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季節高校生

goro

乱撃桜華





それはリーナにとって一瞬の出来事だった。
怪物となったアズミが死闘を繰り広げている中、ボロボロの姿にも関わらず立ち上がろうとしていた藪笠を突如にして現れた風霧が何かを話した。そして、そのまま続くように藪笠の肩を押し後ろに突き飛ばさした。
何の理由でそんなことをしたのかわからなかった。
だが、そう考えている間にも藪笠の体は地面に向かって倒れていく。
しかし、その状態が直後に停止した。


目の前にいる風霧が倒れる藪笠を受け止めたのではない。
藪笠が手を付き地面に倒れることを防いだのでもない。


支えのない宙で藪笠は体を停止したのだ。
浮いているといえば正しいのかもしれない。だがリーナにはそれがまるで倒れることを許可されなかったかのように見えた。




そして、リーナが目を見開く中。
宙に浮く藪笠の体はまるで水の中で体勢を整えるかのように体を屈ませ、そのままゆっくりと唇を動かし何かを口にした瞬間、今まさに戦うアズミに向かってまるで地面を蹴飛ばしたかのように突き進む。














「四季装甲……『冬』」


アズミの目の前で力を発揮した藪笠。
瞳の色は変色しそれが力を出している証拠でもあった。
だが、その色は今までの冬とは違う、何者も触ることができない神聖な雰囲気を纏わせた純粋な一心を宿した瞳をしている。
そして、同時に普段から漂わせていた大人びた空気がまるで違う。
それはまさに純粋な信念を持つ少年といった空気。


「がッ、ああたっ!」


アズミとの間で突如として現れた藪笠の何かしらの力に吹き飛ばされた倒れていたケンが呻き声を上げながら起き上がる。
地面に何回もバウンドし壁に激突した体からは所々に傷が見え血が滲んでいる。
ビキリ、と額に青筋が浮かぶ。
ケンの標的が完璧に藪笠芥木に変わった。


「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


怒り狂ったケンの咆哮ともとれる叫び声がその場一体に響き渡る。
歯を噛み締め、藪笠を睨み付けるケンは両手を地面に叩きつけると同時に体を低く屈ませ獣のように体勢を変えた。
それは、そのまま一気に走り出し藪笠を殺すための準備。
ケンは唸り声を歯の隙間から聞こえる。


そして、それがスタートの合図だったかのように、ケンは地面を蹴飛ばし走り出した。
移動の速さが藪笠との距離を詰めていくうちに加速していく。
それはまさにその巨体からでは想像できない速さだ。


「………………」


藪笠は迫りくるケンに対し全く動揺しない。
その瞳は確かにケンを捕えていたが、同時に憐れみとも取れる瞳をしていた。
藪笠はゆっくりとした動きで右手をかざす。


そして、そのまま呟くように口にした。


「雪調・氷」
「ッあが!?」


瞬間。
もう少しといったその時にケンの体が藪笠に突如停止した。
それはまるでさっきまでの宙に浮く藪笠と同じようにだ。進むことも、引くこともできない。
全身が凍ったかのようにケンの体は硬直してしまっている。


「ケン」


体の自由がきかないことに唸り声を放つ、そんなケンに藪笠は静かな足取りで足を動かす。
それは一歩、また一歩と。


「…お前がどんな事を思ってアズミを逃がしたのか、それは多分俺には分からない。危険とわかりながらも大切なアズミを守るために進んだ勇気も、そこにどれだけの恐怖があったかも、俺には理解できないと思う。だけど、お前が望んだことはわかる。アズミ一人を逃がしてそのまま平和に暮らして代わりに自分はいなくなろうとしたことは」
「がっああ、ああ!!」
「確かに、それがお前が出した答えなのかもしれない。それが正しかったかもしれない。だけど、お前がどれだけ納得した答えだったとしても」


自分を変わりに何かを守る。
どこにでも通用する答え。全部が不定できなことはわかっている。仕方がない場面もあるかもしれない。


「その答えの先には…………悲しみしか残らない」


しかし、それがどれだけ正論だったとしても。
絶対的な事実はかわらない。
だからこそ、藪笠は伝える。


「大切に思う人も、思われる人も。その答えじゃどっちかが悲しみを背負う。そんなのがお前の望んだことなのか? 幸せを願ったアズミがお前がいなくなったことに泣き続けることが、本当にお前が望んだことなのか?」
「が、あぁ…ぁ」
「……違うだろ。お前が本当に望んだのはアズミと一緒にいることだったはずだ。何があろうとも側で守り続けていたかったことだろ。だったら! 俺とは違うお前はアイツの側にいてやらなくちゃならない大切な存在だ!!」


ダン! と。
藪笠はケンの目の前で足を止め、そのまま右手をかざす。
干渉の力。
全てを拒絶することは消すことだけではない。
何かをないことにするのでもない。
干渉を拒絶する。
それは正しきルートを通れば。


「だから、帰ってこい」


全てを干渉し全て拒絶する力は、助け出すための『救い』を生み出す。






「大切なモノをもう一度自分の手で守るために! 二度と離さないために! アズミの側に帰ってきやがれ!!」






瞬間。
眩い光がその場を包み込み、同時にケンの体はその光に包み込まれる。
暗い室内だった世界を救う。
淡き雪が全ての闇を浄化する。


やがて眩い光が治まり、視界が見えてくる。
そして、そこにある結果。


小さな唇が動く。








「ケン………くん…」




涙を次々と零れ落ちる。
アズミはその目の前にある、藪笠に抱えられた一人の少年を見つめる。
その姿は巨大な姿ではない。顔に鱗もない。
胸の中でいつも支えていてくれた少年。


ケンがいる。


「っ、ケンくん!!」


アズミは叫びながら駆け出しケンを抱える藪笠のもとに走り出す。
その心には本当の意味での希望が輝いていた。


本当に……あの時、諦めなくてよかった。


アズミの顔には、涙ぐんだ笑顔がそこにあった。












「ば、馬鹿な!!」




突如。
怒鳴り声を放ち後退る佐江。
その顔は驚愕に満ち、目の前で起きた現象に目を見開かせている。
確かに、藪笠芥木の異様な変化には驚かされた。が、それ以上に起きた変化にその心は動揺を露にする。




「……細胞は完璧に結合していた。肉体も変化していた。遺伝子も、血液も、脳も! 何もかもが新しく作りかえられていた! なのに、それは何だ、何をした!!!」


ケンの体は間違いなくもう後戻りができない状態だった。
だが、それが四季装甲。いや、藪笠芥木の手により元の状態に戻された。
まるで、今までの自分の成果がとても小さな物だと言われている気分がした。
そして、さらに納得ができない。


どう考えても説明ができない!


佐江は怒りに満ちた瞳でA2と共にいる藪笠を睨み、そこで起きた現象を思い出す。
四季装甲の変化。
未知の光。
そして、元の正常な姿へと帰ったケン。


何が起きた。どこからそんな事実が生まれる。


佐江は脳を意識し、さらにより鮮明に記憶を辿る。
そこでやっと見つけた。


「あ?」




記憶があの時のことを思い出させる。
A2が巨体となったA3に拳を落とそうとした時。
そこに突如として現れた藪笠が口を動かし言った言葉。
そう、それは。




「……干渉……雪羅」




『干渉』


全てを物を説明することができる、実際には言葉だが。
この世にある物、すべてに適用される。


「まさか、………A2の全てを干渉し……拒絶したのか……!?」


佐江は愕然とした表情で藪笠を見つめる。
瞳の色を変色させ、アズミとケンの姿に口元を緩める。その姿を。






ははは、………。


















「はははははははは…………はっははははははははははははははははっ!!」






直後、高らかな笑い声を放つ佐江。
藪笠は視線を動かし睨みを放つ。


「ははは、そういうことか………まさか、貴様がそうなのか!!」


不気味な笑い声と共に出る言葉。
藪笠はケンをアズミに預け、体を振り向かせ眉を潜める。
だが、その時だった。


「………?」


藪笠は未だ意味の分からないことを口にする佐江の背後に微かな透明さだが何かが浮いている物に気づく。
目を凝らすとそれは妙な文字が記された石版。正確な四角形ではない、壁にあったものを削り取ったような物だ。
だが、何故だか、その石版から嫌な違和感を感じる。
藪笠はその宙に浮く石版に警戒を強めた。
と、そこに一歩踏み出し通り過ぎながら現われる。


「あれが俺の探していた物だ」


黒の刀と白の刀。
二刀を手に持つ風霧 新が笑みを浮かべながら藪笠に口元を緩めた。


「…アンタは」
「ほぉ、上手くいったみたいだな」


風霧は藪笠の瞳を確認して笑みを浮かべる。
対して藪笠は目の前に立つ風霧の異様な瞳に目を細めた。
それがどういうわけか自身と同一の物に感じてならなかった。


「リーナ」


風霧は後ろにいるリーナの名を呼び振り返る。
その直後に一振り黒の刀を振り上げた瞬間、初めに閉じ込められた壁が木端微塵に消し飛んだ。


「っなぁ!?」
「コイツらのこと、後は任せたぞ」
「ななっ、なにを言って! って、まさか貴様!?」


リーナはその言葉の真意に気づき、止めようと声を出そうとした。
だが、その時。
トン、と。
風霧の隣に藪笠が足を踏み出す。


「おいおい、こっからは俺の領分だぞ?」
「知るか、アイツには聞かないといけないことがまだある」


げんなりとする風霧。
傍ら、藪笠はそう言いながら後ろにいるリーナに振り返る。


「リーナ。アズミとケンのこと」
「ッき、貴様まで!」
「頼む」
「っ!?」


今まで話してきた中で、真剣な言葉を向けられたのは初めてだ。
大人びた雰囲気を漂わせていた藪笠の姿が真の姿だと今まで思っていた。
だが、どうやらそれは間違いだった。


目の前で、純粋な心を持つ少年。
今の彼が本当の藪笠芥木なのだ。




「…………藪笠、帰ってくるんだろうな」
「ああ、絶対だ」


確信ともいえる返事。
リーナは口元を紡ぎながらケンを背負うアズミを連れ出口へと走り去っていく。
青春だねー、と呆れた表情を見せる風霧。だが、藪笠は全くとして相手にしない。
二人は一息吐き、同時に目の前に立つ佐江に視線を向ける。


「くっ………」


驚異てきな重圧。
佐江は滲み出た汗を袖で拭い、歯を噛み締めながらポケットからリモコンを取り出しボタンを押した。
そして、その直後に今までふさがっていた壁がシェルターのように開きそこから数々の実験された動物たちが姿を現す。


その数は約三十体。


「さてさて、どうする四季装甲」
「……アンタはどうするんだ」
「知らねえ。勝手に入ってきたんだから面倒なことはお前に任す」


どこか拗ねているような言葉。
藪笠は小さな溜め息をつき、ゆっくりと辺りを見渡す。
そして、一言。


「………二連季で決めるか」


直後、その場一体に異変が起きた。
その一言がまるで余波かのように空気が震えだす。




「四季装甲、二連季」




藪笠は大きく息を吸い、力を出す瞬間を合わせる。
今までの四季装甲ならこんな面倒なことはしなくて済んだ。
だが、今までと違う『冬』の力を混ぜ合わすことには慎重な調整が必要だった。
干渉と混ぜ合わせる力。




自身の中でより多く使っていた力。




その力を完璧に発揮する。
迫りくる敵を認識しつつ、完全とした状態で扱う。








そして、必要な呼び名を入れ替え藪笠は言った。










『雪咲桜陣』










直後、その場一体に強風が吹き上がる。
一帯に干渉しつつ循環の力が加わったのだ。


「おお、すげえな」


実験動物たちが次々と押し戻される。その中で一番近くにいる風霧だけ全くその力の影響を受けない。
藪笠は眉を寄せつつ、その疑問を頭から隅に置き視線を目の前に向けた。
そして、次にすることを口にする。


「一瞬で終わらす。だから」
「心配無用、大体検討はついてるから」


言い終わるのを待たず風霧は手で制しする。
どうやってか藪笠の次の行動を読んだようだ。
全くとして掴み所がわからない男に対し、藪笠は呆れつつも口元を緩めた。




藪笠は右拳を胸の前で固く握りしめ、それと同時に風霧は真上に向かって高く跳躍する。
普通の人間ではありえない、高く天井に届くまで。
そして、迫ってくる敵に対し藪笠は桜と雪の混ぜ合わせた瞳を向け、


「飛び散れ」


ドゴッ!!! と、次の瞬間に藪笠は右拳を地面に向けて力強く降り下ろし、衝撃と共に放つ。




「陣・桜振天雪」


それは、まるで地響きが起きたかのように一瞬地面が揺れた。その直後、今まで向かってきていた敵が突如として一斉に停止し、そして次々と実験動物たちが倒れ始める。
白目を向き、口を開かせた状態での気絶。
藪笠が使った『陣・桜振天雪』はその場一体を干渉し、同時に春の力を地面から敵全てに循環させ内部から衝撃を与えたのだ。
これなら攻撃範囲はある程度絞られるが、確実に衝撃を与えられる。


「な、なん」


僅かの差で回避できた佐江はその光景に後ずさりながら顔を歪める。
それに憑くように石版も後ろに移動しようとしていた。
だが、その瞬間を風霧は見逃さない。




「さて、一気に決めるぜ。レイシー……『スナイパー』」




独り言のように呟く。
その直後、風霧の腰後ろから漆黒のスライムのような物が現れる。
そして、風霧の全身を包みこみ、その姿はスライムから黒のコートとして変化した。
だが変化はまだあった。
コート後ろから三本の尾が生えたと同時に落下していた風霧の体はそこで落ちることなく宙を浮く。
更に襟から黒のスコープのような物が伸びだし風霧の顔前に設置された。


風霧は二刀の刀を目の前で混じり合わせ、それは原型を変え黒と白のライフルが重なりあったロングライフルに姿を変え、それを両手で持ち構え、照準を合わせた。
狙うは佐江。ではなくその背後に浮かぶ石板。


「…吹っ飛べ」


次の瞬間。
黒白のレーザーが一直線に撃たれた。


スコープは石版の中心部を捕えている。
狙いは完璧。
これで全てが終わる。














はずだった。










シュッ、と。
危機を察知したかのように石版を瞬時に佐江の背後に身を隠す。
そして、さらにその次の瞬間。


「ッあ!? あががああがえあああああああああああああああああああ!!」
「っ、まずッ!」
「!?」


佐江の悲鳴。
風霧の雰囲気から藪笠は佐江に顔を振り向かせた。
そこには、




「あが、あやまえ、やめろ…やめてくれれれれrwざあれええああ!!!!!」




醜く体を大きく膨張させ、皮膚は紫色へと変色する人間とかけ離れた存在へと変わる佐江の姿。。
藪笠は直ぐにそれがケンと同じ状態であると気づき、足に力を籠め走り出そうとした。
だが、


「無駄だ」
「!」


上空から降りてきた風霧が藪笠を制止する。


「…何で無駄だとわかる」
「……ありゃ、干渉しても手遅れだ。もう体全部が石版に食われてやがる」


風霧の確信めいた言葉に目を鋭くさせる藪笠。
だが、その瞬間に二つの蛇のような物が藪笠たちを襲いかかる。


「「!?」」


間一髪、同時に後方に飛びその攻撃を回避した。
藪笠は顔を上げ、その先にいたのは本当の意味での存在を目にする。




「………………………あ。あgはあが」


人間の原型、動物の原型すら留めていない。
醜い紫の肉塊から無数の触手を生やす、本当の化け物。
風霧は舌打ちと共にロングライフルからレーザーを放つ。
だがその攻撃は本体に直撃する前に触手により塞がれ、同時に触手が再び新たな場所から現われる。




「……おい、本当に先に逃げろ」


これでは埒があかない。
風霧はライフルを再び二刀の刀に戻し、藪笠にここから離れろと告げようとした。
だが、








「………時間を稼いでくれ」








その忠告を藪笠は断った。
風霧は眉を寄せ、鋭くした瞳を殺気とともに向けようと振り返った。
しかし、そこには。


「!?」


瞳の色を戻し、静かに呼吸を整える藪笠の姿。
その眼に宿るは『絶対に勝てる』といった意志。
風霧はそんな藪笠の姿にただ茫然と見続け、それから深く溜め息を零した。


「はぁー………、全く似てるんだか似てないんだか」


頭をかきながら風霧は腰に片手をつけ、化け物を見やる。


「ちゃんと仕留めろよ」
「ああ」
「…………まぁ、ここはお前の世界だし、俺が手を出すのもおかしいんだけどな。…………はぁ」


風霧は言い訳のように口をすぼめながら刀を大きく振り上げ、藪笠は口元を小さく緩めながら口からより多くの空気を取り込む。
こちらに攻撃を仕向けようと大きな肉塊が動きだし、触手のような物が迫りつつある。
次の瞬間。二人の力は同時に放たれる。




「混合式・連鎖風蝶」
「四季装甲、春」




風霧から振り下ろされた刀、その衝撃とともに無数の黒蝶が飛び立つ。
対して、藪笠の周囲から一瞬と風圧がはじけ飛ぶ。


化け物と変わり果てた佐江に無数の黒蝶に襲いかかり、触手も切られては再生と同じことを何度も繰り返す。
だが、黒蝶の動きは止まらない。
その勢いは巨大で、それで決着がつくかと思われた。だが、




「があまあああああああああまあああああああ!!」




奇声とともに、超速再生が始まる。
無数の黒蝶が切り裂く、そのたびに触手がより多く無数に生まれ本体の体を守ろう網状の壁を作る。
一方、藪笠はそんな光景を静かに見つめ、同時にここに来てからのことを思い出していた。




島で実験体とされていたケンとアズミに出会った。


山とカモフラージュされていた実験場である実験記録が書き記されていた書類を見つけた。


ケンが怪物と化し、同時にアズミは驚異の変身を遂げた。


そして、二刀の刀を持つ男と出会い、藪笠綾美と出会えた。






それが幸運かどうか、そんなことわからない。






だが、今この場にいる自分にとって。






「……お前がどんな化け物になろうが関係ない。俺がここに来た時、初めに言ったはずだ」




ケンとアズミ。
あの二人の全てを弄んだ、お前だけは許さない。
自分の物のように口にする言葉も。
実験のため、無関係なケンとアズミを巻き込んだことも。




そして、人の命を簡単に踏みつぶそうとしたことも。




だからこそ、藪笠は言う。
その怒りを全てぶつけるために。




「『全身の骨をへし折ってその口を開かなくさせてやる』ってな」




<a href="//1659.mitemin.net/i78040/" target="_blank"><img src="//1659.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i78040/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


その瞬間。
藪笠の体に異変が起きた。
前髪から徐々にと黒から桜へと変色していく。
それはアズミが見せた変化と同じ。


いや、それ以上の力が藪笠を変えていく。






今まで使うに使えなかった。
頭の中でイメージができなかった。だが、ここでアズミの姿を見て確信した。




これが四季装甲の春、奥底に眠っていた真の力だと。






『春月・綾』




月光のように桜色の光がそこに君臨する。
藪笠の体は桜色に輝き、その瞬間に一気に地面を蹴飛ばし走り出す。


肉塊はその異様な光を捕え無数の触手が迫ろうとする。
だが、その光は止まない。
攻撃が迫る、その攻撃はまるで空を切ったかのように一向に当たらない。


それは『循環』の力。


力と力が接触した時、わずかだがそこに力により生み出された無の空間ができる。そして、その無の空間に触手は循環され送り出される。
つまり、それは受け流す力。




冬が全ての干渉を司るなら、春は循環の支配を司る。




無傷の状態で肉塊の目の前に立った藪笠は今度は渾身の力を体に纏わせる。
受け流す支配を今度は注ぎ込む力に変える。
それは強大な春の力を全て叩き込む乱撃。




「終わりだ」
「があべ!?」


純度の桜色をした瞳が一気に見開き、そして放たれる。




「乱撃桜華!!!」




ドドドドドドッ!!! 
循環の全乱撃。
振り上げた拳から連続とした力が加わり、その大きな巨体はより上空に跳ぶ。
そして、それを追いかけるように跳躍しさらに本体に連続の攻撃を叩き込む。
一撃一撃の力に全ての連撃を与える。


藪笠は最後の一撃を肉塊の真上から叩き落とす。
一直線に地面に落ちた肉塊。
強烈な破壊がその場に広がり続ける。


「あ、が、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


ダメージの許容を超えた。
行動を停止させた肉塊から破り出るように石版が飛び出し、同時に肉がバラバラに砕け散りそこに上半身しかない、佐江の姿が現れる。
石版はそんな佐江に見向きもしない。
だが、その時。


「逃がすかよ」


石版が上空に逃げた。
風霧は白刀を強く握りしめ、同時に口にする


「荒神流、気式……………神気」


ザン!!!!!
下から振り上げた刀。
その瞬間、白い斬撃が石版を消し飛ばし、同時に天井を切り裂く。












そして、その瞬間。
この島での戦いが終わりを告げた。














タッ、と。
地面に着地した藪笠はそのままゆっくりとした歩きで上半身だけの佐江のもとに歩み寄る。


「……はは……まさか、実験物に逆に実験されると…は」
「…………………」


佐江の下半身はすでになく、上半身の切れ目は紫色の肉塊に浸食されていた。
そして、すでにこの体はもう…。


「四季装甲………貴様が、知りたい、こと」


佐江はそんな藪笠に対し、ゆっくりとした動きで口を動かし続ける。
そして、その口は言った。






「黒の結晶は………すでに、使われて……いる」






藪笠の瞳が見開き、同時に予測できていたような顔色を見せる。
佐江は皮肉といったような笑みを向け、最後の言葉のように口を動かし続けた。


「貴様の顔、そ…その、顔が、絶望にいくさま……………楽しみで、ならん……な」


ボロッ、と。
佐江の体が一瞬にして化石に変わり、直後に砂となって消えていく。
藪笠はその光景を静かに見つめ、そのままゆっくりと口を開き言った。








「……必ず見つけ出してやる」






小さな風がその砂溜りを吹き飛ばし、上空に四散する。
藪笠は顔を伏せ、戦いが終わったことに静かに息を吐くのだった。





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