話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

季節高校生

goro

逃走と侵入





冷たい空気が漂う。
鉄板に囲まれた狭い通路。
電気もない暗い中をアズミとケンは走っていた。


ガンガンガン!! と後ろから重い何かが走るような音が聞こえる。
アズミの手を引き、逃げ続けるケンは歯を噛み締める。
音が次第に強く、近づいていくのが聞き取れる。


(ここまでか……)


ケンは周囲を見回し、横壁下の通気孔を見つける。
蓋は嵌め込め式だった事で開けることに力を使わずにすんだ。


「アズミ、お前はここから逃げろ」
「え……」


恐怖と不安が混ざりあったような表情を浮かべるアズミ。
しかし、ケンは無言で通気孔の蓋を取り、アズミを逃がそうとする。


「早くしろ、アズミ」
「い、嫌だよ…ケンく」
「いいから早くしろ!! アイツの狙いはお前なんだ!!」


ガシッ!!
アズミの手を掴み、力任せに彼女を通気孔入口に押し込む。


「ッ! ケンくん!!」
「よく聞け、アズミ。…………四季装甲を見つけろ。それで、お前はこの島から逃げろ」


ケンは通気孔の蓋を嵌め直す。内側から開けられないことがケンにとって好都合だった。


「ケンくん!! ケンくん!!!!」


内側から拳を当て続け、泣き叫ぶアズミ。
対してケンは顔を伏せる。


(……ごめん、アズミ)


ケンは静かな動きで口を開く。




「アズミ、お前と一緒に入れてよかった。………お前は生きてくれ」
「ッ!? 嫌だよ……嫌だよ!! ケンくん!! ケンくん!!!!」


ケンが口にした言葉の意味。
アズミは必死に声を吐き出し、蓋をこじ開けようとする。
だが、何故か力が出ない。
昨日は普通に使えていたのに!






ケンは立ち上がり、逃げてきた通路を見る。
そこから聞こえてくる足音に対し、ケンは奥歯を噛み締める。


体の震えが止まらない。


そう、………ケンは恐怖に震えていたのだ。
だが、




(………………動け動け動け動け動け動け動けッ!!)




泣き続ける少女。


彼女を守りたい。
あんな事に彼女を利用させてたまるか。


アズミがこの島から逃げるまでの時間を稼ぐんだ!!






ケンは足に力を込め、走り出す。


それは、まさに無謀の賭けだった。


















洞窟入口。


「…………」


朝日が昇る中、寝癖が凄いことリーナは眉間にシワを寄せていた。
理由は彼女が持つ紙にある。




『場所の地図は一緒に置いた携帯に入れてあるから、先にいってます。追伸、寝顔可愛かったぞ。風霧 新』


ぬがあああああ!! と紙を引きちぎるリーナ。
普段の冷静さが完全に崩れている。
荒い息を吐き、鬼の形相のリーナ。
と、その時。


「…………あー、リーナ」
「ッ!!?」


ビクッ!! と肩を震わせ、その声に振り返るリーナ。
そこには、岩上で横になっていた上半身を起き上がらせる。どこか苦笑いを浮かべた藪笠芥木の姿が、


「………………」
「………………」


静寂。
そして、


「お前、頭爆発してる」
「貴様も起きた早々失礼だな!!」












島の山頂付近。


荒々しく吹く風の中、黒のコートを靡かせ地に着く風霧。
片手には黒の刀が握られている。


「…………ここだな」


風霧が足を着いた目の前には土の壁があり、表面上は至って普通の土壁。だが、風霧は刀の柄で顔を隠すように構え、吐き出す息と共に呟く。




「荒神流・風式」




吹き荒れる風が刀を覆い、それは目に見えない風の刀。
そして、風霧は殺気を含ませ放つ!!




「陽波虹!!」




瞬間、ドザァン!!
十字の疾風波が土壁を切り裂き、その奥に隠れていた鉄壁もろとも切り裂く。


「………さて、暴れますか」


大きな穴が開く、鉄壁を見つめ風霧は口元を緩ませた。
















忠告通り、リーナは髪を整えた。
洞窟に吹き込む風に髪を靡かせるリーナは後ろにいる藪笠に振り返る。


「………………」


体が妙に軽いことに違和感を覚える藪笠の手には一着の赤いコートが握られている。
目が覚めた時、服の上に掛けられていた物だ。


寒さを防ぐために掛けてくれた。
それなら何も問題はなかった。




…ただ一つの問題さえなければ。


「藪笠?」


藪笠の様子に心配したリーナが歩み寄る。


「あ、悪い……」
「……ソレは風霧が置いていった物だな」
「風霧?」
「ああ、本当なら貴様に会わせるはずだったんだがな」


リーナは忌々しいといった表情でポケットから物を取り出す。それは風霧が残した紙の次に置かれていた物。


押しボタンがない、画面だけの携帯。




電源の付け方が全く分からず、リーナのイライラ感を募らせる要因の一つだ。


「携帯か?」
「………一応、紙にはそう書いていたがな」


機嫌をさらに悪くするリーナ。
一方の藪笠はリーナからその携帯を取り上げ、形を確認する。
ボタンの一つすら見られない。
かといって画面を触るが反応は無し。




スイッチがないとすれば、何かの鍵がいるのか。何かを読み取るソレらしい物がないか藪笠は表裏と観察する。
しかし、全くとして見当たらないことに藪笠は、


(……まぁ、無理だと思うけど)


一か八かやってみるか。
藪笠は静かに息を吐き、そして、


「四季装甲、冬」
「?」


その言葉にリーナは藪笠に振り返る。
一瞬、藪笠の瞳の色が白く変わった。


初めて見たわけではないが、リーナは驚いた表情を浮かべる傍ら、藪笠は冬の力。


干渉を手に持つ携帯に意識させた。


その、次の瞬間。




『reflect lock cancel』




携帯から機械音声が流る。
その直後に画面が光を放ち、同時にブルーの線で描かれた島の立体図が画面上で映し出された。


「「……………」」


目の前で起きた光景に、茫然とした表情を浮かべる藪笠とリーナ。


驚いてもおかしくはない。
何故ならその現象は現代の技術でも未だ到達できていないのだ。
そう、映画や漫画で見るぐらいの夢物語と言ってもおかしくは………。


「なぁ、リーナ」
「何だ」
「風霧、だっけ? ……………ソイツ、怪しいだろ」


浮き出る立体図を眺め、尋ねる藪笠。対してリーナは、




「…もう考えるのは止めた。頭痛が走る」




ごもっともな言葉を言いつつ、重い溜め息を吐くリーナだった。









「季節高校生」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く