地獄の番人ですよ!
プロローグ
プロローグ♪
ポタポタ、ポタポタ、と。
地面に落ちる水の音。
狭い一方通路。
両側の壁には数万と続く個室を閉じ込める檻がつけられている。
辺りは暗く、道を教えてくれるはボゥ、っと青く光る荒々しい炎。
そして、檻の向こうから聞こえる。
呻き声。
泣き声。
怒り声。
永遠に聞こえるその声はいったいいつまで続くのか、と
「うるさあああああああああああい!!」
その時だった。
その小さな声が通路一杯に響き渡り、今まで鳴くかのように聞こえていた声が止んだ。
そして、
カツカツ、カツカツ。
その小さな足音が聞こえてくる。
カツカツ、カツカツ。
足音は、さっきまで聞こえてきた声の所に一歩一歩近づく。
カツカツ、カツカツ、カッ。
ピタリと、足音はそこで止まり代わりに聞こえてきたのは、
「あんたたち!! いったい何時だと思ってるよ! いい加減に寝かせなさいよ!」
少女らしい声。
その声の主。
髪はポニーテイルに身長は小柄の小学生並み。真っ赤なドレスに両手首に黒いリボン。
さらに自身の背丈ほどの鎌を担ぐ少女。
彼女の名前はケルベロス・リザンカ。
「私はいくら番人でも女の子なの、わかる? 後数時間もしない内に地獄行きの魂が来て、はたまた動き回らないといけない! 可哀そうだと思わないの! こんないたいけな女の子が毎日寝不足で苦しんでるのに! ねえ、どうなのよ!」
ダン!!
リザンカはすぐ傍にある檻を蹴飛ばす。
……言動はともかく、その少女らしからぬ行動はというと、
「少女っていうより、ヤクザだよな」
無数にある檻の向こうから、ぼそりとそんな呟きが出た。
リザンカの眉がピクリと動いた。
瞬間。
ギン!! と甲高い音がその場に響き渡り、それは一つの側にあった檻を蹴飛ばした事により放たれた音だった。
「…………今、言った奴。手ぇ上げろ」
首など簡単にちょん切れる。
そんな馬鹿でかい鎌が、リザンカの肩から抜きとられる。
ちなみにリザンカの表情は、白い息を吐き目がどこかランランと赤黒く光っていらしゃる。
リザンカは小さくパチン、と指を鳴らす。
瞬間、鍵の掛っていた檻が開きそこから、うじゃうじゃ、と手首に大きな手錠をつけられた黒衣装に身を纏わせた人間たちが出てくる。
自分達が出された理由を知る人間たちは、リザンカの怒りっぷりに冷や汗をかく。
「さぁ、今言った奴。……手え上げろ」
「……………」
「別に怒ったりしないから、さぁさぁ」
「……………」
無言の回答。
…………………………………ブチリ!
「わかった。………………じゃあ」
ギギギィ、と地面に鎌の刃が擦りつけられる。
「あんたたち、地獄の地獄行き決定よ! 死に去らせえええええええええええええ!!」
リザンカの怒号と共に悲鳴と足音が響き渡る。
静寂だった場所がはたまた賑やかになった。
ケルベロス・リザンカ。
彼女の仕事は閻魔により地獄に落とされた人間たちの世話がかり。
賑やかで、静寂を知らない。
それが彼女が門番を任された地獄なのだ。
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