天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第26話 目覚めはベッドの上で。


ーーーーーー


ーー俺は今、深い闇と戦っている。


  燃え盛る街の中で戦慄に震える人々を救う為に戦っているのだ......。

  その中で悲しみに包まれて消えゆく声......。

  そして、俺以外の誰もいなくなったのだった......。

  気がつくと目の前に闇がやって来て、俺に言葉を伝える。

「お前はこの程度の街も救えない。俺達と同じ存在なんだ。それらしい行動を取れ。」

  そのぼんやりとした闇は、俺にこう指示を出したのだった......。

「そんな事させない!!俺は、必ずお前を倒してやる!!」

  俺は、抗うように叫び声を上げる。

「無意味と分かっていてもそこまで言うとは、中々大したもんだな......。だが、もう終わりだよ。」

  その闇はそう告げると、俺を飲み込んで行った。

  すると、見る果ての無い暗がりへと堕ちて行くのであった......。


ーー俺が馬鹿だったんだ......。


  そんな気持ちを抱きつつ、自分の体が消えて行くのを感じたのであった......。ーー


ーー気がつくと、俺は汗まみれになって、ベットの上にいた。


ーーまたも変な夢を見てしまっていた様だ......。


  目が覚めた時はどうやら昼間の様で、日差しが部屋へと遺憾無く降り注いでいる。

  ふと横を見ると、キュアリスが俺のベットにもたれ掛かって寝ていた。

  俺は、この光景に物凄いデジャブを感じたのだった。


ーー彼女と出会った時と同じ光景だったから......。


  俺が体を起こそうとすると、彼女はゆっくりと目を覚ましたのだった。

「あ、やっと起きたんだね......。おはよう......。」

  キュアリスはまだ虚ろな瞼を擦りながら、俺に挨拶をした。

「ここは......。」

  俺は、先程まで矢立駿と戦っていて、その場で気絶した事を思い出して呟いた。


するとキュアリスは、少しだけ切ない顔をした後で、

「音が止んだから様子を見に行ったら二人共いなかったの......。それで、村の外まで抉るような道が出来ていたから、それを辿った先で雄二を見つけたんだ。もう意識がない状態だったから、本当に心配したの......。だから、起きてくれて良かったよ......。もう三日も目を覚まさなかったんだから......。」

と言って、泣きながら俺に抱きついて来た。

  俺は、どうやら彼女に運ばれてここで療養していたらしい。


ーー三日間も寝た状態で......。


  それに気づくと俺は、少しだけ涙目になって、

「心配かけてごめんな......。」

と告げて、彼女の頭を撫でた。


ーー本当にありがとう......。


  俺は彼女の優しさに抱かれながら、その暖かい雰囲気に浸ったのであった......。ーー



ーーそして落ち着きを取り戻したキュアリスに対して、俺は寝ている間の三日間についての質問をした。


「その後は......。」

  すると彼女は、まだ真っ赤に充血している目を気にしながら、ゆっくりと口を開いた。

「ルインドは無事だったよ......。」

  俺は、彼がかなりの重症だったので、ホッとした。

  そして彼女は続けた。

「外にいた自警団の人達も、みんな生きていたの。でも、村は殆どが破壊されちゃったから、桜が新しく家を建ててくれた。だから、全部上手くいったんだよ!」

  話を終えると、キュアリスはニコッと笑顔で答えた。

  それを聞いたら安心をしたのだった......。

  そして俺は、何故か不思議と軽い体に疑問を抱いた。

「あれだけの攻撃を受けたのに、何故か体が軽いのだが......。」

  俺がそんな疑問を投げかけるとキュアリスは、

「それも、桜のおかげだよ!」

と、自分の事のように得意げに話した。

  桜がボロボロになっていた俺を見た時、草の『異能』を使って薬草を出したおかげで、俺の体の傷や痛みは全て消えたらしい。

  同様に深傷を負っていた自警団にも薬草を用いた治療する事で、全員が生還した、と言う話らしい。


ーー桜にそんな能力が存在したとは......。


  そして俺は、彼女の能力に驚かされた後で、深く感謝をしたのだった。

  その後、一番気になる『矢立駿』について考えていた。


ーールインドに対してあれだけの事を起こしたのだ。


ーー村の者から殺されてしまっていても、仕方がないのかもしれない......。


  俺は、彼の事を弁明しようと考えたが、半ば諦め気味になってしまっていた。

  そんな俯いた俺を見て、キュアリスは察したかの様に答えた。

「あの男なら、生きているよ。」

  俺はそれを聞くと、安堵の表情を浮かべた。

  そして、激しく疑問が湧いた。

  何故なら、俺は戦っているの中で彼の真理を見抜いたのだった。

  だが、村の連中はそれを知らない......。

  俺は理由が知りたくなった。

  そして、

「どうしてあいつを殺さなかったんだ......?」

と、頭の中でどうしても導き出せない答えを求めた。

  するとキュアリスは、真剣な表情で答えた。

「手記があったから......。」

  話によると、彼は俺が倒れていた真横で同じ様に気を失っていたそうだ。

  最初は獣人族達の指示で処刑するつもりでいたらしい。

  しかし、運んでいる最中で一冊の手帳が落ちてきたらしい。

  怪しんだ獣人族の一人はそれを手に取って読んでみたと。


ーーそこに書かれていたのは、数々の戦争の顛末と彼の悲痛の叫びであったらしい......。


ーーそして、最後のページにはこう書いてあったと......。


ーー『街で獣人族を蹂躙する『遊び』が流行っていると聞いた......。こんな馬鹿げた事はもう終わりにせねばならない。俺が辞めさせねば......。』ーー


  それを読んだ彼らは、この男の苦肉の策を理解して処刑する事を辞めたらしい。

  現にルインドや自警団は致死量程の攻撃を受けていない事が確認されていた。

「だから、獣人族のみんなが『矢立駿』は根本から悪い人では無いって理解したの......。」

  キュアリスは最後にこう締め括った。


ーー矢立駿は、悪い男ではない......。


ーー只、誰よりも不器用でやり方を間違えてしまっただけだ......。


  俺はその話を聞き終えて、彼女にこう伝えた。

「あの男は、今どこにいる......。」

  すると彼女は、上を向いて溜息を吐いた後、にこやかな笑顔を見せて、

「昨日、治療を終えて目が覚めた後、すぐに村を出て行っちゃったよ。」

と答えた。

「そうだったのか...。」

  俺は、奴と少し話をしたかったので、少しだけ残念な気持ちになった。

  その後でキュアリスは、

「でも、去り際に彼から伝言を頼まれたの......。」

と、重要な事を俺に伝えた。


ーー『すまないが、やらねばならない事が見つかった。俺は俺のやり方を貫く。もし次会った時は、ゆっくりと話そう。』ーー


ーー彼が今、何を考えていて、何をしようとしているのかはわからない。


ーーだが俺は、その言葉が前向きな事であると理解した。


  そして、俺はその伝言を聞き終えると、徐に立ち上がって、

「腹が減った!三日も寝てたから血が足りない!」

と、笑顔で彼女に伝えた。

  すると彼女は、

「そうだよね!今からたくさん料理作ってくるから、ちょっとだけ待っててね!」

と、笑顔で部屋から出て行ったのだった......。


ーー矢立駿。


ーーいつか会った時は一緒に色々と明るい未来について語ろうな。


ーー俺はそんな気持ちを抱えながらキュアリスの作る食事を待ち構えているのであった......。


ーー俺が彼女と初めて出会ったあの時と同じ様に......。

「天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • rui

    主人公より主人公してる桜ちゃん

    6
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