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季節高校生

goro

別れ山





日が経つ程に暑くなる季節。


学生身分において、夏休みは待ちに待った期間でもあり、夏という季節でもありプールや海、祭りなど学生たちは楽しむ。




しかし、そんな学生たちの中でも一人、学生らしからない休日を過ごす少年がいた。




「あー…………暑い」


団地の裏原。
自宅の冷蔵庫に保管されていたアイスを頬張る藪笠芥木は今、茂み近くに駐車しているバイクのメンテナンスを行っていた。




メンテナンスと言っても基礎的な部分だけの点検。
他にも、つい数日前に竜崎牙血に完成させてもらった電力転換システムという代物がある。
だが、あれは下手に触って壊しても仕方がないとふみ、手をつけていないのだ。






とはいえ、完成した代物。好奇心もあり気になるわけで、


「うーん、やっぱりもう一度あのシステムを使ってみるか…」


一人、唸りながら呟く藪笠。
だが、直ぐに脳裏にあの島での災難が浮ぶ。


(いや、でも…………はぁ…)




止めよう…、と重い溜め息を吐きながら諦める藪笠。
下手して警察に見つかるのもまずい。




藪笠はもう一度溜め息を吐きながら、再び止まっていた手を動かし作業を続行しようとした。
と、その時、




「こんな暑いっていうのに、何やってるわけ?」
「ん?」


背後から聞こえてきた声に振り返る藪笠。
視線を向けた先にいたのは一人の少女。
花柄デザインが印刷されるピンク色のワンピースに、膝より少し上の淡い水色のスカート、手提げのバックを手に持つ鍵谷真木の姿があった。












「ほい、アイス」
「あ、ありがとう…」




部屋に一度戻り、二本のアイスを冷蔵庫から持ってきた藪笠はその一本を鍵谷に渡す。


「で? 何しに来たんだオマエ?」
「ふぇ?」


本日二本目のアイスを頬張りながら尋ねる藪笠に鍵谷は、きょとん、とした表情で、


「何よ、用事がなかったら来ちゃダメなわけ?」


………………………………………。


「ちょい、何でそこで黙るわけ?」
「いや、別に…」
「……………」
「…………何だよ」


じぃー、と藪笠に視線を向ける鍵谷は、ふん! と顔をそっぽ向け、


「(どうせ私は花みたいに健気じゃないですよーだ)」
「は? 何で島秋の名前が出てくんだよ?」
「ッ…そ、そんな事よりアンタ! 今日と明日、暇?」
「……………は?」


喜怒哀楽といえばいいのか、鍵谷の言葉に眉をひそめる藪笠。


「どうなのよ!」
「まぁ、暇っていえば暇だけど……」


予定とか無かったよな……、と思いつつそう答える藪笠に鍵谷は、よし、と密かにガッツポーズをとる。
そして、




「それじゃあ今から私と一緒に行くわよ、藪笠」
「……………は?」
「ほら! 早くバイク出して」
「い、いや何が何だか、ってどこ行くんだよ!?」


急かす鍵谷にそう尋ねる藪笠。
行くにしてもどこに何をしに行くのか分からないのだ。
聞いて当たり前だ。


「あ、それもそうか…」


ピタッ、と動きを止める鍵谷は口元を緩め、手提げバッグから携帯電話を取り出し、藪笠に表示画面を見せる。






「ここでキャンプしようって。後、発案者は藍さんだから」






表示されていた場所。
藪笠は映し出された画面を見つめ、その場所の名前を口に出して読む。


「えー、別れ山?」


















別れ山。
街から少し離れた場所に位置するキャンプ場だ。
いつの頃からそんな名前がついたのかはわからない。
だが、その名前はそのキャンプ場に近づく人を年々少なくさせていた。
それは名前の由来。


その場所にかつてあったことが理由となる。


『その場所で告白すると、決して実らない』


















そして、この山にはもう一つ。


藪笠にとってある過去を知るきっかけとなる場所でもあった。


















早く! と、言われるがまま一応貴重品を持ち鍵谷を乗せ藪笠たちは一旦、鍵谷家に向かった。
そして、そこには、


「あ、やっときたわね」


玄関前に車を止め、開いたらドアの中にはバーベキュー用具に冷凍ボックス。
まさに、キャンプするぞ!! と準備万端な鍵谷 藍の姿があった。












「………はぁ、また豪勢な……って、それより三人で行くのか?」


呆れながら尋ねる藪笠。
すると、藍はニヤリと口元を緩め、


「ん? もしかして不満なのかな、藪笠くん。こんな美人な娘が二人もいるっていうのに?」


ガシッ、と側にいた鍵谷を引き寄せる藍。


「…………………」
「何よ……」


美人という言葉に鍵谷に視線を集中させる藪笠。
ムッ、と鍵谷は頬を赤らめ藪笠を睨み付ける。


……………………………………。


「………まぁ、いいか」
「ちょ、何よ今の間!?」
「まぁまぁ、それじゃ行きましょ」


藍は笑いながら開いた車のドアを閉じ、そして藍たちはいざ出発するのだった。


















街から少し離れた森の中。
キャンプ場には車を走らせても一時間ちょいで着けた距離だ。
道なりは少しデコボコだったが、無事キャンプ場に着くことができた。




駐車場の側には川原があり、さらに各位置には一晩止まれるようにと木造の別荘がいくつか建てられている。






「うーん、良い天気」


体を伸ばし、藍は車の運転を終えしばし森の空気を堪能していた。




藪笠も流石にここまで乗せて貰った身だ。
サボるな、とは言えない。
藪笠は一人せっせとバーベキュー台の組み立てを進める。






一方で後ろでは組み立て椅子などを運ぶ鍵谷がいる。


「おい、鍵谷。さっさとしろよ」
「……ぅぅ………何なのかな、対応が何か藍さんと違う」
「んなの当たり前だろう普通……」


そうなのかな……、としょんぼりする鍵谷。
藪笠は溜め息を吐きながら作業を続けた。
















「うーん……」


バーベキューの焼き台、組み立て椅子に紙皿と紙コップ。
大体の準備を終えた藪笠は両腕を上げ体を伸ばす。離れた所では鍵谷がバテている。


もう少し体力をつけた方がいいのでは…、と藪笠は正直思った。
と、その時、




「あれ? 鍵谷さん」




遠くから男の声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには顎髭を生やした三十過ぎの男が藍に話しかけている。
鍵谷も気になったのか、藪笠と共に藍の側に駆け寄る。




「藍さん、知り合いですか?」
「ん? ええ」


鍵谷の質問にそう答えた藍は男性に振り返り、紹介するように片手を藪笠たちに向け、


「御影さん。この子が妹の娘、鍵谷真木です」


それから、と藍は続け、


「真木の旦那の藪笠芥木くん」








…………………………………………………………………………ボン!!


「ななな何言ってるのよッ!?」


顔を真っ赤にさせ抗議をする鍵谷。
だが、直ぐに自身の声の大きさに気づき、しゅん、と縮こまってしまう。「か、鍵谷真木です」
「………藪笠芥木です」


藪笠は頭をかきながら平然とした表情で自己紹介をする。


未だ、しばし茫然とする男は藪笠たちの自己紹介を聞きもやっと正気に戻る。
そして、気を取り直して口を開く。


「どうも初めまして、御影源二です」


腹周りは暑く、その体格から力強さをイメージさせる男、御影源二。
藍は口元を緩ませながら口を動かし、


「御影さんはここら一体にある別荘の管理人なの。だから分からないこととかあったら教えてもらうといいわ」


いやぁ、と苦笑いを浮かべる御影。
鍵谷が苦笑いを浮かべながら藍の言動に対し、すいません…、と頭を下げ…。


「とりあえず、御影さんも一緒に食べませんか?」


藍は御影もとバーベキューに誘うのだった。





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