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季節高校生

goro

実験生物

無数の黒蝶が溶け消え、そこには滝に打たれたように埋もれた怪物がグッタリと倒れた状態になっていた。
風霧は地面に着地し、白刀を納め息を吐く。
それに同調するように三本生えていた黒のコートが正常な原型のコートへと戻っていく。


「…………………」


風霧は倒れる怪物にそっと手を当てようとした。
だが頑丈な肉体だったはずの怪物の体が突如、石のように変色して砕け散り砂のように崩れていく。


肉体が石に変わる。


普通ならあり得ない現象だが、この怪物には普通という言葉は当てはまらない。
何故なら空想的な壁画を利用し作られた、この世界に存在しない生物なのだから……。


「………安らかに眠れ」


風霧は散り行く砂を見つめ静かに立ち上がる。
そして、通路を封じた壁に向かい手にする黒刀で一閃を振り下ろす。


瞬間。
ピシッ、と十字の線と共に壁は豆腐のように崩れ落ち、その奥には十数人の子供が潜んでいた。
その誰もが肉体に異様な痣や皮膚を持っている。


(…………ここがこういう場所って事は、コイツらは実験のモルモットってことか)


ギリィッ、と歯を噛み締める風霧。
緊迫とした中、黒刀を構え風霧は言った。






「悪いが時間を掛けるつもりはねぇ。…………この世界から消えたい奴は掛かってこい」






















赤いコート。
それにはある思い出があった。


「いいでしょ? 私が牙血お兄ちゃんに頼んで作ってもらったの。後、デザインは私の自信作だから!」


一人の少女。
夢は自分が考えた服をみんなに着てもらうこと。
そして、少女が初めて作ったものがその赤いコートだった。
















薄暗い、人一人が入れるか否かの排気口を通り、藪笠たちはアズミに続き一本の通路に出た。
天井と床との幅は今まで通ってきた通路とは違い、人が行きゆきするためだけに作られたのだろう。


「……こっち」


アズミが指差しながら足を進める。
後方からついてきていたリーナは周囲に漂う違和感に対し眉をひそめ、藪笠に尋ねる。


「藪笠、………何かおかしくないか?」


リーナが気にしているのは、ここまで来るに辺り何もなかったということ。
最初にあれだけの罠が仕掛けられていたにしてはあまりに不自然だからだ。


「ああ、多分罠だろうな」
「ッ! わかっているなら何故」
「逃げてても何も始まらねぇだろ」
「だ……だが」
「それに………時間がないことも確かだからな」


藪笠は目の前を歩くアズミを見つつ、昨日の出来事を思い出す。


アズミの内から起きた発作。
四季装甲の力で何とか出来たが、その症状は彼女に限って起きたことではないと藪笠は推測する。
本棚に囲まれた個室に散らばっていた研究データから、その発作はアズミ一人ではなく他にも特にケンにも同様の症状が出る確率が高いとみた。






時間を掛けることは、今の状況において絶望に繋がる。












通路を進み、一角を曲がったその先に、明かりがついた入り口を見つけた。
藪笠はアズミを後退させ、その部屋に先に足を踏み入れる。


「……………ここは」


そこは、まさに研究所とも言える巨大な部屋だった。


室内には多数作られた培養器の数々が置かれ、中には液体に浮く動物の姿がある。
狼や猿、巨大なトカゲと、研究機械が集結したような場所だ。
出口は今通ってきた通路と、それと対照の向かいにある通路の二つ。
藪笠は一歩、培養器に近づき視線を集中させた。
中に浮いているのは一匹の狼。外見から見て何も変化はない。
しかし、なら何のために培養器を使っているのか。


藪笠は手を差し向け、培養器のガラスに触れようとした。
その時だった。




「気に入ってもらえたかな、四季装甲」
「ッ!?」


バッ! と後方に跳ぶ藪笠。
静寂だった室内で放たれた声。


もうひとつの通路。
そこから現れた一人の白衣を着た男の声だ。
顎髭を伸ばし、片手はポケットに突っこんでいる。


「おや、その様子だとお気に召さなかったようですね」


敵意を持った視線。
藪笠は殺気を込めた瞳を向ける中、の口が凶悪な笑みへと変わる。
後方にいたリーナはその男の表情に対し、悪寒を感じた。体全身を舐められたような遺憾が彼女の体を震え足せる。
静寂の中、藪笠と男の視線が交差する。
その時、


「佐江おじさん」


藪笠の陰、そこに隠れていたアズミが震える体を動かし男の名前を口にする。


「ん? おお、よくやったA3」


男、佐江はアズミに気づき口元を緩ませる。


A3。


それがここで呼ばれていたアズミの名前なのだろう。
藪笠はその言い方に対し眉間を寄せ、瞳の色が桜色に変わる。


殺意。
まるで自分の物のように言う、その言い草に怒りを覚えた。


「お前らは下がってろ」


後ろにいるアズミを手で制し、自身の位置から遠ざけように言う藪笠。
だが、その言葉に対し佐江は首を傾げ、


「おや、それは一体」


その直後。


「どこに?」


ドン!
出口二つがシャッターが降りるように巨大な壁により塞がれた。


「ッ!?」


そして、佐江は手を広げ、


「さて、まずは四季装甲がどれほどの物か……………………実験と行こうか」


言葉がキーであるかのように培養器が一斉に割れ、そこから現れた一匹の狼が赤い瞳で一気に無防備のアズミに向かい牙を、




「春、鉤桜」




アズミに接近する。
その一瞬に藪笠は、狼のがら空きの腹部に一閃を叩き込みそのまま前方に吹き飛ばす。


「……………………」


未だに何が起きたか分からず目を見開かせながら驚くアズミ。
室内には培養器から出された実験生物たちが囲むように藪笠たち睨んでいる。


「…………話は後だ」


藪笠は大きく息を吐き出し前に足を踏み出す。
そして、実験動物たちの後ろで口元に余裕の笑みを浮かべる佐江に向かい藪笠は言った。






「…………全身の骨をへし折って、その減らず口を一生できなくしてやる」









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