みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです

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17.デジャブ

「やれやれ。月見里さんって決め台詞を言いながら去っていくのが好きなんだな。世の中何が起きるか分からない、か。それはそうなんだけど、今の状況で一体何が起きるって言うんだろう。納得はしたけど、今すぐ返事ができるほど気持ちの整理は出来ていないぞ」

 僕も独り言が好きなようだ。少し長めの独り言が。

「あれ?  なんか前にもこんな事があった様な」

 既視感、デジャブ、エンドレスエイト。呼び方は様々だが実際のところどうなんだろうな。本当に未来予知だったりしてり。なんてことを考えながら教室に戻る。

「えっと、次の授業は……」

 大丈夫だ。教科書はちゃんとある。


「文人くん。今日は教科書ちゃんと持ってきたんだね」


「あぁ。しぃ……じゃなかった。姫城。当たり前じゃないか。僕は教科書を忘れたことなんてないぞ。ははは」


「あの……文人くん。えっと」

 何か言いたそうな様子で姫城さんがこちらを見ている。


「うん? どうしたんだ? 仲間になりたいのか?」


「ち、違うよぉ……仲間になりたそうにそちらを見ている訳じゃないよぉ。ど、ドラクエじゃないんだから。えっとね、放課後……時間あるかな?」


 うーん。やっぱり前にもこんな事があったような。てな事を考えているうちに返事が遅れてしまった。


「返事がない。ただのしかばねのようだ。ニフラムを唱えておこう」


「おい!  一所懸命生きてるよ! しかも浄化しようとするんじゃない!」

 ってあれ ? ドラクエネタも最近どこかでやった様な。気のせいか?


 なんだか今日は心がざわつくな。


「ま、まあそれはいいとして、放課後なら大丈夫だぞ。また欲しいものでも見つかったのか?」

 確か前回はアニメイトにグッツを買いに行ったんだっけ。










「え……?」










「文人くんなんで分かったの?」










「もしかして……」










「あなたも、タイムリープしてるの?」











「っっ?! そ、そうか……なんとなく、思い出してきたぞ。俺は確か記憶だけ過去に飛ばす装置を開発して、それから……くっ、ダメだ! 思い出せない! 俺は何をしに過去に戻って来たんだ?!」







「えっと、それは良いとして、今日は別で行きたいところがあるんだぁ」


「ネタを振っておきながら、急に自分だけ現実に戻るのやめてもらっていい?」

 とっても恥ずかしいんだけど!

「それから、思わせぶりな改行もするんじゃない! まったく…それでどこに行きたいんだ? 夜まで特に予定も無いし、何処へでも付き合うぞ」


「えへへ、ありがとう。えっとね……文人くんが嫌じゃなかったら、今日はあそこに行きたいんだ。すごく、濃厚で……ドロドロのあれを飲みたくて」


「なっ! お前……正気か?  明日も学校だけど大丈夫なのか?」


「う、うん……もう、禁断症状が出ちゃって、我慢できないの」

 詩歌は顔を赤らめて、指を膝の上でモジモジさせながら上目遣いでこちらを見ている。か、可愛すぎるだろぉぉ!

「ま、まあ詩歌が良いなら僕は別に良いんだけどさ。本当にいいのか?」


「うん……お願いします」


「分かった。オーケーだ。じゃぁ放課後、一旦校門に集合で良いかな?」


「良かった。うん、分かった」

 詩歌は嬉しそうに微笑んでいる。


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「文人くん……お待たせ……」
 放課後になり校門で詩歌を待っていると、はぁはぁと息を切らせながらトコトコと走ってきた。詩歌は運動が苦手なのだ。なんだか小動物を見ている様で癒される。


「ごめんね?  先生に呼び止められちゃって……」


「僕もさっき来たところだから気にしなくていいぞ。えっと、なんだっけ 、今川産業だっけ? それに詩歌が先生に呼び止められているところを僕も見ていたしな」

 同じクラスで隣の席だし。それを言ったらわざわざ校門で待ち合わせすることも無いんだけど。

「それで詩歌、先生にはバレてないよな?」


「うん。大丈夫だよ」


「そうか。それは何よりだ。それじゃ行こうか」

 そう言って僕達は目的地に向かって歩き出した。お互い緊張しているのか、それとも期待に胸を膨らませているのか、会話はない。

 隣を歩く詩歌に目をやると、少し俯きながも、しっかりと前を見て歩を進めている。

 前回二人で出かけた時は一旦自宅に帰り、私服に着替えてからだったが今回は2人とも制服だ。

 詩歌は身長は高くないが出るところは出ているし、丸みを帯びたとても女性らしいボディラインを携えている。たが決して太っているわけではなく、セーラー服の上からでも腰がくびれているのが見て取れる。(脇腹あたりがガボガボで隙間がある)

 肌は白く一見不健康にも見えるが、その透明感は他の女子とは違う、清純さとか、潔白さとかそう言った印象を受ける。

 それでいて内面の大人しさも手伝って、とてもお淑やかで、しなやかな動きなもんだから、ただ歩いているだけでも目を奪われてしまう。

 基本的には真面目なので、スカートの丈も膝下ではあるが、靴下とスカートの裾の間から覗く白い肌は男子高校生にとってはやや刺激の強いものとなる。


「ふ、文人くん? どうしたの? なんだかすごく視線を感じる気がするんだけど……」


「あ、あぁ。ごめんごめん。詩歌ってやっぱり可愛いなって思って」

 もしも、僕にこんな妹が居たりしたら、人生が華やかなものになっていたのかも知れないな。実際に妹のいる奴に言ったら、現実を甘く見るなよって怒られるんだろうけど。妹いないから知らんけど。


「なっ?!  えっ……と。あ、あ、ありがとう」


 詩歌の頬は更に真っ赤になっていた。反応が可愛いから、ほんとにからかい甲斐がある奴だなぁとしみじみ思う。

 そうこうしているうちに目的地に着いてしまった。

「詩歌。着いたな」


「文人くん。着いたね。は、早く入ろう……」


 僕達は足早に建物に入った。


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「ちゅるちゅるっ。はぁぁ。ちゅるっ。ふぅ……」

 詩歌は普段は音を立てるようなタイプでは無いんだけど、よほど我慢していたんだろう。一心不乱とはこの様な状態のことをいうのかもしれない。


「ごっくん」


「ど、どうだ詩歌?」


「う、うん。凄く……おいしいよ。もっと欲しい」


「それは良かった……だけど、お楽しみはこれからだぜ!」


「次話に続く!!」

 僕はキメ顔でそう言った。



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