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季節高校生

goro

急展と絶望と







「花の父親の島秋正木です」


そう名乗るのは島秋花の父でもある眼鏡をかけたフサフサした髪の男。
籔笠は今、島秋花に連れられ島秋家に招待されている。
その家は木造建築の二階建て。
少し古びた木壁を見るにお年寄りが住んでそうな雰囲気がある。そして、そんな家の居間。
八畳の畳、隅っこに置かれたタンス。中央に置かれた卓袱台の前で御もてなしと貰ったお茶を飲む籔笠。
正木はそんな少年を眺め口元を緩め、


「それにしても、君が籔笠くんか」
「え?」
「いや、花がよく君の名前を言うもんだからどんな子かと思って」
「ちょっ、お父さん!?」


台所で流しの皿を洗っていた島秋が慌てた様子で居間に駆け寄って来た。
その顔からは動揺が見て取れ、同時にイチゴのように頬が真っ赤に染まっている。


「もー! なに言ってるの!! あ、藪笠くんは気にしないでね!!」


余計なこと言わないでよ! と父親に向かって指差し頬をふくらませた状態で再び台所に戻る島秋。
その行動からは普段のような大人しさが微塵もなく、それが普段の彼女かと思うと少し面白みがある。


「……島秋のやつ、楽しそうだな」
「え?」


不意に呟いた言葉に首をかしげながら目を丸くする正木。
藪笠は台所に立つ少女の後ろ姿を眺めながら口を開く。


「学校でのアイツの顔はいつも見てるけど、今みたいなのはあんまり見ないもんだから」
「そ、…そうなんですか?」
「はい、いつも大人しいし………まぁ、俺から見たらなんですけど」


そう言って頬をポリポリとかく籔笠。
どこか大人びた雰囲気を見せていた少年だったが、今の表情は歳なりの少年の顔をしていることに正木は小さく笑みを浮かばせ、


「………私は花に君みたいな友達がいてくれてよかったと思うよ」
「…え?」
「あ、いや気にしないでくれ」


正木はそう笑って口を閉じるとゆっくりとした動作で後ろのタンス上に立てかけられた写真たてを見る。
正木と花、そしてそんな彼女に似た女性の姿が写された写真。
それは家族の証明でもある大切な物。






「お邪魔しました」


夕方に近づき、空が橙色に変わっていく。
玄関前で島秋家族に礼を言う籔笠。


「また、来てね」


島秋は口元を緩ませながら頬を少し赤らめている。
それはどことなく誘いでもあるのだが、藪笠は小さく唸り声を上げ、


「ああ、また暇な時にな」
「!!? うん!!」


目を見開き、笑顔を向ける島秋。
藪笠はそんな彼女に手を振り去ろうとした。
しかし、そんな時。




「ちょっと、いいかな」




島秋の隣にいた正木が、少年を呼び止める。


















「……………」


籔笠は正木と共に近くの通りを歩いていた。




「いや、すまないね籔笠くん」
「あ、いや別に気にしてないですから」


籔笠は笑いながら、空を見上げる。














沈黙がその場を冷たくする。


だが、その
















「四季装甲」
















一言が冷たさをさらに強める。


「……………」
「………やっぱり、そうか」




正木は口元を閉じ、籔笠を見る。


「君が何故こんな所にいるのかは聞かないよ」
「………………」
「………だけど、君に知らせておこうと思ってね」


































「お父さん」


花は家の向かいにある電柱の側で父、正木が帰ってくるのを待っていた。


「花、何しているんだ?」
「何って、お父さんを待っていたんだよ」
「ああ、そうか。悪かったね」




正木は苦く笑いながら花の頭を撫でた。
花も口元を緩ませ、頬を赤らめる。




「さぁ、家に入ろうか」
「うん」




そして、二人は家へと一歩二歩と進めた。


















その刹那。


キキィィィィィィィィ!!と。
音の後に。


















ドゴッと鈍く生々しい音が平穏な生活を絶望へと変えた。









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