みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです
57. 1on1大会①
まずは第1回戦。組み合わせはキャプテンと副キャプテン。向かい合う二人を見て息を呑む。
どうしても、あの大会直後の二人の激しい口論が頭をよぎる。体育館にいる部員全員に、嫌な緊張が走る。
それに二人が1on1をしているのは今まで見た事がない。桜先輩はどちらかと言うと、こういうイベントは好きじゃないと思ってたんだけど。
「ははは。流石に注目されてるな!  いつ以来かね、桜と1on1するのは」
「覚えてない」
「桜、ワタシに勝ったこと、あったっけ?」
「さあ……?  どうだったかな」
いきなりキャプテンが煽っている。いや、ただ煽っているのではない事くらい、みんな分かっている。
でも、発破をかけるにしても、そんな言い方をしては今の桜先輩には逆効果としか思えないんだけど……
「まあ、どっちでもいいか!  ワタシも桜もあの頃とは違うんだから。さあ、かかってきな!  遊んでやるよ!」
「真琴。私は負けない。負けたくない理由が出来たの。もう誰にも負けないから」
「ふぅん……なんだ、いい顔する様になったじゃん。心配して損したよ」
冷静で、慎重で、正確無比なバスケをするのに、どこか苦しそうで、とても窮屈そうにバスケをしている様に見えた今までの桜先輩の顔とは、確かに違っていた。
何があったのかは分からないけど、先輩のメンタルな部分で劇的な変化があったのは明白だ。それも、どちらかと言うとプラスに働く方向で。
「一体、何があったんだろ……?」
「ん〜、分かんないねえ〜。でも、あんなに楽しそうにバスケする  もっち見たの久しぶりだよ〜」
「花ちゃん、前から聞こうと思ってたんだけど、なんで桜先輩の事をもっちって呼んでるの?」
「えっ?  桜もち、略してもっちだよ〜。知らなかったの〜?」
知らなかったの?  ってそんな呼び方してるの花ちゃんだけなんだけど。しかも名前の部分がひとつも残ってない……
肝心の1on1の方は、キャプテンがリードしている。5点マッチだから、あと2点入れればキャプテンの勝利だ。
1on1となれば、体格差での有利不利が如実に現れる。フォローし合える味方がいない分、個人の身体能力や技術の差を誤魔化す事が出来ないのだ。
桜先輩は背があまり高くないし、体格も良い方ではない。典型的なアウトサイドプレーヤーだ。
※アウトサイドプレーヤー=ガードやシューターの様に、スリーポイントライン付近、即ちゴールから離れた場所でプレイする時間が長いプレーヤーの事
それに対して皇キャプテンはセンター程身長は高くないけど、パワーとスピードを兼ね備えているパワーフォワード。アウトサイドもインサイドもこなせるオールラウンダーだ。
こういう人は1on1が本当に強い。
5対5のゲームでも、強引とも思える攻めで突破口を開き、チームに活力を与える。技術では優っているであろう桜先輩が苦戦するのも当然だ。
「お〜〜。ガツガツやり合ってるね〜。真琴っちゃんも本気だよ、あれ」
その後、一時はスリーポイントで桜先輩が同点まで追い上げたけど、最終的には5対3でキャプテンが勝利した。
「はあはあ……やっぱり真琴には敵わないな……」
「いや、正直どっちが勝ってもおかしくなかったよ。強くなったな、桜」
「……ありがとう」
そう言ってキャプテンと握手を交わす桜先輩は、本当に良い顔で笑っていた。それを見て何故か私が泣きそうになっていた。
「桜先輩……ぐすん」
「なんで  よりが泣いてんのさ〜。そんな事より、次は  よりの番でしょ〜。頑張ってよ〜」
そうだ。次は私の番だった。相手はかがみん……身長は176センチで体格も良い。インサイドプレイを得意とする、ザ、センターって感じのプレイスタイルだ。
体格差が重要になると言ったけど、相手がセンターとなれば少し話が変わってくる。背が高くて、パワーのあるプレイヤーはその反面、スピードが無く、ドリブルも得意ではない選手が多い。
まあ、NBAプレーヤーや、プロのバスケ選手ともなれば話は別だけどね。
かがみんも例外では無く、スピードで翻弄することが出来れば、私のペースで対戦を進めることが可能だ。
実際に1on1が開始されると、ドライブと、ジャンプストップからのミドルシュートで、2点を先制する事ができた。その後、かがみんにパワープレイで1点を返されるも、スティールでの攻守交代後、立て続けにゴールを決める事ができ、5対1で勝利する事ができた。
「ああー、やっぱ負けたかー。相変わらず  たよりは1on1強いなー」
少しのんびりした感じでかがみんが話し掛けてくる。
「そんな事ないよ。流れが良かっただけだよ。またやろうね」
「おうよー。次は負けないからねー」
そう言って握手を交わす。かがみんのマイペースな雰囲気はチームに緩和をもたらす。緊張ばかりでは、張り詰めた糸がいつか切れてしまう。かがみんは、いずれチームの大黒柱となる存在として、器の大きさみたいな物を感じる。
センタープレヤーにどっしりと構えてもらえれば、他のチームメイト安心してのびのびとプレーする事が出来る。適材適所とはよく言ったもので、それぞれが違う部分でチームに貢献していんるだなと、改めて考えさせられる。
そんな事を考えている間に、いろはと、八重樫先輩の対戦が進んでいた。八重樫先輩はポイントガード、いろはシューティングガード。ポジション的にも、体格的にもそこまで差は無い。
故に純粋に技術の勝負になるので、三年生である八重樫先輩がやはり有利に試合を進める。ただ、いろはも必死に食らい付き、4対4の同点でしばらく点がどちらも入れれないという均衡状態が続く。
見ているこっちがハラハラする様な試合展開だったけど、最後は経験の差が出たのか、一瞬の隙を突いて八重樫先輩がマッチポイントを決め勝利した。
「はあはあ、ふう。つ、疲れた……」
「色葉、結構やるもんだね。危なかったよ」
「くやしーですー」
体力を使い切ってヘロヘロになった色葉と、まだまだ余裕のある八重樫先輩が握手を交わす。体格での差は無かったけど、積み重ねてきた経験と練習量で先輩が優っていた様だ。
それにしても、これだけさくさくと試合が進んでいるのに、まだメインイベントの神風の試合が1試合も終わっていない。
今日は長い1日になりそうだ……。
どうしても、あの大会直後の二人の激しい口論が頭をよぎる。体育館にいる部員全員に、嫌な緊張が走る。
それに二人が1on1をしているのは今まで見た事がない。桜先輩はどちらかと言うと、こういうイベントは好きじゃないと思ってたんだけど。
「ははは。流石に注目されてるな!  いつ以来かね、桜と1on1するのは」
「覚えてない」
「桜、ワタシに勝ったこと、あったっけ?」
「さあ……?  どうだったかな」
いきなりキャプテンが煽っている。いや、ただ煽っているのではない事くらい、みんな分かっている。
でも、発破をかけるにしても、そんな言い方をしては今の桜先輩には逆効果としか思えないんだけど……
「まあ、どっちでもいいか!  ワタシも桜もあの頃とは違うんだから。さあ、かかってきな!  遊んでやるよ!」
「真琴。私は負けない。負けたくない理由が出来たの。もう誰にも負けないから」
「ふぅん……なんだ、いい顔する様になったじゃん。心配して損したよ」
冷静で、慎重で、正確無比なバスケをするのに、どこか苦しそうで、とても窮屈そうにバスケをしている様に見えた今までの桜先輩の顔とは、確かに違っていた。
何があったのかは分からないけど、先輩のメンタルな部分で劇的な変化があったのは明白だ。それも、どちらかと言うとプラスに働く方向で。
「一体、何があったんだろ……?」
「ん〜、分かんないねえ〜。でも、あんなに楽しそうにバスケする  もっち見たの久しぶりだよ〜」
「花ちゃん、前から聞こうと思ってたんだけど、なんで桜先輩の事をもっちって呼んでるの?」
「えっ?  桜もち、略してもっちだよ〜。知らなかったの〜?」
知らなかったの?  ってそんな呼び方してるの花ちゃんだけなんだけど。しかも名前の部分がひとつも残ってない……
肝心の1on1の方は、キャプテンがリードしている。5点マッチだから、あと2点入れればキャプテンの勝利だ。
1on1となれば、体格差での有利不利が如実に現れる。フォローし合える味方がいない分、個人の身体能力や技術の差を誤魔化す事が出来ないのだ。
桜先輩は背があまり高くないし、体格も良い方ではない。典型的なアウトサイドプレーヤーだ。
※アウトサイドプレーヤー=ガードやシューターの様に、スリーポイントライン付近、即ちゴールから離れた場所でプレイする時間が長いプレーヤーの事
それに対して皇キャプテンはセンター程身長は高くないけど、パワーとスピードを兼ね備えているパワーフォワード。アウトサイドもインサイドもこなせるオールラウンダーだ。
こういう人は1on1が本当に強い。
5対5のゲームでも、強引とも思える攻めで突破口を開き、チームに活力を与える。技術では優っているであろう桜先輩が苦戦するのも当然だ。
「お〜〜。ガツガツやり合ってるね〜。真琴っちゃんも本気だよ、あれ」
その後、一時はスリーポイントで桜先輩が同点まで追い上げたけど、最終的には5対3でキャプテンが勝利した。
「はあはあ……やっぱり真琴には敵わないな……」
「いや、正直どっちが勝ってもおかしくなかったよ。強くなったな、桜」
「……ありがとう」
そう言ってキャプテンと握手を交わす桜先輩は、本当に良い顔で笑っていた。それを見て何故か私が泣きそうになっていた。
「桜先輩……ぐすん」
「なんで  よりが泣いてんのさ〜。そんな事より、次は  よりの番でしょ〜。頑張ってよ〜」
そうだ。次は私の番だった。相手はかがみん……身長は176センチで体格も良い。インサイドプレイを得意とする、ザ、センターって感じのプレイスタイルだ。
体格差が重要になると言ったけど、相手がセンターとなれば少し話が変わってくる。背が高くて、パワーのあるプレイヤーはその反面、スピードが無く、ドリブルも得意ではない選手が多い。
まあ、NBAプレーヤーや、プロのバスケ選手ともなれば話は別だけどね。
かがみんも例外では無く、スピードで翻弄することが出来れば、私のペースで対戦を進めることが可能だ。
実際に1on1が開始されると、ドライブと、ジャンプストップからのミドルシュートで、2点を先制する事ができた。その後、かがみんにパワープレイで1点を返されるも、スティールでの攻守交代後、立て続けにゴールを決める事ができ、5対1で勝利する事ができた。
「ああー、やっぱ負けたかー。相変わらず  たよりは1on1強いなー」
少しのんびりした感じでかがみんが話し掛けてくる。
「そんな事ないよ。流れが良かっただけだよ。またやろうね」
「おうよー。次は負けないからねー」
そう言って握手を交わす。かがみんのマイペースな雰囲気はチームに緩和をもたらす。緊張ばかりでは、張り詰めた糸がいつか切れてしまう。かがみんは、いずれチームの大黒柱となる存在として、器の大きさみたいな物を感じる。
センタープレヤーにどっしりと構えてもらえれば、他のチームメイト安心してのびのびとプレーする事が出来る。適材適所とはよく言ったもので、それぞれが違う部分でチームに貢献していんるだなと、改めて考えさせられる。
そんな事を考えている間に、いろはと、八重樫先輩の対戦が進んでいた。八重樫先輩はポイントガード、いろはシューティングガード。ポジション的にも、体格的にもそこまで差は無い。
故に純粋に技術の勝負になるので、三年生である八重樫先輩がやはり有利に試合を進める。ただ、いろはも必死に食らい付き、4対4の同点でしばらく点がどちらも入れれないという均衡状態が続く。
見ているこっちがハラハラする様な試合展開だったけど、最後は経験の差が出たのか、一瞬の隙を突いて八重樫先輩がマッチポイントを決め勝利した。
「はあはあ、ふう。つ、疲れた……」
「色葉、結構やるもんだね。危なかったよ」
「くやしーですー」
体力を使い切ってヘロヘロになった色葉と、まだまだ余裕のある八重樫先輩が握手を交わす。体格での差は無かったけど、積み重ねてきた経験と練習量で先輩が優っていた様だ。
それにしても、これだけさくさくと試合が進んでいるのに、まだメインイベントの神風の試合が1試合も終わっていない。
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