天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。

暗喩

第4話 天才の片鱗。


ーーーーーー


ーー俺は、ある日の事を思い出していた。


  それは雨が止んですぐの、幼稚園の園庭の砂場だった。

「雨が止んだねー!これで外で遊べるよ!」

「そうだね!砂場でお城が作れるよ!」

「あっ......、佐山くん、そこで一人でいるなら、僕たちとお城を作ろうよ!」

  そんな、優しい思い出。

  俺が、初めて声を掛けてもらった時の思い出。


ーーだけど、その思い出は、五分と持たずに崩れてしまう......。


「佐山くんが、イジめたー!!なんで、僕よりもずっと上手く作れるのー?もう雄二くんとは遊ばない!!」

「佐山くん、ひどいよ。」

「佐山くん、最低。」

「佐山くんとは、もう遊ばない......。」


ーー俺の優しい思い出は、いつもそうだった。


  始まってすぐに、悲しい思い出に変わってしまう。


ーー俺は、褒めて貰いたかっただけだった。


ーーでも、世間はそれを許さなかった。


  何故ならば、頑張れば頑張る程に、友達が減って行く......。

  だから、いつの間にか、俺は何事にも手を抜く様になった。

  小学校の時、サッカーをやる時も、走らずにそのまま傍観をした。

  中学校の時も、試験でわざと問題を間違えた。

  高校の時も、部活動も勉強も、何もかも「それなり」を貫いた。

  しかし、その度に先生やクラスメイトに見破られ、「嫌味な奴」と、嫌われて行った......。

  そして俺は、その度に本気を出した。

  すると、今度は「気味の悪い奴」になった。

  俺は、何をやっても無駄だと悟った。


ーー何故なら、この才能こそが、罪なのだから......。


  手を抜けば、嫌われる。

  本気を出せば、疎まれる。


ーーどうせ、この世界でもいつか同じ事が起きてしまうのだろう......。ーー



ーー「さっきから聞いているの?雄二!!」


  俺は、その声を聞くと、一瞬で我に返った。

「暫く話しかけてるのに全く返事がないから、心配になっちゃったよ......。」

  キュアリスは俺を隣から見ながら心配そうにしていた。

  俺達は、彼女が住む村からここら辺で一番大きな街、ヘベレスシティを目指して、数時間、大草原を歩いている所だった。

  その途中で、つまらぬ事を思い出してしまったのだ......。

「すまなかった......。また、嫌な事を思い出してしまったからさ......。」

  俺は、彼女の事をゆっくり見た後で、正直に答えた。

  言い訳をしても、見破られてしまいそうな気がして......。

「また、そんな事考えてたの?せっかくこちらに来たんだし、いい加減もうやめなよ!楽しい事話した方が、ずっといいじゃん。」

  キュアリスはまた、俺を励ましてくれた。

  この世界に来てから、また余計に過去の事を思い出す頻度が増えている気がする。

  元々が、人と関わる事が出来なかったのもあるのだが......。

「後一時間程歩くと、一つの山を登るの。それを越えたら、ヘベレスシティに辿り着く。それまで頑張って貰わないと!」

  キュアリスは気を取り直して気合を入れた。

「でも......。日没までには必ず越えないとまずいの......。今から登ってもギリギリだから、早くしないと!」

  そして、続け様に彼女は、その後で注意づけをした。

  それを聞いて俺は、少し気になったので聞いてみた。
 
「......夜になると、何かあるのか?」

「その山には夜になると、ドラゴンが現れるの。そのドラゴンは、人や獣を捕食しようと夜な夜な山の中を彷徨っていて......。もし目をつけられたら、街の人が束になっても勝てない程の強さを持っているんだよ。だから、日没までに山を下って、安全な街まで行ってしまうのが一番いいの。」

  キュアリスは、俺に細かく説明をしてくれた。

  日没までに越えなければならないその山は、普通に歩いても約四時間程掛かるらしい。

  今は、陽の出方から午後二時頃なのを考えると、日没までは、確かにギリギリだった。


ーーもしも、何かのトラブルがあって途中で陽が落ちてしまうと、その時はドラゴンへの遭遇率が格段に上がる。


  そこで、俺は少し遠くに見える洞窟に目をつけた。

  そこには、岩場になっていて、大きな岩と岩の間に、半径五メートル程の空洞があった。

  約一時間と言う事は、俺達の速度で考えると約四キロ以上離れている事になる。

  ここなら、山で活動するドラゴンに見つかる事なく朝を迎えられる、と、確信した。

「もし、日が暮れてしまうとまずいのだろう?ならば、そこにある洞窟で、一夜を明かすのはどうだ?ここなら先程言っていたドラゴンの行動範囲からも外れている筈だし、問題無いと思うが......。」

  俺がそれを提案すると、

「確かに、そんなに急いでいる訳では無いしね......。今は、ここに留まる事が一番安全なのかもしれない。」

と、キュアリスは同意してくれた。


  そして、俺達はこの洞窟で野宿する事にしたのだった......。


ーーーーーー

  俺達は、キュアリスが持って来ていた毛布や食器など、夜になって必要な物を取り出し野宿の準備をしていた。

  そして、準備が終わると、まだ日没までかなりの時間があったので、その間にこの前キュアリスが話していた、『異能』についての、詳しい説明を受ける事にした。

  もし仮に、イレギュラーでドラゴンがこちらに襲い掛かって来てしまった時、俺も能力を使えた方が、隙を見て逃げるのも楽になると考えたからだ。

  そこで俺は、

「『異能』と言うのは、どの様な仕組みで成り立っているんだ?」

と、素朴な疑問をぶつけた。

  するとキュアリスは得意げな顔で、答えた。

「仕組みも何もないよ。だって、『異能』に必要なのは単純に、その人に応じた資質だけなんだから。まずは、感じる。それから、そのイメージを放つ。たったそれだけの話だよ。」


ーー成程。


  要は、『異能』と言うものは、そのイメージを体から打ち出すだけの話だったのか。

  後は、その人間の資質に応じて、出来る事も変わっていく。

  つまり、生まれながらで何が出来るのかは決まっている様だ。

  俺はそれを聞くと、早速自分の能力を試してみたくなった......。

「じゃあ、早速だけど、試してみるよ。」

  俺はそう言って、『異能』の実験を始める事にした。

  まず昨日の夜、キュアリスは、炎を手から出していた事を思い出しながら、そのイメージで炎を打ってみる事にした。

 もし属性が違えば、そのイメージは具現化出来ない。

  そうなったら、違う物を試してみればいい。

  そこで、すぐ近くにある川に向かって手を向け、炎の円砲をイメージしてみた。


ーーすると、俺の手から半径三十センチ程の綺麗な円形の炎の塊が現れた。


  本当に出来た事に驚きながらも、試しにその炎を勢いよく放ってみた。

  放たれた炎は、唸りを上げながら川へ一直線して行き、到着すると一瞬だけ川の中に円形の穴が空いた。


ーーどうやら、実験は成功の様だった。


  その様子をキュアリスは見た後で、

「やっぱり凄いね! ちょっと口頭で教えただけで、そんなにすぐに出来ちゃうなんて......。それに、雄二は私と同じ火属性なんだね! 」

と、喜びながら俺に近寄って来た。


ーー俺は、今までも最初から何でも出来てしまった。


  それを思い出すと、この子に嫌われてしまうのでは、と、懸念した後で、次からは加減する事にした。

ーーその時、

「次は本気でやって見てね!」

  彼女はニコニコとそう言った。

  何故か見透かされている様な気持ちになり、次は本気でやってみようと思った。

「キュアリス、ちょっと離れていてくれ。」

  俺は、キュアリスを遠くに離した後で、体内にある炎のイメージを全て放出するつもりで両手を川へかざした。

  そして、体全体から膨大な炎が立ち昇る。

  その炎は、俺の両手の先から、放出しようと力を溜めたが、その大きさは俺の体の百倍程に成長してしまっていた。

  その時、流石にこのままでは、この一帯が焦土と化してしまうのを懸念して、そのまま手を引っ込める事で、実験は終了した。

「ふぅ......。危なかった......。」

  俺はそう呟いた。

  そして、キュアリスの方に目をやる。

  キュアリスは、呆然としてその場に立ったまま、固まっているのがわかった。


ーー昔からよく見る表情だ。


  そうやっていつも、俺は疎まれていく。

  例外なくキュアリスもそうだったのかもしれない。

  だが、キュアリスは俺の今までの経験と全く違う反応をした。

「すごいすごい!! あんなに大きな炎を出せる使い手は、あまり見た事がないよ!! しかも、初めてなんて......。やっぱり、雄二は才能があるんだね!! 」

  そう言って、全身で喜びを表現していた。

  俺は一瞬だけ驚いたが、その後、照れてしまった。

「そ、そうか?ま、まあ、普通だよ。」

  顔を真っ赤にしている俺を見て、

「嬉しかったくせに~。感情は素直に表現しなきゃダメだよ! 」

  キュアリスは、俺を小突く様な素振りを見せながら茶化してきた。

「う、うるさい! き、今日の実験はここまでだ! とりあえず日没までに夕食を作ってしまうぞ! 」

  俺がそう言うと、彼女は相変わらずニヤニヤとしながら、

「は~い。」

と言って、俺の後をついて来た。


ーーこんな俺が人と冗談を言い合える様になるなど、思ってもいなかったよ。


  そう思って俺は心の氷が少しずつ溶けていくのがわかった。


ーーー忍びくる大きな影に気づかずに......。

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コメント

  • ノベルバユーザー294662

    面白い

    0
  • ポムニー

    主人公はドラゴンいる事には驚かないのかw
    異能の属性説明とか、この世界では異能は何歳くらいから覚える(使わせる)とか主人公気にならないのかw

    1
  • ノベルバユーザー252836

    読みやすい!

    1
  • トロンボーン吹きの少女

    さすが!

    2
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