季節・未来・日々
季節・未来・日々
12月24日。
クリスマスイブ。
雪が積もる中のとある一軒家ではクリスマスパティーが行われていた。
「いや、あり得ねえだろ」
籔笠芥木は頭を抱え、青ざめている。
クリスマスイブはわかる。
パティーを開きたい気持ちもわかる。
だが、
「お前ら違う話のキャラだろぉがぁ!!」
ツッコミを入られずにいれなかった。
と、そんな籔笠に一人の男が肩を叩く。
腰に二つのアクセサリーを付け、片手に焼き鳥を持つ男。
風霧 新。
「まぁ、気にすんなよ。俺ら別に二次創作キャラじゃねえし」
「駄目だろ。普通に駄目だろ。後、二次創作のキャラいるし!」
籔笠が指をさす先にいたのは短髪の少女。
右手に摩訶不思議の力を持つ少女の名は。
上条未来。
「いいじゃないですか。たまには不幸じゃなくても…。いつもいつもいつも、不幸で。しくっ、しくっ…」
「ぅ!?」
「あーあ、泣かした」
「いや、俺はつまり言いたいのは」
「籔笠………」
突如、背後から感じる殺気に振り返る籔笠。
「アンタ、何女の子泣かしてるの?」
「か、鍵谷……」
「籔笠くん。いくらなんでもやりすぎだよ」
「島秋まで!?」
「本当、雪に埋もれて凍ればいいのに」
「死ねってか!それ死ねって言ってるの!?」
鍵谷真木、島秋花、浜崎玲奈の少女三人に責められる。
そして、籔笠は正座して説教された。
一方で籔笠たちから離れた所では、
「光夜、パンドーラさんと変わって!」
「絶対に嫌だ!!」
如月光夜が壁に添いながら逃げていた。
目の前には田中桜が何やら如何わしいサンタ衣装を携えている。
「良いじゃない。だってパンドーラさんに変わったら体も女になるんで」
「でも俺の体だろぉが!!」
「光夜には聞いてない。パンドーラさんに聞いてるの」
にじりよる桜に光夜は顔をひきつらせる。
「お、俺は絶対に変わらないから」
(駄、目、よ。強制変換!)
「なっ、出てくんッ!?」
異変は直後起こった。
光夜の茶髪は金色へと変わり、腰まで髪が伸び出し体は一瞬にして女性へと変わっていく。
「あ、お久しぶりですパンドーラさん」
パンドーラ。
如月光夜の持つルギア、パンドラの箱に眠っていたもう一つの魂。
度々、光夜の体を借りてその力で昔の姿に変わる事ができる。
「桜ちゃん、ありがとう。あ、そういえばプレゼントがあるの」
「え、プレゼント?」
パンドーラはポケットからパンドラの箱を取り出し、近くの広い床場に投げ出す。
その瞬間、白い煙がその床場から溢れだした。
「昔、私が飼ってた魚類なんだけど、新に斬ってもらって」
「あ、はい。わかりました。新さんに頼んで私が腕によりを…………」
「ん?どうしたの?」
「……………パンドーラさん。一つ質問していいですか?」
「うむ。言っていいよ」
「……魚類って正確には何で」
「うんっとねー、確か日本では」
白い煙から赤いにゅるにゅるとした物が無数に出てきて、
「あ、思い出した」
「っキャ!!」
「タコだったと思う」
「タコじゃなあああああああああいい!!」
巨体のタコが白い煙から現れ、その手で桜に巻き付き拐っていってしまった。
「………………………あれー?」
(あれ?じゃねえええええ!!)
パンドーラから主導権を取り返し何とか元に戻れた光夜。
辺りを見渡すと上条未来と鍵谷真木が捕まったのが見える。
「っキャん!あん、ちょっとそこッぁ!!」
「なぁ、何でこうッア!?ふぅ、ふこぅ!?」
「ダメェェ、そんなとこ触っちゃ、アあン!!ダ、誰でもいいから、たしゅっああ!!」
…………………………………物凄くヤバイ状況だ。
「あー、新。どうする?」
「え?……あ、いやどうするっていわれても」
「早く助けなさいッん!?」
「…………」
「…………」
固まる二人。
と、その直後。
「っコンのッ!!」
重い音とともに未来を縛っていた手が落ちた。
正確には、剥ぎ取ったに近い。
「あ、はぁ、はぁ、ありがとう」
未来はよれよれな足腰に力を入れ立ち上がり礼を言った。
そう、その人物とは、
「き、気にすんな……」
赤くなった頬を隠そうとしている籔笠芥木。
「ちょっと!!何で私を助けてくれないのよ!!籔笠の馬鹿!!アホ!!変態!!」
「上条、あれ稲妻で打ち落としていいから」
「うそ!!うそだから!冗談だから!!」
青ざめながら慌てる鍵谷。
しかし、とうの未来は待ってはくれず、
「大丈夫。ミディアムレアでいくから」
「む、無理だからあああ!!」
未来は二枚のコインを放り投げ、直後。
バチッ!!と電撃の槍が鍵谷と桜を巻き付いていた手に炸裂した。
「んじゃ、後は俺らがやるからアイツら連れて外に逃げてろよ」
「う、うん。わかった」
未来は急いで鍵谷たちに駆け寄り、島秋と浜崎も連れて外へと出ていく。
「かっこつけ」
「男の恥」
「いや、お前ら最悪だろ」
光夜、新、籔笠は目の前の巨体に向き直る。
巨体なタコは後の使える手を彼らに向かって放ち襲い掛かる。
「オプション、衝刻の記憶」
光夜の声とともに片腕に光る金色の輪が現れ、さらに回転していた輪は回転を徐々にあげていく。
「荒神流、混合奥義」
白と黒の刃を合わせたアクセサリ型の刀を手に、新は構え力を溜める。
それは一撃必殺の技。
「はぁ……、とんだクリスマスだ」
籔笠は息を吐きながら、片手を腰に付け肩を回し、体をほぐす。
「四季装甲、夏」
手が三人の頭上に叩き落とされかけた。
その瞬間に全てが動く。
「来光滅功!!」
「疾風朱雀・斬!!」
「刹那・殺雨」
その瞬間。
全てが終わった。
「おい、もういいぞ」
籔笠は外に顔を出し、彼女たちを呼びに出た。
すると、そこには鍵谷以外誰もいず。
「や、や、籔笠。見て、雪だ、よ」
「ん?」
やたら慌てながら鍵谷の言う言葉に空を見上げる。空からは少し大粒の白い雪が落ちてくる。
さらに星空も綺麗に見え、それは絶好の景色に変わっていた。
「綺麗……だね……」
「………ああ…」
籔笠の呟くような声が聞こえた。
顔を赤くさせる鍵谷は唾を呑み込み、勇気を出し声をあげる。
「……………や、籔笠」
「ん?」
空から視線を鍵谷に向ける籔笠。
と、目の前にリボンのついた箱がつき出され、
「め、メリークリスマス!!」
「………………」
…………………………………。
「な、なによ!な、何か言いな」
「鍵谷」
「ひゃい!?」
沸騰するかのように顔を真っ赤にさせる鍵谷に、籔笠は小さく笑いながらプレゼントを受けとる。
中を開いてみるとそこには手編みのマフラが折り畳まれている。
籔笠はマフラを首に巻き、暖かさを感じながら笑って言った。
「メリークリスマス。ありがとうな」
「……………う、うん」
嬉しさと恥ずかしさ。
雪が二人を祝うように降り続けた。
「ラブラブだな」
「だな」
「「ッ!?」」
「真木ちゃん、つぎ私だよ!」
「籔笠って本当つぶれたらいいのに」
「光夜!もう一回パンドーラさんに変わってよ!!」
「はぁ、私も恋愛とか出来るのかなぁ。はぁ、不幸だ……」
「ッ、お前ら、うるせええええ!!」
12月24日。
それはちょっとありえないクリスマスイブ。
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