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季節高校生

goro

思いは一つ 2

その場一体に爆発の余波が飛ぶ。
リーナはアズミを抱きかかえ、飛び交う瓦礫から少女の身を守ろうとした。
爆発の勢いはその場に設置されていた機械を破壊し、中身の部品やパーツは半壊しながら吹き飛ばされて行く。
辺りに飛び散る物の中にはヒビと共に大きく割れた培養器のガラスがあった。
そして、その凶器と化した破片の一つがリーナの丸腰となった背中を貫こうとした。
回避はできない、はずだった。


直後。
一直線の進んでいた破片がリーナとの差が数センチとなった突如、そこで停止したのだ。
そしてその同時にリーナの体に襲う。


「!………………」


体がこの世から強引に離されたような違和感。
リーナはその違和感に覚えがあった。
それはこの島に足を踏み入れた時、突如飛んできた岩石に対し藪笠に体を抱き寄せられ、その直後に感じた物と同じ感覚。


「や……藪笠…」


リーナは目を見開き、ゆっくりと顔を動かす。
爆発の影響で舞う土煙。その中心に立つ一人の少年。
無数の爆発に赤いコートを黒く染め、頬には微かに火傷のような跡も見える。
藪笠芥木。
瞳を白く変色させた少年は荒い息を吐きながら土煙で見えない前方を睨みつける。


「ほぉ……そんなことまで出来るのか」


徐々に静寂となって行く室内で佐江の声が響く。
藪笠は姿の見えない佐江に対し拳に力を込める。
あの強大な爆発は、どれだけ距離があったとしても余波は来る。冬の力でリーナたちへの接触は防いだ。その地点まで被害が及んだとすれば必ず佐江自身もただではすまないはずだ。
そう、普通なら。


「……やはり、その力は人知を超えているようだな」


ズン、と。
土煙が晴れていく中、佐江の姿が見えて来る。そして、その側に現る二つの影。
一体は、生物の生態をいじったような六本足のサソリを連想させる怪物。
培養器の中身を知っている分、冷静でいられた。


だが、もう一体。
普通の人影ではなく、それはまさに巨人と言えるその怪物を見た瞬間。
藪笠の瞳は一瞬にして桜色に変わった。
そして、




「え…………………」






ボトッ、と後方にいたアズミが膝をついた。
顔色が真っ青になり、人形が崩れたように地に腰が落ちる。
側にいたリーナの顔色も徐々に蒼くなり、その光景に驚愕の表情を浮かべていた。
体が震える中、藪笠はその巨人とも呼べる怪物に対し口を動かす。




「…………け……ケン……」




ケン。
アズミを逃がし、一人敵地へと向かった少年。
その体は強引に筋力を改造したため、白く変色し同時に無数の血管の筋が浮き出ている。両腕両足には獣のような手足が埋め込まれ、ケンとわかる表情は白い。瞳も白目を剥いている。


「ああ、A3のことか」


佐江は口元を緩めせながら、心底つまらなそうに溜め息を吐く。


「なに、裏切りものに対して罰を当てえただけさ。まぁ、A3自身。そんなことすら考える知識はないだろうが」
「ッ……」 


その伝えられた言葉に対し、アズミは口に手で覆い瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
希望としてあった物が一言で打ち砕かれたのだ。
絶望が、アズミを心の奥底から覆い尽くそうとする。




瞬間。




藪笠の瞳がさらに純度を増した桜色へと変わる。


「!!」


バン!
藪笠は地面を蹴飛ばし、佐江の目の前に移動し拳を放とうとする。
だが、瞬間にその攻撃を白い腕が防ぐ。
それは、巨人と化したケンの腕だった。


「ッ!」


歯を噛み締めながら後方に跳ぶ藪笠。
だが、その直後。


「ッ!?!」


ガクッ! と感覚がまるで揺さぶられ、その直ぐ後に強烈な痛覚が襲う。
着地した藪笠はそれが自分の腹部に走っていることを自覚する。
口内から鉄のような味がする中、視線を腹部に動かす。
そこには白い膝が的確に腹に叩きこまれていた。
ぐらり、と藪笠の動きが鈍る。しかし、攻撃は止みはしない。巨人となったケンは真横から拳を藪笠の体に向けてたたき込み、その小さな体は弾丸のように吹き飛び壁に激しく激突する。


「がッ……………!」
「藪笠!」


リーナが叫び声を上げながら走り出そうとした。
だが、その目の前に巨大な影がその道を塞ぎ、地面に激しく落ちる。
吹き荒れる風に目を瞑るリーナは、ゆっくりと目を見開かせた。
そして、目の前に現れた巨大な影、生物改造で巨大化したサソリに歯を噛み締める。


「いい機会だから、話をしようかリーナ・サヴァリアン」
「 !?」


巨大サソリから離れた位置にいる佐江の言葉に目をむくリーナ。
藪笠との会話から、ある程度の情報を掴んでいるとは踏んではいた。
だが、しかし、


(私の名前まで、まさかコイツ……玲奈様や彼女たちのこともッ)


リーナの表情に口元を緩める佐江。
そのままその唇を動かし話し始める。


「四季装甲とよく行動しているようだが、君は知っているか?  今から一年前。何十人という仲間を連れた集団で表舞台からではなく裏舞台で行動を起こしていた四季装甲が何故、姿を消したのか」
「…………何が言いたい」
「おや、気にならないか? これほどの力を持つ。にも関わらずその地位を捨てたのは何故か? ………簡単な事だ。それは」


佐江は自慢話をするかのように言葉を続けようとした。
だが、その時。


トン、と。
巨大サソリの目の前に、ふらふらとした動きで立ち止まる。
少女、アズミ。


「A2か………邪魔だな」
「な、何をしている! 逃げろ、アズミ!」


リーナがどれだけ叫ぼうが、アズミの耳には届いていない。
アズミは震えた手を佐江に向かって伸ばし、泣き声とも取れる声で言った。




「返して……………………ケンくんを…………返して………ッ…」




佐江は大きな溜め息を吐く。
そして、そっけない言葉で次のように言った。


「うざい、死ね」
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


リーナは駆け出す。
だが、間に合わない。
巨大なサソリはその大きな爪を振り上げ、茫然と立ち尽くすアズミに振り下ろそうとした。誰もがその時、時間が止まった感覚に陥った。


駆け出すリーナ。
壁から崩れ落ちる藪笠。
そして、絶望に染めた瞳で迫りくる爪を見上げるアズミ。




その場が、混沌とした絶望に覆い包まれようとした。
その時。








「荒神流、攻式。静香・双流」








二つの流激波がその場を切り裂く。







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