話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

季節高校生

goro

特別な場所





時間が経ち、夜空が朝日が上るにつれ明るくなる早朝。


「……アンタたち、何やってるの?」


浜崎は呆れ返った表情を浮かべ尋ねた。
普段やっていることなので特別といったものではないが、朝の日課で筋力トレーニングをしようと外に出た浜崎。
昨日のこともあり気分を変えようと思い玄関から出た。


所がそこにいた二つの人影に浜崎は考えていた事すら忘れて固まってしまう。




玄関前に水をたらしながら立っている、全身びしょびしょに濡れた籔笠とリーナ。


「………あー、いやそのー」
「玲奈様………すみません」


頭を下げ、謝るリーナ。二つくくりになっていた金髪はほどけ、前髪はダランと垂れ落ちている。




どうしてこうなったのか。
正直、聞きたかったが浜崎自身考えるのが馬鹿らしくなった。


はぁ…、と浜崎は溜め息を吐き、


「もういいわ。リーナは真木にでも服貸してもらうように頼みに行きなさい」
「はい……………」


トボトボと濡れたまま別荘に入っていくリーナ。また後で床拭きをするからいいだろうと思った。
ただ、
ガシッ、とそれに続いて中に入ろうとする籔笠の襟首を掴み。


「誰がアンタに入っていいって行った?」
「ぐぇ!?」


首を圧迫され、苦しむ籔笠。しかし、浜崎は気にする気配すら見せず、


「抜け出したことは…まぁ、許してあげる。だけどアンタにはちょっと用事があるの?」
「……………内容は?」
「うん?それはもちろん昨日アンタが言ってくれた基礎練習の付き添い」


ニッコリと笑ってそう
答える浜崎。
もちろん、籔笠は抗議に出る。
が、


「そ、それなら春香に」
「アンタが言ったんだから。言ったことには責任を持ちなさい」


即拒否され、無理やりにズルズルと引きずるように浜崎は藪笠を連れていった。
そして、早朝から籔笠は濡れた状態のまま浜崎の付き添いで再び島に一周をするはめになった。


















「リーナちゃん、かわいい!!」
「うん、タキシードよりそっちの方が似合ってる!」


島秋に続き鍵谷もそう言う。
目の前には金髪の髪を下ろし、水色の半袖にクリーム色の半ズボン。


青色の瞳をしたリーナの姿が浜辺にあった。


「……………あ、あの」
「でも、何か足りないのよね」
「うん、わかるよ真木ちゃん」
「い、いや……ちょっ!?」
「そうだ!リボンよ、リボン!確か髪止めのリボンとかあったよね!」
「うん、確かにあったと思う!」
「ッバ!?いくら玲奈様の友達だとしてもダメですッ!!」


堅物が印象的だったリーナがうろたえている。
鍵谷と島秋はニコニコと笑いながらそんな反応を楽しんでいた。






「……………」


濡れた服から替えの服に着替えた籔笠はそんな彼女たちを別荘の玄関から眺めていた。
別に見惚れていたわけではなくやることがなかったからだ。


「随分とつまらなさそうね?」


すると、後ろから笹鶴の声が聞こえてきた。
振り返るとそこには胴着姿の肩に乗せたタオルで汗を拭きとる笹鶴がいた。
藪笠は少し、ムッとした表情を見せる。


「お前があんな馬鹿げた仕掛けしてくれたお陰で、バイクはオーバーヒートしちまったよ」
「ありゃ、まだ調整がいるのかな。やっぱり素人が作るとなると難しいみたい」
「よく言うよ、お前」


籔笠は溜め息を吐き、別荘の柱に背を預ける。
拗ねてるのかなぁ?と笹鶴は苦笑いを浮かべながら視線を藪笠から浜辺に向けた。


そこには笑いながらはしゃぐ少女たち。
そして、その中の一人が。
どうしても……。








「………籔笠」
「……」


ふとトーンを落とした声に藪笠は笹鶴に振り返る。
そこにはどこか昔を思い出しているような目を細める彼女の姿があった。


「……後で、あの子をあそこに連れていこうと思うの」
「……………」


連れていく。
その言葉に藪笠は唇をつぐむ。




笹鶴から見てもそれが見てとれた。本当ならそんな表情なんかしてほしくない。
だが、それでも、




「あの子にはちょっとお礼がしたいの。……私個人のお礼よ」
「……他の奴らは」
「花ちゃんと玲奈、後リーナって子は残ってもらう。私も残るつもり」


笹鶴はそっと足を動かし、藪笠の隣で足を止め、










「真木ちゃん。後、籔笠には行ってほしいと思ってる」














時間が経ち、昼を少し回った頃。


「真木ちゃん、ちょっといい?」


明日、学校もあるため帰り支度をする最中の中で笹鶴は鍵谷に近づく。


「どうしたんですか?」


鍵谷は首をかしげながら尋ねる。
笹鶴は鍵谷に小さく口元を緩ませながら口を開く。


「ごめんね。ちょっと真木ちゃんに頼みたいことがあるの」
「?」
















この島の由来。
それはその名の通り黄泉と繋がりを持つからだとされている。
そして、僅かな人だけが知る、さらに最もその由来にあった場所がある。それは島の中心、トンネルのようになっている洞窟。


友愛洞窟。












「で、何で籔笠がいるわけ?」
「……………」


鍵谷は眉間にシワを寄せつつ藪笠の前を歩きながら洞窟内を進んでいた。
笹鶴にこの洞窟を紹介され、一回通ってみてみない?と言われ、ここまで来た。
だが、藪笠と一緒に行くことになるとは知らなかったのだ。




「ねぇ、ちょっと聞いてる?」
「………………」
「…………ッ…」


鍵谷がイライラしていた。
理由は二つ。
一つは藪笠と一緒だということ。
そして、もう一つはこの洞窟に来てから藪笠の様子がおかしいという事。それもどこか、一人と言っているような姿。
それが無性に怒りを募らせる。


「……………」
「……………」


沈黙のまま、そうして洞窟の中を歩いて行く。


すると、二人の目の前に二つの分かれ道が、


「どっちに行く?」
「…………」
「ねぇ、聞いてる?」


横目で見ながらそう言う鍵谷。
だが、藪笠は何も答えず、


「あ、ちょっと!?」


スタスタと、一人勝手に片方の道に行ってしまった。










無視したあげく黙って行くなんて。
鍵谷は頬を膨らませ藪笠とは反対の道を歩いていく。


















「真木ちゃんと藪笠くん、大丈夫かなぁ」


洞窟の出口。そこで二人の帰りを待っていた中の一人、島秋がそう呟く。


「心配しなくても大丈夫。藪笠がついてるんだから」


笹鶴はそう言って島秋の肩に優しく手を乗せた。笹鶴たちの直ぐ側には帰り支度した鞄などが置かれている。


「リーナ、帰ったら話があるから」
「…………はい」


向こうでは浜崎たちが何やら陰険な空気を漂わせていた。


















「全く、籔笠なんて知らない!何よ、どうせ私の事なんてどうでもいいのよ」




イライラを爆発させながら、鍵谷は一人ズンズンと進んでいく。
頭に浮かぶのは藪笠の姿。
さっきといい、ここに来てからといい。
ずっとあんな調子。




島秋と浜崎、そして笹鶴。
何かしら藪笠は彼女たちと話していた。
だけど。
















私とは……、
















「……………はぁ」






足を止め、立ち止まる鍵谷。
考えていくだけで、不快になる。






どうしよう………。






鍵谷は顔を伏せ、そのまましゃがみそうになった。


その時。






「どうしたの?」
「……え?」


不意に聞こえてきた声に振り返る。
すると、そこにいたのは、




「芥木お兄ちゃんと喧嘩でもした?」






赤なパーカーに青いスカートを着た、小学生ぐらいの背柄にした小柄の少女。


「………え、…笠木お兄ちゃん?…」


未だ驚く鍵谷に小さく笑いながら少女は言う。












「私の名前は光空美羽。美羽でいいよ」









「季節高校生」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く