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季節高校生

goro

思いは一つ 3

頭上から落とされる二つの衝撃波。 
ギロチンのように振り下ろされたソレは、今まさにアズミを殺そうとする巨大な怪物の両爪を躊躇なく切り落とした。
鮮血が飛び、悶え苦しむ怪物。
その目の前に着地したのは一人の青年。
黒と白、見たことのない異様な刀を持ちその場の空気を一瞬で吹き飛ばす力を持つ男。


風霧 新。






「き、貴様………」


苦痛から目の前で暴れまわる怪物。
その光景に驚愕と動揺を抱きつつ佐江は風霧の登場に表情を歪ませる。
一方、そんな暴れまわる怪物を目の前にしているにも関わらず平然と片手に持つ白刀を元のアクセサリー形態に戻し腰に掛ける風霧は一息吐きながら後ろにいるリーナに振り返ると、


「大丈夫か、リーナお嬢様」
「っな!?」


お子様に話しかけているかのような言葉づかい。
リーナは直ぐ様その事に対し言い返そうとした。
だが、そこで言葉が止まった。


それは、目が離せなかったと言ってもいい。
リーナの瞳は一点。
武器や雰囲気などではない。
驚愕とした表情で見た、その一点は風霧のゆくりとした動きで見開かれた二つの瞳。


その色は白く、かと言えば輝いても見える。薄色の鮮やかな色が混ざり合い、そして白っぽく見える。まるで別次元の存在だと言っているかのような瞳をしていた。


だが、リーナにとってそれ以上に驚くことがあった。
それは、その風霧から感じる存在感。


瓜二つのように、まさに一人の少年。






藪笠芥木と同一に感じたのだ。






(ど、どういう………ことだ?)


まるでそこに藪笠がいるかのような……。
リーナは茫然とした表情で、風霧に対し声を出そうとした。
その直後。




「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」




大音量の悲鳴。
リーナは両耳を抑え、一方の風霧は冷めた表情で後ろに振り返る、そこには。
ドドドドドドドドドドオ!! と、音を立て、両爪を切られた怪物が怒りの矛先が風霧に向け突進を始めたのだ。
そのスピードは車が走っているかのように速く、普通の人間では止める事は不可能に近い。
リーナは逃げ道がないことに舌打ちする。
だが、その目の前いでは、


「はぁ…………」


風霧が心底呆れたように溜め息を吐いた。
危機的な状況でもあるにも関わらず、まるでその状況に慣れているかのように風霧は片手に残った黒刀を正面に構え膝を落とし深くより多く空気を吸い込んだ。
そして、口を動かし言った。


「荒神流、攻式……………奥儀」


奥儀。
その言葉が出た直後、風霧を中心に殺気が吹き出す。
それは離れた位置にいるリーナでさえ体を震え上がらせるほどの殺気。
だが、目の前の怪物は怒りに我を忘れているのかスピードを落とそうとはしない。


風霧は集中するかのように瞳を細め、黒刀の柄を握り締め、待つ。
迫りくる怪物の距離。
それが間合いに入った、その同時に動く。
瞬間に体を右側にひねり上げ、そこから左右を切り刻むかのように構えから一気に解き放つ一撃。






「双黒羽」




ザンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!


瞬間、世界が止まったかに思えた。
風霧が振り放った二撃。


吹き飛ばされた怪物の体から吹き出る二つの血飛沫に似た黒羽はまさに奥義から繰り出された斬撃。
その巨大な怪物の体は後方に飛びそのまま今まさに壁に崩れ落ちる藪笠の傍にいたケンを共に含め吹き飛ばし壁に激突する。
ドォン!! と巨大な音が響き渡る。
至近距離から斬撃を受けた巨大サソリの怪物、その体は真っ二つに切り裂かれその体から吹き出ていた二つの羽は直ぐ側にいたケンの体をそのまま切り裂こうとする。
だが、瞬時に危険を感じ取ったケンは頭上に跳び上がり、微かに切り裂かれ血が吹き出したが重傷に至っていなかった。
表面の皮膚だけが斬れたのだ。


「チッ…………」


風霧は舌打ちを吐きながら、もう片方の手で腰に納めた白のアクセサリーを掴み取りながら走り出そうとした。
だか、その時。


ガシッ、と風霧のズボンを掴む小さな手。
殺気を纏わせつつあった風霧の動きが止まる。
風霧はゆっくりと後ろに振り返る。
そこにいたのは、


「……………………」


震える体を無理やり動かし、目に涙を溜める一人の少女、アズミだ。
うまく頭が働かず、目の前の風霧に何を言えばいいかわからない。
だが、一つの事だけが理解できていた。


このままでは、ケンは絶対に殺される。


「……………………………………お前」
「ッ!」


風霧の一言に体をビクリと震わせるアズミ。
しかし、一方の風霧はそれよりもある一つの物に目を奪われていた。


ソレは、アズミの手にある刺青。
桜の花びらを連想させる小さな印だ。


風霧は視線をアズミに移す。
そして、大切な物を守りたい、と訴える眼を見つめた風霧は言った。




「…………アイツを助けたいか?」




えっ…………、とアズミの眼が見開き同時に何を言われたか理解できない。
しかし、風霧は口元を緩ませながら話を続ける。


「正直、何も解決しないまま簡単にこの世から消すのは俺としては気が進まないんだ。……でも、今ならまだ間に合う。……………お前が力を貸してくれるなら」


まるで問いかけるようにアズミを見つめる風霧。


アズミは、そこでやっと言葉の意味を理解した。
可能性がある事を言われている。助けることができると言われている。そして、…………………絶望しなくてもいいと言われている。


「…………………………………」


しかし、アズミはそこで気づく。
それは、


「………私だって……助け……たい」
「?」


アズミは小さな手を握り締め、風霧に心の内を言う。


「私だって助けたい。 でも、私には力がない。ケンくんみたいな力も、……お兄ちゃんみたいな力も!」


無力。
あの時、藪笠に助けてもらった時から、今まで持っていた驚異的な身体能力。
当たり前だと思っていた力が出せなくなった。
発作はなくなった。だが、それと同時にまるで普通の人間みたいにアズミの体は戻ったのだ。




「助けたい。ケンくんも、お兄ちゃんも、助けたいのに!! 」


何もできない悔しさ。
歯を噛み締めながら涙を流し続けるアズミ。
地面に涙が落ち続ける。






だが、対し風霧は静かな動きで手を動かし、ポン、とアズミの頭に手を乗せる。


「………力ならあるだろ」
「……え?」
「大切な人を助けたい。絶対に守りたい。何が何でも救いたい。他にも色々な事で人は歩き出し、前にも進める。思いが一つになれば、大切な人のために人は力を出すことができる」
「…………………………」
「俺はその事を知っている。何度も見てきた。不可能な場面でも大切な人を守り通した奴を。大勢の人を守り通した奴を。…………いつだって人は、その力で前に突き進めることができる」


風霧はアズミの頭から手を離し、そっとその小さな手を握る。


「四季装甲がお前に付けたこれも、それと同じ力だ」


そして、その瞬間。
風霧の瞳がより強く純度を増し、


「お前が本当にアイツを助けたいと願い思えば。…………絶対に、その力は答えてくれる。だからもう一度聞くぞ。………お前は、アイツを助けたいか?」


その色は白く神秘的な光を放つ色。
アズミはその瞳からの問いかけに、静かに目を閉じ、そして思い願う。




自分はどうしたいかと。




彼をどう思っているのかと。




時間は掛からなかった。
答えはもう既に握っているのだから。






アズミの瞳がそっと開かれる。
そして、少女は言った。


「私は、ケンくんを助けたい!」


直後。
アズミの瞳が純粋な…………桜色へと変化する。












「A3! いつまで寝ているつもりだ! 早く四季装甲を捕まえろ!」


風霧がアズミに話しかける中、佐江は焦っていた。
あの男、確かにあの部屋で抑え込んでいたはずなのに。
自身の実験体たちを使い、殺したと思っていた。


なのに、何故生きている!?




佐江の指示に従い、ケンが俊敏な動きで壁際に倒れる藪笠に迫ろうとした。
だが、その時。






「ケンくん」






ふわり、と長い髪が靡き、同時にケンの体が後方に蹴り飛ばされ壁に激突する。
驚愕の表情を露にする佐江は、視線を前に向け、そして見た。


藪笠の直ぐ側。
二本の足で立ち、桜色の瞳を向ける。
桜色に変色した髪を靡かせた一人の少女。


A2、と呼ばれていた。
アズミだ。




「ア……ズミ………」




アズミの後方から、微かな声が聞こえる。
振り返ると、そこには地面に倒れる藪笠が力を振り絞り立ち上がろうとしていた。
アズミは藪笠が無事であったことに、小さく口元を緩める。
そして、


「大丈夫だよ」


そう言ってアズミは走り出した。
ケンを止めるために、そして、助けるために。


(くっそ!!)


ギリィ、と歯を噛み締める藪笠。
絶望にまで行ったアズミが今まさに立ち上がった中、自分は何をやっているのか。




何もできない。
その後に待つのが何か、そんなことわかっているはずなのに!


「が、ぁ…………アア!」


藪笠は震える足に力を入れ起き上がろうとする。
たとえ、骨が折れていようとも。たとえ、血が足りなくとも。




あの時の二の舞だけは、絶対にもう二度と味わいたくない!!




「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


ダン! と、声は吐き出し立ち上がる。
だが、その次の瞬間。




『ドクン!!!!』




全身を響かせる衝撃。


「ッ!?」


目を見開いた状態で、藪笠は前に倒れ落ちる。
だが、そこで固い何かに受け止められる。


「!?」
「……いくら何でもおかしいだろ。体に痛みがあるにしても、立てないほどの怪我はおってないはずだろ?」


藪笠はその声に視線を上げた。
そこには、数秒前までアズミと話していたはずの風霧 新の姿がそこにある。


「あ、アンタ……は」
「悪いが自己紹介は後にしてくれ。一応はあの子の力を行き渡らせてみたが、もっても数分しかないだろうし、それ以前にお前の中途半端な力を完全にしないといけないからな」
「…………か、完全?」


その言葉に藪笠は風霧が何を言っているのか理解ができなかった。
いやそれ以前に考えることがまったくできない。
今にも、ボロボロに倒れ落ちそうな藪笠に風霧は深い溜め息を吐く。
そして、何も持たない手を使い。




ドン、と。
藪笠の体を後ろに突き飛ばした。






「ッ!?」
「特別サービスだ。……後悔したくないんだったら、さっさと元から持ってた力を呼び覚ましてこい」






風霧のその言葉。それが耳に届いた。
その瞬間。
藪笠の視界は一瞬のうちに漆黒に染まる。











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