天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第17話 ロンブローシティ。


ーーーーーー


ーー「それでは、明日の朝に訪問させて頂くので、その際は宜しくお願いします!」ーー


  フリードという青年の言葉を思い出す......。


  昨晩は桜の事も考えて、一度解散した。

  家に戻る途中で、俺はキャアリスに明日、彼が訪問してくる事を告げた。

  すると彼女は一瞬表情を曇らせた後で、

「いいんじゃない?『魔法』についても話聞きたかったんでしょ......。」

と、俺の考えていた事を分かった上で、了承してくれた。



ーーそして今、俺達の目の前には、フリードがいる。


「うおー!!近くで見るとやはり立派だ!!僕の目は曇っていなかったんだ!!庭もすごい!!どうやってこれを作ったんですか?!」

  フリードはあろう事か、夜明けと同時にここにやって来て、もう一時間以上も家の周りを舐める様にしてずっと見ている。


ーー俺はいい加減、この男の行為に我慢出来なくなってきていた。


  すると、キュアリスは俺のその表情に気づくと、

「と、とりあえず中に入ってお茶でもしない?」

と、若干引きつった笑顔で彼に伝えた。

  それを聞くとフリードは、

「そうですね!朝食もまだですし、ついでに頂いちゃおうかな!」

などと、厚かましい発言をした。


ーーこいつは馬鹿なのか。


  俺はその行動を見て、そう思ったのだった。

  その後キュアリスは、急いでキッチンへ向かって行って、朝食の支度を始めていた。
 
  フリードは玄関に入ると、

「内装も完璧じゃないですか!本当に素晴らしいですね!」

などと、はしゃいでいた。

  俺は、まだ寝ている桜を起こすと厄介になると考えて、その大声を遮断する様に、

「まあ、リビングに来てくれ。」

と、諭す様に誘導するのであった。


ーー俺が奴から聞きたい事......。


  それは、この世界で言う『魔法』という物についてだった。

  元の世界に居た時の『魔法』と言う概念は、ファンタジーの一種で、それこそ空を飛んだり、物を動かしたり、爆発を起こしたりなど、何でも出来る存在と解釈されるのが一般的であった。

  そして、この前のランドリー・シェムが使っていた『魔法』もその類の一種で、空間に何かを作用させたのでは、と、読んでいた。

  だからこそ、俺はリビングに座ってのほほんとしている彼に対して、

「とりあえず一通り家は見たよな。ならば、俺からも一つ質問だ。」

と、神妙な顔で言った。

  すると、彼は相変わらずダラケ切った姿勢を崩す事なく、

「何ですか?」

と、余り興味なさげに返事をした。

  俺は、その彼の態度にうんざりしながらも、質問を続けた。

「お前は、『魔法使い』だと言っていたな。俺はまだこの世界に来て、日が浅い。だから、『魔法』と言う概念について何もわからないので、詳しく教えてもらいたいんだ。」


ーー俺がそう言うとフリードは、ダラケた姿勢を元に戻して殺気立った表情に切り替わった。


  そして、重々しい表情を浮かべながら、口を開いたのだ。

「あなた、もしかして『異世界人』ですか......?」

  彼は、質問以前に、俺が異世界人であるかを執拗に問いかける様な姿勢を見せて来たのだ...。


ーー俺はこの青年のその態度を見て、彼が異世界人に対して非常に敵意を持っている事を理解した。


「い、いや、そんなわけ無いだろ。単純に山奥の村で生まれ育ったので、世間知らずなだけだ。」

  俺は、その余りにも殺伐とした雰囲気を見て、咄嗟に嘘をついてしまった。

  彼はその俺の言葉を聞くと、

「なら良かったです!では、説明しますね!」

と、快く説明を始めたのであった......。


ーー彼の説明によると、こうだった。


  この世界の『魔法』という概念は、どうやら空を飛べたりなどとは全く違う性質を持っているらしい。

  どうやら、『異能』が物理的な作用を有する物だとすると、『魔法』は、精神的な作用をもたらす物であると。

  簡単に言うと、呪文を暗唱する事によって、直接対象の心の奥に語り掛けて暗示をかけると言う事だ。

  更に、『魔法』の種類によっては、至近距離でしか通じない物や、遠距離からでも放てる物があるみたいだ。

  そして、基本『魔法』は掛かってしまったら終わりで、本人以外は解除できない事を話した。

  だからこそ、自分自身に『魔法』をかける事によって、その作用を防ぐ方法などもあるらしい......。

  俺はそれを聞くと、あの時のランドリー・シェムによる『魔法』は、俺個人に直接暗示をかけていた事を理解した。


ーーならば何故あの時、俺は魔法を解除できたのであろう......。


  そんな疑問を抱いたが、とりあえずは保留する事にした。



ーーそして、俺は続けて、もう一つの疑問を詮索した。


  何故、彼は異世界人に対してそこまでの敵意を持っているのかだ。

  正直、聞き辛い所ではあったが、好奇心が自分の理性を崩していくのが分かった。


ーー遂に俺は、理性に負けて、彼に問いかけた。


「最後に......。お前は何で、そんなにも異世界人に敵意を持っているんだ?」

  彼はそれを聞くと、再び恨めしい表情に戻った後で、

「あの街、何であんなにも入り口の門が小さいかわかりますか......?」

と、俺に対して問いかけてきた。

  それを聞くと俺は、横に小さく首を振った。

  するとフリードは、重々しい雰囲気で答えた。

「実は五年前、あの街は異世界人に襲われた経験があるんです......。」

  俺はそれを聞くと、驚きを隠せず真っ直ぐに話す彼の目を見ていた。

  彼は、俺の表情を見ると、再び続ける。

「昔、ロンブローシティはもっともっと栄えていて、貿易の中心地だったのです。その頃僕は、『魔法連合』という組織の若手の筆頭として、街の些細なトラブルなどを対処していたのです。しかし......。」

  彼が話すには、ある日突然、物凄い種類の『異能』を持つ集団が現れたらしい。

  街の人は、それに打つ手が無かった。

  その者たちは、何故かしきりに『劣等感』という言葉を叫んでいたという......。

  結局、街は壊され、人々は殺され、彼らは応戦はしたのだが、その者達は、魔法にも精通していた様で全く通用せずに、信頼していた仲間達すらもほぼ全滅になってしまったとの事だ。


ーーそして遂にブリードにもその番が回って来たらしい。


  フリードはひとしきり話した後、一つ息を吸った後で、

「もうダメだって思った時、襲い掛かる彼らの攻撃は止まったんです!そして、目を開くと目の前には全身に武具を纏った一人の小さな騎士がいたのです。」

と、語った。

  そして、彼は更に続けて、

「僕はその姿を見た時に、『聖騎士』が助けに来て事を確信したんです。巷でよく噂で聞いていたので......。その人は、僕の方を見ると一つ頷いた後で、瞬く間にその者達を倒して行きました。まさに、圧倒的な力で......。そして、その後、すぐに消えて行きました。」

と、言った。

  そして、フリードは締めくくった。

「聖騎士に倒された奴らが、死に際に放った言葉が、『異世界に来ても、結局変わらなかったんだな......。』だったのですよ。それを聞いて、奴らごが『異世界人』である事が分かったんです......。それから、『異世界人』が、嫌いになったんですよ!」


ーー俺はそこで、初めて聖騎士という存在を知った。


ーーしかも、『異世界人』がこの街を襲った事も......。


  俺はその話を聞き終えると、フリードに向けて、

「そんな事があったんだな......。」

と、神妙な顔で言った。

  彼は最後に、

「その後、甚大な被害を受けた街は、生き残った人々で立て直して行ったんですよ!昔ほど大きくは作れませんでしたが......。そして、その象徴こそが、あの門なんです!」

と、ニコッと笑いながら語っていた。


ーー俺は、あんなにも幸せそうな街に、そんな悲劇があった事を聞いて、少しだけ切ない気持ちになった。


ーーそして、そこから立ち直った彼らに、尊敬をした......。


ーーそんな時、

「即席だけど、朝ごはん出来たよ!」

という、キュアリスの声が聞こえた。

  持って来た皿には、パンに、半熟の目玉焼きと、ベーコンが乗っかっていた。

  それを見るとフリードは、

「やったー!!すごく美味しそうです!!では、いただきます!」

と、先程までの雰囲気を一蹴して、食べ物を口に運んでいたのだった。


ーー彼にも、苦しみがあったのか......。


  俺は、そう思いながら、その様子を嬉々と見ていたのであった。


ーーその後、俺は、フリードに『魔法』の唱え方を一通り教わった。


  『度が過ぎる才能』がある俺は、その一つ一つを直ぐに覚えて行った。

  その驚異の上達ぶりに、彼は大変驚いていた。

  昼過ぎに桜が起きて来ると、彼は完全に桜のおもちゃになってしまっていた。


ーーそして、気がつくと、いつの間にか夕方になっていた......。


「今日は色々とありがとうございました!」

  フリードは、そう感謝を告げた。


  俺は、それに対して、

「いやいや、こちらこそありがとう......。」

と、逆に感謝を申し上げた。


  そして、最後に俺は伝えた。


「俺達は明日から、首都を目指して旅に出てしまうんだ。そこで、今日は魔法を教えてくれたお礼ではないけど、この家、お前の好きな様に使ってくれ。」

  それを聞くとフリードは、

「えっ......。良いんですか......?」

と、あっけらかんとした顔で答えた。


  俺はそれに対して、

「良いんだよ。俺は、お前にこの家を託したいから。頼んだぞ!」

と、笑顔で言った。

  すると桜が、

「桜が作った家なんだから、大事に住まなきゃダメだからね!!」

と、得意げな顔をしていた。

  それを聞くと、フリードは、一瞬ポカンとした顔をした後で、

「あ、ありがとうございます!丁度、魔法の研究で場所が欲しかったところなんです!」

と、全身で喜びを表現していた。


ーー元々明日には、旅を続けるつもりだったのもあるのだが......。


  そして彼は、

「異世界人でも良い人がいるって初めて知りました!」

と、言った。


ーーどうやら途中からバレてしまっていたらしい。


「でも、本当に感謝してます!後、もし首都へ向かわれるのでしたら、北東へ進んで、ベゴニア村へ行くのが、一番早いですよ!そこで、『ルインド』と言う男に会ったら、僕の名前を出してください!きっと、良くしてくれますから!」

  フリードは、そう言い残すと、走り去っていった......。

  キュアリスは、その様子を見て、

「幸せって実は、与えられる物ではなくて、作る物なのかもしれないんだね......。」

と、物憂げな表情で話した。


ーーどうやら、先程の話が聞こえていたらしい......。


  俺は、それを聞くと、静かに頷いた。


ーー幸せの観点......。


  それは、今ある日常なのかもしれない。

  俺は、そんな臭い事を考えながら、小さくなる彼の影を見つめていたのであった。

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コメント

  • rui

    ここまで読んで気になったのは …… が非常に多いせいか雰囲気が常に重く感じる

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