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季節高校生

goro

暗闇からの刺客





夕焼けが落ち、別荘の二階では夕食を食べる籔笠たち。


「………………」
「あ、浜崎…………」
「……………」


あれから何度か声をかけるが全くとして答えてくれない。
しかも、他二名の冷たい目線が……。


「な、なぁ、春香。あれ何とか」
「ん?玲奈はああなると一日ほどふてくさるから」


元凶を作った本人は全然動揺する素振りすら見せない。






何でこんな事に……。籔笠は気分的に暗い状態のまま夕食を食べることとなった。














夕食を終え、後は寝るだけと思った矢先、


「あ、そうだ。みんな集まって」


笹鶴の声に鍵谷と島秋は近寄る。
浜崎は、ふてくされているのか布団に潜ったまま。


籔笠も嫌な予感がすると近づかない。




そういうわけで笹鶴の声に浜崎と籔笠を除き、二人の少女が集まった。




そして、それから数分して、














「何でこうなった……」


ひきつった表情の籔笠は周りを見渡す。
現在いる場所は別荘から少し離れた森の中。
さらにいえば、


「きゃあああああああああああ!!」
「あー……島秋」
「きゃああああ!きゃあああああ!きゃあああああああああああ!!」
「島秋ー、それ木の枝だぞー」


悲鳴を連続で叫び続ける島秋花。


「っ!?……ほんと?」


ああ、ホントホントと籔笠は涙目の島秋の頭に手を置き慰める。


「やっぱり止めといたほうがよかったな……」




籔笠は苦々しく数分前に振り返る。


















「肝試しをしたいと思います!」


ダン!と勢いよく宣言した笹鶴。
鍵谷と島秋も流石に表情を固まらした。


「え?春香さん。それって今」
「うん!二組に別れてこの別荘の裏にある森でやるから」
「二組?…でも三人じゃ」
「籔笠は強制参加だから」
「おい!!」


その発言に、さっきまで気にも止めていなかった籔笠が立ち上がる。


「異論は無し。アレもちゃんと渡すから」
「アレ?」


首をかしげる鍵谷に籔笠はしかめ面で笹鶴を睨む。


「まぁ、玲奈はあのままでいいから。それじゃあクジ引いてよね」




笹鶴はいつの間にか用意した三つ折りのクジが入った箱を目の前に出す。




いつから用意してたんだ…。
籔笠は重い息を吐いて、今だ固まり続ける島秋を横目で見つつクジを引いた。














そうして、現在にいたる。


クジ引きの結果、笹鶴と鍵谷ペア。島秋と籔笠ペアが決まり、森の中に密かに建てられた二つの小さな祠に行くことになったのだ。




「……籔笠くん……籔笠くん…」
「はいはい、いるからなー」


肩をがっしりと掴み、何回も同じ台詞を言う島秋。籔笠はそんな彼女を横目から見て再び息を漏らした。


意外な一面ではある。
普段を知っているからこそ、こんな怖がった彼女の姿が新鮮に見える。




「ほら、さっさと終わらして帰るぞ」
「うん……」


<a href="//1659.mitemin.net/i41546/" target="_blank"><img src="//1659.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i41546/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


籔笠は苦笑いを浮かべながら足を動かした。


















「花、大丈夫かな…」
「あはは、そんなに心配?」


鍵谷と笹鶴はちょうど小さな祠に辿り着く所だった。
さっきから聞こえてくる少女の悲鳴。


多分、あの場で怖がっていた島秋だろう。




「まぁ、籔笠がいるから大丈夫だと思うよ」


笹鶴は他人事のように笑いながらそう言う。
しかし、


「……心配なのは、その籔笠の方です」
「え?」


その言葉に目を見開く笹鶴。




もしや、籔笠の正体に気づいたのか?






唾を飲み込み、緊張をはしらせる笹鶴。








だが、




「籔笠が花を襲ってるかもしれないじゃないですか!!ああ、大丈夫かな、花!!」
「ガクッ…………」




思わず口に出してしまった。
笹鶴は心配して損したと溜め息を吐いた。








「!?」






そこで笹鶴は、バッ、と顔を上げる。


「ん?笹鶴さん?」


そんな笹鶴の姿に首をかしげる鍵谷。




(なんだろう………今、何か、変な殺気が……)


笹鶴は、ゴクッ、と唾を飲み込み鍵谷に振り返る。


「真木ちゃん」
「はい」
「ちょっと早く戻ろうか」


笹鶴は急いで鍵谷の手を掴み別荘に向かって足を走らせた。


















「……………出てこいよ」


ふと、足を止めそう呟く籔笠。
一瞬は自分に言われたのかと顔を上げる島秋だったが、即時にその言葉は自分に言われた物ではないことに気づく。


「……………」


籔笠は島秋との立ち位置を変え、彼女を守るように前に出た。


「……ここに来てから、何かと視線は感じてたんだ」


小さく息を吐き、冷静にその場から辺りを見渡す。


「いい加減、姿を見せやがれ」


そして、もう一度。
籔笠がそう発した、その直後。






ガサッ、と。
頭上からの音と共に籔笠に向かって蹴りが放たれた。


「ッ!?」
「きゃっ!?」


後ろにいた島秋を突き飛ばし、後ろに退く籔笠。
襲いかかってきた人影は舌打ちをうち、地面に難なく着地する。




再び静けさを取り戻す森。
さらに、月光がその照らし出しその人影の姿が見えてくる。










月光に当てられ、光る左右に二つのくくりされた金髪。
タキシード姿をきっちりと着こなし、その顔がらは外人だろうか。




だが、それよりも驚いたのは、


「女?」


月明かりにより明かされたのが、顔だちもそうだが、小柄な少女だったのだ。


動揺を隠せなかった籔笠。しかし、それを振り払い再び警戒しつつ、その少女の動きを待つ。






同様に少女にいたっても待つ体勢のようだ。










静けさがその場から漂う。
一歩でも動かしたら始まる。




そんな緊迫的状況。
しかし、








パキィ、と。
その音に籔笠の表情が氷った。


金髪の少女の後ろにいる。避ける際に離れてしまった島秋の姿。
その足元には木の枝が踏まれている。




そして、何より。
さっきまでの金髪の少女の対象がその瞬間。
籔笠から島秋に変わってしまった。


「!!」


丸腰の島秋に向かって走り出す少女。
袖から手品師のように小さなナイフが出されたのが見える。


「ッ!?」


籔笠は歯噛み、躊躇することを頭から取り払う。


手加減を考えては入られない。




地面を蹴飛ばし、噛み締めるように酸素を取り込み、




「四季装甲」








瞳を一瞬伏せ、呟く。




「春」


















迫り来る恐怖。
島秋はその凶器を持った少女にただ待つことしか出来なかった。


「あ………」




そして、直ぐそこまで。恐怖が迫った。
その時。












「………落桜」






ガァンッ!!と、
急速な落下と共に、島秋と少女の間で衝撃が起こった。




地面が小さく割れ、その勢いで上がった砂煙と共に土が衝撃波のように少女に放たれる。


「ッ!?」


両腕を交差させ、衝撃を最小限に防ぎ少女は後ろに跳び退く。
そして、地面に着地し、目の前の砂煙の中を睨む。
















砂煙が時と共に晴れていく。
そして、その中から現れたのは一人の少年の後ろ姿。








ふわりと前髪をなびかせ、暖かさ冷たさ。
その両方ともいえる冴えた瞳を君臨させる。










籔笠芥木の姿がそこにあった。




「……………」
「……………」




静寂の中、二つの視線が交差する。


後ろではコテリと倒れた島秋の姿。どうやら気絶したらしい。
だが、今の状況では好都合だ。




籔笠は静かに息を吐き口を開こうとする。


しかし、


「!!」


迷いなく突っ込んできた少女。
籔笠は舌打ちをうちながら、フッ、と息を吐く。


その瞬間。
籔笠の姿は少女の視界から消えた。




「!?」




目を見開き驚く少女。


対象は、確かに瞳は捉えていた。
それなのにその姿は突如消えた。


















…いや、違う。






少女は冷静に判断し結論を出した。
消えたのではない。
移ったのだ。






捉えていた対象から、その隣で突然と羽上がった小石に。












人は一つの物を集中的に見てしまう傾向がある。
さらに、そこで見えない密かな死角が存在する。
目に支障があるわけではない
ようはそれを見た脳が誤解をしてしまったのだ。そして、今の状態もそれとよく似ている。






素早く死角に入り、消えたかのように相手に幻想を抱かせた。










…色やそういった謎々などで起きるのはわかる。
だが。














何の異変もない状況で相手をそんな状態に追い込めるのだろうか?




「ッ!!」


少女は対象を外すべく一度目を閉じ再び目を見開く。
そして、さっきまでの対象を探そうとした。
その時。














「四季装甲、春」








その言葉が直ぐ隣で放たれた。
咄嗟に振り返るより早く少女は防御の姿勢をしようとする。
だが、既に、






「乱桜」














遅かった。




ドゴッ!!と。
拳が少女の懐に入る。その小柄な体が浮く、そこでさらに連続の如く重い左肘の一撃が少女の右肩に入る。


「ッガァ!?」


少女の口から痛みの声が出る。
しかし、対象は躊躇なく最後とばかりに左肘を当てた状態で片足を軸に体を捻らせ、


「!!」


ドゴッ!!と最初に食らわした懐に蹴りを入れた。


「ッカハッ!!」


勢いにより少女の体は吹き飛び、地面に滑るように転げ落ち、


「ァ……ッ…………」




起き上がろうと手をつく少女。
しかし、


「………ッ…………」




力尽きるように、少女は、バタッ、と倒れるのだった。


















「……………はぁ」


籔笠は大きく息を吐く。そこで今まで漂わせていた雰囲気は普段の状態に戻る。




腰に手を当て後ろに振り返り、そこに今だ気絶している島秋を見て、そしてもう一度目の前の少女を見やる。














運ぶのが手間だよな……。


籔笠はガックリと肩を落とし、溜め息を吐くのだった。







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