みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです

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21.ワードウルフ、ルール説明会?!

 僕たちがこれからやるゲームの準備を月見里さんがしてくれている間に、何故月見里さんも合宿に来る事になったのかも説明しておこうと思う。

 イベントがどうとか、合宿がどうとか月見里さんから提案されていた時の続きになるんだけどな。

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「合宿……って言われても、僕はバスケ部じゃ無いんだけど」


「そんな細かいことはどうでもいいんですよ。要は泊りがけで何処か遊びに行けば良いだけなんですから」


「うーん。でもなあ、泊りがけと言ったら結構お金が掛かるぞ?  
しかもこの時期海に近いホテルなんて予約でいっぱいだろう」


「それはそうですけど。例えば誰かの家の別荘とか……心当たり無いですか?」


「別荘って……それこそラノベじゃあるまいし、そんな金持ちの知り合いはいないぞ。てかそもそも友達がいないぞ」


「先輩……生きていて辛くありませんか?」


 おいおい、そんな目で僕を見るじゃ無い。友達の数がそのまま幸せの大きさなのか? そうなのか? まあ、概ねそうなんだろうな。

「ふ、ふん。別に寂しくなんか無いんだからね!」


「……」


「黙るなよ。友達と言って良いのか分からないけど、一人だけ聞いてみようと思うやつがいる。ダメ元だけどな。ただ、そうなるとそいつにも合宿とやらに参加してもらう事に必然的になるけど、それは良いんだよな?」


「ええ。私は構いませんよ。ただ、あんまりパリピな方はちょっとアレですけど。最低限の常識を弁えた方でお願いしたいところです」


「ああ、その点なら大丈夫だ。静かで、穏やかで、心の優しいやつだからさ」

 月見里さんと詩歌はまだ会ったこと無かったよな。性格的にはあんまり合いそうでは無いけど、対立する様な事も無いだろう。

 たよりと詩歌は……お互い顔くらいは見覚えがあるだろう。クラスは違うけど同じ学年だし。


「じゃあ先輩、よろしくお願いしすね。結果はまたメールで教えて下さい」


「はいはい、分かったよ。それじゃあな」


「先輩『はい』は、一回でしょ。後、なんだか伝わってない気がするので一応言っておきますけれど、私も行きますからね」


「へっ?  そうなの? 何で?」


「何で? ですか。今はその理由については深く考えなくてもいいですよ。それに先輩がいるとは言え、流石に男子二人と矢野先輩一人でお泊りという訳にもいかないでしょうし」


 ああ。そうか。僕の[心当たり]が女子とはまさか思わないもんな。
ま、そもそもダメ元なんだし万が一詩歌が別荘持ってたらその時に言えば良いか。どうせそんな都合のいい話ある訳ないんだし。


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 で、今に至るという訳だ。なんだか釈然としないな。付いてくるのは良いとして、月見里さんが僕と一緒の部屋で眠ると言ってるのはおかしいんだよな。あえて悪者になる事で発破を掛けてるだけかも知れないんだけど。


「さて皆さん。準備が出来ましたので、これから行うゲームの説明をさせて頂きます」


 なんか、ドキドキするな。デスゲームでも始まりそうだ。


「今からやるゲームは……『ワードウルフ』です」


「ワードウルフ?」
「わーど、うるふ……?」
「Word wolf!」


「たより、えらく発音がいいけどこのゲーム知ってるのか?」


「ううん。知らない」


「あ、そう……」


「はい。皆さん予想通りの反応ですね。実際私もやった事は無いので、条件としては対等かと思います」

「『ワードウルフ』というのは、一時流行った『人狼』というゲームの簡易版みたいな物です。『人狼』はご存知ですか?」


「ああ、名前くらいは聞いたことあるな。村人と人狼に別れて、探り合いをするゲームだっけ?」


「かなりざっくり言うとそんな感じです。ただ、[人狼]はルールがやや複雑で、慣れるまではゲームの流れを理解するのが難しいです。実際私もちんぷんかんぷんですし」

「『ワードウルフ』なら、スマホのアプリがあればそれだけで出来ますし、ルールも単純で1ゲーム3分程度で終わりますので今回の趣旨にはぴったりと言う訳です」


「なるほどな。じゃあルールを説明してくれるか? それを聞いて皆んなが納得出来るならその『ワードウルフ』とやらで決着をつけようじゃないか」


「分かりました。まずこのゲームは、ある二つのワードに対して『多数派』と『少数派』に分かれる事から始めます。そしてそのワードはアプリで自動的に決まりますが、『似ている物』になる事が多いです」

「例えば『りんご』と『梨』みたいな感じです。自分のワードを見た段階では他の人のワードは分かりませんので自分が『多数派』なのか、『少数派』なのかも分かりません。四人でやる場合は、『りんご』が1人、『梨』が3人と言った具合に分かれます」

「全員が自分のワードを確認したらゲームスタートです。制限時間は3分間。この間に皆んなで自由に発言をしますが、その会話の中で自分は『多数派』なのか『少数派』なのかを見極めながら、『多数派』なら誰が少数派なのかを探る。『少数派』なら『多数派』を騙し当てられない様にするのが目的です」

「最終的に3分間経過した後、せーので『少数派』と思う人を指差しますが、今回は2人以上に『少数派』が指を指されたら『多数派』の勝ち。逆に1人以下しか指を指されなかったら『少数派』の勝ちになります」

「ふーん。結構面白そうじゃないか。たよりと詩歌はルール説明についてこれてるか?」


「私は……大丈夫」


「え? あ、うん。多分大丈夫かな? てか詩歌って……呼び捨てする様な仲って事? いつの間……ぶつぶつ」


 詩歌は大丈夫そうだな。普段からゲームとかやってるだろうからこのくらいのルールなら問題なく理解するだろう。

 たよりは……ちょっと怪しいかも知れないな。頭は良いんだけど応用が利くタイプじゃないからな…なんかぶつぶつ言ってるし。


「ではでは、ルールを聞いただけではイメージできない部分もあると思いますので模擬戦をやってみましょう」


「まずはこのアプリで1人づつ自分のワードを確認していきます。私は確認しましたので、はい、次先輩どうぞ」

 そう言って月見里さんがアプリを渡してくる。どれどれ、僕のワードは……[うどん]か。

 確認完了ボタンをタップして次の人へスマホを渡す。そうして全員自分のワードを確認し終わったのでゲームスタートだ。


「皆さん確認が終わりましたね。ここからはフリートークになりますが、自分が『多数派』か『少数派』か分かるまで核心に触れる事は言わない方が吉ですよ。まずは、様子見が定石です」


文人「ふむ。じゃあ皆んなに聞くけどこれの事好きか? 僕は割と好きかな」

二葉「私は好きですね」

たより「私も好き。嫌いな人はあんまり居ないんじゃない?」

詩歌「……好き」


二葉「それじゃあ皆さんは、これを食べる時何を使いますか?」


文人「箸だな」
詩歌「お箸……」
たより「箸かなー」

 皆んな食べ物である事は間違いないみたいだ。それも正直に答えているとしたらの話だけどな。

 核心に迫る事は聞きにくいけど、ある程度は攻めていかないと[多数派]と[少数派]を見極めるのは難しいな。意外と奥が深いぞこのゲーム。


二葉「このままでは埒があきませんね。少し攻めてみますか。皆さんはこれの何味が好きですか?」

 何味? うどんに味のバリエーションそんなに無いけど。

たより「私は醤油かなー。あっさり系が好きだな」

詩歌「私は豚骨……」


 なるほどね。今のやりとりで分かったぜ。[少数派]は僕だな。皆んなのワードはずばり、ラーメンだな。

 と、言う事はここは僕が[少数派]である事を悟られない様に嘘の回答をして話を合わせれば良いって事だな。

文人「僕も豚骨が好きだな。月見里さんは?」

二葉「私は味噌ですね」


二葉「さて、まだ3分は経って居ませんが、模擬戦なのでこの辺りで狼当てをやりましょうか」

二葉「せーので『少数派』と思う方を指差しながら名前を呼びましょう。いいですか? では、せーの」

文人「僕」
二葉「一三先輩」
詩歌「文人くん」
たより「文人」

文人「えぇ? なんで皆んな、僕が『少数派』って分かったんだ? 途中で自分が『少数派』って分かったから話をちゃんと合わせたのに」


たより「えー。だって文人ラーメン大好きじゃん。割と好きかなって言った時点で私と文人のワードが違うの分かったよ」


詩歌「……私もそう」


文人「あ……」


二葉「私は一三先輩がラーメン好きなのは知りませんでしたけど、好きな味を聞いた時にそれまでテンポよく答えていたのに結構、間が空きましたよね? あの瞬間に自分が『少数派』って気付いて、話を合わせようと色々考えてるなって思ったんですよ」


文人「くっそー。なんだよ。凄く面白いじゃないかこのゲーム」


二葉「そうですね。実際やってみると予想以上に面白いですね。それで勝敗の決め方ですけど、『多数派』を平民、『少数派』を狼として、平民が勝てば『2人以上狼を指差せば』狼を言い当てた平民にプラス1ポイント。狼がマイナス1ポイント。ただし、狼が自分自信が狼だと言い当てた場合はマイナス1ポイントは回避できます。狼が勝てば狼にだけプラス2ポイント。この場合、1人だけ狼を言い当てた平民が居た場合でもその平民にはポイントは入りません。合計3ゲーム行ってポイントが1番高い人の勝ちって言うのは如何でしょうか」


文人「僕はOKだ」


たより「私もいいよ」


詩歌「しぃ……じゃなかった。わ、私もいいです」


二葉「それでは決まりですね。じゃあ本番行ってみましょうか」


 画して僕と同室で眠る権利をかけた熱い戦いが始まろうとしていた。

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