に手をかざし、少年は呟く。


「option」






集団たちがリーダーの命令により少年に迫り来る。




だが、少年は臆することなく唇を緩め、そして。




少年は叫ぶ!!






「衝刻の記憶!!」












ガァァァッ!!と音とともに集団はその瞬間に全滅した。
勾玉を握った男はあまりの光景に目を疑った。




たった一人の少年に蹴散らされた部下。
そして。






少年の左手首に回りながら浮いている金属の輪。


「き、きさまはいったい……」
「テメェらと同じだよ」


なに?と男が後ずさりながら少年の言った言葉に驚く。


「古代、現在、伝説……それらの一つ一つを操る………テメェもそうだろ」
「!?ま、まさか……」


初めて男が動揺し出した。


「レギア」
「!?」
「その勾玉、それもレギアなんだろ?」
「ッァァ…」


少年は一歩一歩。男へと近づいて行く。


「他人の物を潰すのは気が進まねぇよ、やっぱ」


だけど、と少年は続け、


「テメェみたいなやつにこれ以上、使わせるわけにはいかないんだ」


少年は右手を固く握りしめる。
すると、左手首に浮いていた輪はさらに回転を増し、それと繋がっているのか固く握られた右手に薄い緑の光が灯る。


「ァァぁぁぁぁぁあ!!」


リーダーらしき男は勾玉から無数の光を少年に向かって放つ。
だが、


「無駄だ」


ドドドド!!と光は少年に当たると直後。地面へと跳ね返される。


「ッア聞いてない!!聞いてないぞ!?」


男の叫び声が響き渡る。


「…………衝刻の記憶」




しかし、少年は男の言葉を聞かない。


「破滅記憶」




少年は男の懐に一瞬で入り、勾玉とともに、






「砕け散りやがれ!!」






バゴン!!と拳は勾玉もろとも男の懐に入った。
















「大丈夫か?」
「あ、はい………」




少年は今、花奏を背負いさっき歩いた山道を再び歩いていた。


黒い集団と気を失った勾玉を持った男は木に巻き付けてほってきた。




少年は小さく息を吐き、よっと、と段差を踏みつけながら歩いていく。
すると、その時、


「ねぇ」




花奏は口を開いた。
聞きたい。
知りたい。


花奏はそのことだけで頭が一杯だった。
だから花奏は少年に尋ねる。




「君は一体、何者?」




少年は突然の事に目を見開き驚いていたが、直ぐ様に口元をにぃと緩め、


「光夜」


質問の答えになっていないとわかっていながら少年、光夜は言った。






「俺は如月光夜だ」














ここから私の日々は変わっていくことになる。


そう、未知の日々。








未知日々へと…。









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