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季節高校生

goro

思いは一つ 1



「…………病気が治ったら、俺と一緒に暮らさないか?」
「え?」


一人の少年が、引っ込み思案な少女に言った。
鱗のような痕を頬に持つ少年は顔を背けながら少女の返事を待つ。


「ごめん、なさい。今、何を言ったか……よく聞き取れなくて」
「あ、いや……悪い、何でもない」


少年は頭をかきながら話を終わらした。
少女も話を再開させようとはしなかった。


聴力は人並み外れたほど良かった。だから少年が言った言葉も聞き逃すことはなかった。
ただ、その時。
戸惑いから、答えられなかった。


両手首に獣の毛皮を持つ少女、アズミは……。




















藪笠は目の前に広がる敵に向かい走り出す。
自ら向かってくる敵に対し、実験体たちの動きは明白だった。
群れのうち、一体の狼が牙を向きながら藪笠に襲い掛かる。
その牙は獲物を食い破るほどに生え伸びていた。
藪笠は、向かってくる狼に対し自身足に力を意識させ一気に地面を蹴飛ばす。そして、距離が至近距離になった瞬間、


「春、桜舞」


ガッ!! と片足を軸に体を回転させ放った蹴りが狼の脇腹に突き刺さる。
悲鳴を上げた狼は強大な一撃を食らった状態で蹴り飛ばされ、体は側にある媒体器ケースを突き破りそのまま地面に崩れ落ちる。
そして、仲間の末路を見た無数の実験体たちがそれぞれ顔を見合せ、その直後にさっきまでの動きを変化させた。
バラバラだった配列が終結し、個体から集団へ。
群れとなった状態で、目の前にいる藪笠に向かって実験体たちは突進する。
爪や拳。
牙や尾。
生物たちは自身の武器を使い、藪笠の命を狩ろうとする。
群れは間近に迫り来る。


「………………」


対し、藪笠はその光景に静かに息を吐いた。
呆れたのではない。ましてや諦めたわけでもない。
ゆらり、と真横へ左腕を突き出し藪笠は口で、そっとを呟いた。




「二連季、風沈桜陣」




次の瞬間。
ドォォォォン!! と、巨大な何かが落ちたかのような音とともに、集団の群れとなっていた実験体たちの前方列が後方に吹き飛ばされた。
音の発生位置には地面が割れた跡と砂煙が立っている。
そして、そこにあるは人影。
莫大な力を込めた蹴りを前列から叩き込んだ、赤いコートを揺らさせる藪笠芥木。
赤紫色とも見れる瞳で離れた地点で高みの見物をする佐江を藪笠は睨み付ける。


「………………ほぉ」


佐江の口に笑みが浮かぶ。
その余裕の顔色に、ギリィと歯を噛み締める藪笠は、ふらりと体を揺らさせ、その場から一気に佐江に向かって駆け出した。


(叩き潰す)


だが、すぐ真横から狼の牙が向かってくる。
藪笠は体を後ろに反らし、懐に入ってきた狼目掛け空いた右膝を振り上げ顎に叩き込み、さらに瞬殺で意識をもぎ取った狼をそのまま振り上げた右膝で真横に吹き飛ばした。
直後、背後から迫る大猿を認識した藪笠は地につく片足に力を込め、頭上に飛び上がり、宙から無理やり体を捻らせ大きく振り上げた右拳を大猿の脳天目掛けて叩き落とし一瞬で沈めようとした。
だが、


「!?」




カチッ、という音が大猿の頭から聞こえたその直後。
ドォォォォォォン!! と、大猿の体は藪笠を巻き込んで爆発した。






「藪笠!」






リーナが声が上がる。
爆発に生じた煙が立つ。
煙が立つそこには、大猿の体はその場に一変の残っていない。ただ残っているのは爆発の威力の結果。その側にいればどうなるか明白だ。
リーナはいても立てず足を動かそうとした。だが、同時に突如煙がまるで何かに弾かれたように四散する。
そして、その中心で揺れる赤いコートがリーナの目に映った。


両腕をだらりと下ろす藪笠。
赤いコートには微かな焦げ跡が残っているが、外傷は見られない。
しかし、変化はあった。
藪笠の瞳、赤紫から薄桜にへと変わっている。
寸前の判断で四季装甲を風沈桜陣から咲雪桜陣に変えたのだ。
循環を高める静寂とは違う、干渉と循環を合わせ持つ力。
爆発という名の力の干渉を拒絶した。


だが、完全には防げなかった。


「ッ………」
「いやいや素晴らしい。素晴らしいよ、四季装甲」


肩から息を吐く藪笠に対し、佐江は口元を笑みにしながらその光景に感激の声を上げる。


「二連季、風沈桜陣からまた違う力への変化。まさか、あの瞬間に違う力に変えることができるとは、やはり私の見立てに狂いはなかったようだ」
「!」
「おや? 何か驚いているようだが別におかしいことじゃない。君が戦った二体の実験体。シクザラとかいう所に渡したアレもだが、君を監視するため頭にちょっとした細工をしていたのさ」


佐江の言葉、シクザラ。
あの廃工場で、笹鶴春香の両腕を噛み潰した生物。そして、もう一体は竜崎が対峙した生物。
その全てがここに繋がっていた。
たった一つの目的のために……。


「…………潰す」
「やれるものなら」


両目の色が純度を増す。
両目を見開き藪笠は地面を踏みしめ走り出す。対し佐江は口元を緩ませ、その口がゆっくりとした動きで開く。






「さて問題だ、四季装甲。……ここにいる実験体。何体が爆弾入りだと思う?」






その時。
カチッ、という音が藪笠の耳に届く。


さらに、カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ、と。


佐江はポケットから右手を出し、パチンと指を鳴らす。
直後、その場にいた全ての生物たちが、開始の合図かのように藪笠を囲み、






「正解は全部だ」






その瞬間。
巨大な爆発が藪笠を中心に包み込んだ。















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