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季節高校生

goro

囁きの始まり









春の終わりに差し掛かる一日前。




「はぁ、はぁ、ほ、本部……応答を!本部!ほんぐはッ!?」
『おい!どうした、おい!!返事をしろ!!お』
「残念。もう出ねぇよ」


『!?』


「こそこそと察が動いてると思ったらまさかなスパイとはFBIかよ、全く」


『く………貴様……』






「ニヒヒィ……よく聞け、察ども」














「明日、俺達は一年の歳月を経て動き出す」








そう………。












「スコーピオンがなぁ!!」


















「はぁ……」


籔笠は息を吐く。


時間はちょうど昼休み。


皆が騒ぎ合うこの時間、籔笠は一人屋上でパンをくわえていた。




屋上から下を見下ろすと、そこには桜がパラパラと落ち、春の終わりを感じさせる。




籔笠は息を吐きつつ、




「春も終わりだなぁ」
「そうだねぇ」






…………………………………あれ?


籔笠はゆっくりと首を動かし、そこにいなかったはずの人物に尋ねる。




「島秋、何してんだ?」
「ん?籔笠こそ、何してるの?」




………………………………。










籔笠と島秋は今、屋上から三階に降りる階段を降りている。




「どうしたの、籔笠くん。今日は一段と変だよ?」
「おい、一段とってなんだよ。お前から見て俺ってどう見えてんだ?」


籔笠は小さく息を吐きつつ、島秋にそう問いながら、




ピタッ。


「ふぇ!?」
「お前こそ、目にクマできてんぞ。バイトでもしてんのか?」


突如、顔を触られた島秋は目を丸くし顔を赤く染めた。


だが、その顔にはそれ以外に驚きも含まれていた。




硬直する島秋。






だが、直後。








ギシッ、と。
音とともに籔笠の体は斜めに傾き、幸い階段を降りきる三段前にいたお陰で階段三段の高さから落ちた。


そして、突然のことに固まる島秋の側には、




「何、花に手出してるのよ」




眉間にシワをよせた鍵谷真木の姿があり。
さらには、










「「「「籔笠ぁあぁぁぁぁぁぁあ……」」」」」




島秋ファンのバカどもまでもが、






…………………………………。






答えは直ぐに出た。


「……………ッ!!」


全力疾走。


「逃げたぞ!追え!!」
「逃がすな、あのナンパ野郎を逃がすな!!」
「二階の仲間に連絡しろ。挟み撃ちだ!」




ギャアギャアと騒ぎながら走り去っていく男達。
鍵谷は笑顔で手を振り、島秋は今だに硬直していた。






















翌朝。


朝の5時。


「ふー………」


帽子を被った少女は一人、新聞の入った鞄を背負い走っていた。




道はちょうど上り坂で、走るにしても体力は大幅に削られる。


両膝に手をつき、荒い息 を吐く少女。




すると、顔の近くに茶の入ったペットボトルが出され、


「ほぃ」
「あ、ありがとう」


ゴクッゴクッ、と。
一気に渡された茶を飲み込む。






……………………………………あれ?




バッ!?と直ぐ様後ろに振り返る少女。
そして、そこには、




「生き返りましたか、島秋さん?」


イタズラっぽく口元を緩ませる籔笠が立っていた。




「は、ははぁ…………」




















「生活費のため、ね…」


籔笠と島秋は今、近くのベンチに座っていた。


新聞配達を何とか終えた島秋は籔笠が買ってきてくれたパンを頬張っている。




「お前、いつもこんなことしてるのか?」
「ん?ゴクッんっと、違うよ。ちょっと事情でお父さんが居ないから」
「いや、居ないからって親父さんから生活費とかもらってねえのかよ」
「ううん、違うの。私からいらないって言ってるの」


「は?」




よいしょ、とベンチから立ち上がる島秋。




「お父さんには私の事は気にせず仕事に励んでほしいと思ってるから」
「いや、でも」
「私は私で何とかするし、それに今日お父さん帰ってくるから」
「…………………」


籔笠はそんな笑う島秋を眉を潜め心配な表情で見る。
すると、島秋はキョトンとした顔で、


「籔笠くんって」
「ん?」


眉を潜める籔笠に対し、




「そんな顔も出来たんだね♪」




…………………………………カチン。


「人が心配してやってるのにコイツわ」
「いひゃ、いひゃいいひゃい!?」


ぐにぃ、と島秋を頬を引っ張る籔笠。


額には軽く青筋がたっていた。








そして、涙目の島秋は何とか籔笠から解放して貰うと、赤くなった頬を擦りつつ笑い出し。




籔笠も呆れたように息を吐きつつ、口元を緩ませた。










ちょうど、その時。






「おーい、花!」




「え?」
「ん?」


遠くからの声に振り返る島秋と籔笠。






視線の先には灰色の皮ジャンをきた中年の男が見え、さらに石につまずき地面にこけた。






……………………………………。






籔笠は、何となくわかった、と島秋に振り向き、


「あれって、親父さん?」
「う、うん。まぁ……」






島秋は苦笑いするしかなかった。







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